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さすがにいたたまれなくなって、あんな事があってもなおのんびりしている熊井ちゃんをなんとか促して、僕たちは舞ちゃんのクラスの店を後にした(ジュース代は僕が払った)。

「まずいよあれは、熊井ちゃん。いやー本当まずいって。変な噂にでもなったら舞ちゃんに申し訳な」
「ぬゎんでさー! だって、好きなのは本当なんでしょ!」
「いや、そうだけどさー」
「なら堂々としてればいいじゃん!」

熊井ちゃんって、本当に真っ直ぐだよね。昔から全く変わってない。
いつだってこのように熊井ちゃんに正論を言われたらもう頷くしかない。
彼女のそういう言葉は、実は昔から僕の思考に影響力を持ってたりする。本質を鋭く見抜いていることが多くて説得力があって。
だから僕は本当のところ彼女には一目置いてるんだ。

夕暮れに染まってきた校庭が目の前に広がっている。西日を受けて赤く照らされている校舎を背後に、ちょうどそこにあったベンチに並んで腰を下ろした。
なんか無駄にいい雰囲気だ。本当に無駄なんだけどね。

「そういえば、まだサッカーはやってるの?」
「いや・・・今はやってない。中学でもずっとやってたんだけど、高校に入ってすぐに膝やっちゃって・・・結構大きなケガだったから」
「そうなんだ・・・ あんなに好きだったのにね」
「熊井ちゃん、僕のまともなことも少しは憶えててくれてるんだw」
「元気だしていこうぜ! ほら、一人じゃないんでしょ。なんていったっけ、あの好きだったサッカーの曲」

You'll Never Walk Alone のこと? よく憶えてたね、なんか嬉しい。その上、励ましてくれるなんて! ありがとう熊井ちゃん。ちょっと胸が熱くなったのは内緒。


・・・あのケガした時は本当に落ち込んだなあ。そして、まさかそれで終わってしまうとは思わなかった。
それなりに打ち込んでたのにいきなり目標を失ってしまって、あれは本当につらかった。

ところが、人生万事塞翁が馬。

部活に行かなくなったことで通学時間が変わったら、そうしたらその途端に出会ったのだ。舞ちゃんに。あの時に受けた衝撃は今でも忘れられない。俺、初めて見たよ!羽がついてない天使!!

舞ちゃんとの出会いは、まさに運命としか思えない。そう、僕は一人じゃないんだ。僕たちはきっとそうやって出会う運命だったのだ!! あぁ人生って素晴らしい!!


感慨深い思いにひたっているつもりだったが、全部声に出ていたらしい・・・
我に返ると、目の前にはちょっと感動した面持ちの熊井ちゃんの綺麗なお顔。

「そうだったんだ! それが舞ちゃんとの馴れ初めなんだー」
「馴れ初めって・・・まぁ将来的にはその表現になるはずだけどさ。それで、舞ちゃんのことなんだけど・・・」

熊井ちゃんに教えてもらった舞ちゃんのこと。それは僕をこの上なく幸せな気分にしてくれた。
舞ちゃんや、いつも一緒に通学している人達は、みんな学園の寮生なんだとか。
寮っていうのはお嬢様のお屋敷の敷地内にあるんだとか。
舞ちゃんって、ああ見えて意外と甘えん坊さんなんだよーっていうエピソードを聞いたときは萌え死ぬかと思った。

「最近撮った舞ちゃんの画像ならこういうのあるけどねー」
そう言いながらケイタイの画像を見せてくれた。
http://st84.storage.gree.jp/album/38/81/30393881/d25ee897_640.jpg

熊井ちゃん!連絡先教えるわ!!

「こんなのもあった。いつ撮ったんだろ?貰ったやつかな、誰からだったっけ?まあいいや」
http://st106.storage.gree.jp/album/83/81/38918381/9c78fbc6_640.jpg

熊井ちゃんに握手を求めたい気分になった。

「熊井ちゃん、お腹空いてない? もしくは何か僕に出来ることあれば何でも言って!!」

「どうすれば舞ちゃんとお近づきになれるんだろうね・・・」
「なんなら、うちが紹介してあげようか?」
「いや、それは結構です」

即答。
あれ? 前に舞ちゃんのこと知ってる人がいたらその人に御紹介して貰おうと思って、クラスの友達にメールまでしてもらったんじゃなかったっけ?
どうして今は熊井ちゃんの有難い申し出を断ってしまったんだろう。

うん、その答えは「熊井ちゃんだから」だね。すんなりと事が運ぶ訳が無い。絶対ややこしいことになるような予感がすっごくするからだ。もうわかるでしょ。
だいたい今紹介して頂くのなら、お願いする相手はどう考えても熊井ちゃんじゃなくてお嬢様だろう。
あ、お嬢様の紹介では非常にまずいことになるのか。じゃあ、お姉ちゃんとかさ。

熊井ちゃんはそんな僕の答えをポジティブな方向に解釈したようで、

「やるじゃん、その心意気。それでいいと思うよ。誰かの紹介とかじゃなくて、やっぱり運命的な出会いみたいな感じで知り合ったほうがロマンティックだよねー。わたしもお嬢様と初めて会ったのは、中2の時に図書室で(ry」

熊井ちゃんの一人語りが始まった。それがお嬢様の情報に関するものだったのだから、僕のやることはただひとつ。聞き上手に徹して、熊井ちゃんに気分良くどんどん喋ってもらうこと。熊井ちゃんの話しを盛り上げるのは、それは意外にも楽しい作業であったのだ。





ところで熊井ちゃん、お嬢様の言ってた「大きな熊さん」って、なんなのあれw

って、聞きたかったけど怖いから聞けませんでした。
昔から熊井ちゃんの身長ネタには触れないのが僕らの暗黙の了解だったのに。さすがはお嬢様。
それにしても・・・  「大きな熊さん」ってww





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