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学園祭の初日ももうすぐ終わり。
喫茶店のような模擬店をやっている教室に入ってお茶をしようとしている。
目の前の席には熊井ちゃん。

さっき歩いているところを熊井ちゃんに見つかり「まだいたんだー。ちょうどいいや、一緒に何か飲む?」と誘ってくれた(!)のだ。

そういうわけで、目の前の席には熊井ちゃん。

しかし誘われておいて言うのもなんだけど、熊井ちゃんって自分の学園内(しかも女子校)で男子と2人でお茶をするということに抵抗とか感じないのだろうか。
まぁ、2人連れといっても別に彼氏でもなんでもない僕が相手だから、熊井ちゃんの頭の中では割り切った処理がなされているのだろう。
あまり細かいことは気にしないからなあ、熊井ちゃん。

「なんかさー、デートしてるみたいだねー。あははは」
「デ、デ、デートだなんて、そ、そ、そ、そんな大それたものじゃないっす」
「当たり前でしょ。なに動揺してんのさ」

いや熊井ちゃん、動揺もしますって。さっきからずっと、なんかあちこちから視線を感じるんだから。
このクラスの店員さんの子、他のテーブルに座っている人達、いろいろな生徒さんに見られてるのがモロ分かり。僕らのことをヒソヒソ話しをしてるのも聞こえる。
この状況でどうしてそんなに堂々としていられるんだろう。

どうやら周りの生徒さんたちの殆どは、僕の前に座っているこの人が誰だか分かっているみたいだ。
熊井ちゃん、学園の生徒内ではかなり面が割れてるみたいだな。まぁ確かに存在感はすごいあるけど。
背も高いし、(黙っていれば)どこかの女優さんのようにも見える気がする。
察するに、彼女はこの学園では結構な人気者なんじゃないだろうか。

そう思ってあらためて彼女を見てみると、熊井ちゃんって美人だよな、結構。
というか、かなり凄い美人じゃないか。
あれ? 今ちょっと、ドキッとしてしまった。

「ご注文をどうぞ」
「マンゴージュースひとつと、何にする?」「僕はオレンジジュースを下さい」

注文を取りにきた子に熊井ちゃんが続けて尋ねる。

「そういえば、ここ舞ちゃんのクラスだよね。舞ちゃんはいないの?」

熊井ちゃんの口から突然、舞ちゃんの名前が出てきたので心臓が止まりそうになった。

「萩原さんは生徒会の手伝いで体育館に行ってますので、ここにはいないです」
「あれー? 今日の準備はもう終わってるんだけど、お嬢様と一緒なのかな?」

そうなのか! 舞ちゃんのクラスなんだ、ここ。
この店を選んだ熊井ちゃんグッジョブ!といわざるをえない。
今のやりとりでフルネームを知ることが出来た。萩原舞、というのか。
萩原舞! なんて美しくて品のある名前なんだ。名前を聞いただけで僕は幸せな気分になった。
素敵すぎる。はぎわらまいさん。

ここで舞ちゃんは毎日授業を受けてるのですね。思わずまわりを見回してしまう。

舞ちゃんがいなかったのはとても残念だけれど、熊井ちゃんと2人のところを見られなくて良かったという気もする。
舞ちゃんに誤解を招くというのもあるが、もしそんな状況になったら熊井ちゃんのことだ、絶対何かしでかすに決まってるから・・・

そうなのだ。彼女の行動は要注意だ。しかも予測不可能だから・・・熊井ちゃんは本当に危険なんだ。いつだって本人には全然自覚が無いのがよけい厄介で。昔からそうなんだから!

「千聖お嬢様と知り合いだったんだー」

熊井ちゃんに話しかけられて考え事は途中で中断してしまった。

「うん。ちょっと前に、それは実に運命的な出会いでね(キリッ)」
「どうせまた妄想に夢中になってて車に轢かれそうになったのを見られたとか、そんなところでしょー」
「決め付けないでよ(当たりだけど)。しっかし、“お嬢様”っていう人種は実在するんだね!全く接点の無い世界の方だから、そんな人とお知り合いになれるなんて今でもちょっと信じられない感じでさ。ところで、お嬢様のお名前、ちさと、ってどういう字を書くの」

書くもの貸して、と言った熊井ちゃんは僕の差し出した生徒手帳にお嬢様のお名前を書いてくれた。

「岡井千聖岡井千聖岡井千聖・・・・」

熊井ちゃんが手帳に名前を書いてくれたんだけど、なんでそんなにたくさん書くんだろう?

「熊井ちゃん、書くのは一個でいいよ、名前」
「おおっとぉ!千聖お嬢様の名前ってカッコイイからついたくさん書きたくなっちゃうんだよね」

まぁ、確かに。そこは何となくわかります。
千聖と書いてチサト。カッコイイじゃないですか、お嬢様。

岡井千聖と萩原舞、2人とも素晴らしい名前だ。美しい人は名前まで美しい。名は体を現すというが逆もまた然り。

サバサバとした性格の熊井ちゃんだから、デリケートなことも聞きやすいのは助かる。

「あのさ、熊井ちゃんに聞きたいことがあるんだけど」
「聞きたいこと? いいよ。何でも聞いて」
「熊井ちゃん、さっき注文を取った子に舞ちゃんは?って言ってたけど、あのー、舞ちゃんとは知り合いなの?」
「舞ちゃん? 最近は結構関係あるかなー。・・・って、いま“舞ちゃん”って言った? そっちこそ、なんで舞ちゃんのこと知ってるのさー」
「いやそのー、朝登校の途中でお嬢様と一緒のところをよく見かけるから。気になってて。それでさ、ちょっと舞ちゃんのことを教えてほしいんだ」
「舞ちゃんのことが好きなの?」

ストレートな人だ、相変わらず。そして熊井ちゃんの前では嘘をつけない。

「うん」
「そっかー! 舞ちゃんのことが好きなんだ!!」

熊井ちゃんが必要以上に大きな声で復唱する。

その瞬間、教室中の時間が止まった。
教室にいた全ての人の動きが止まったのがわかる。そして、その全ての人が一斉に熊井ちゃんと僕のことを見てきた。

「く、熊井ちゃん!!」

な、何て事を・・・ ここ、舞ちゃんのクラスなんでしょ・・・
これは完全にアウトだろう。舞ちゃんに迷惑がかかってしまうじゃないか。クラクラしてきた。
思いっきり狼狽する僕をよそに、熊井ちゃんは川*^∇^)||こんな顔で「えー!?」とか言ってニヤニヤしている。
熊井ちゃんって、熊井ちゃんって本当に・・・



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