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今日もやってきました、学園祭の2日目。

校門のところまでやってくると、そこにはひとりチラシを配っている生徒さんがいた。
彼女は大量のチラシを手にしていて、僕にも一枚そのチラシを手渡してくれた。
目を落としてみると、それはライブイベントの手書きの応援ビラ。
たぶん配っているその子が自分で書き上げたんだろう。いいなあこういうの。その純粋な気持ちが微笑ましい。

チラシを配っている彼女は、そのライブに出演するグループの熱狂的なファンのようだ。
制服の上に応援グッズだろうか自作っぽいハッピ(すごい奇抜なデザインだ・・)を羽織ってチラシを配っている。
その異様なハッピを見て最初ちょっとドン引きしそうになったけれど、通り行く人達に受け取って貰おうと一生懸命チラシを配っている姿には素直に温かい気持ちになった。
先入観をはずして見れば、黒目がちな瞳が印象的なすんごくかわいい子だった。まるでお人形さんみたいな顔立ちで。
あ、この子、ほっぺたのホクロ。舞ちゃんと同じだ。


貰ったチラシを読んでみると、書いた人の愛情と熱意が文章からも十分伝わってくる。
何となくメンバーのうちの一人だけが特別熱心に解説されているが、その子が一番人気のエースなんだろう。紙面の大部分をこのメンバーの解説に当ててあるし、相当の重要人物ってことなんだな、きっと。
ただ、このメンバーへの熱い想いが延々と書き連ねてあるのは、読むのにちょっと苦労したけど。とにかく長いから。改行なしで30行とかちょっと勘弁して欲しい。

さらに読んでいて気付いた。紹介されているメンバー三人のうちの一人には見覚えのある子がいることに。

あれ、この子、舞ちゃんの友達の子だ。ほら、前にリスのモノマネをしていた子。
すごくかわいらしい子だよね。しぐさのひとつひとつがいちいち愛らしくて。もし、クラスにこんな子がいたら、たぶん男子からは人気ナンバー1になるだろうな。男子は好きだもん、ああいう清楚な感じの子。

あの子が、ロックボーカルグループのメンバーなの? 
普段目にする彼女はふわふわした淑やかな感じの子なんだけど。
なんか、全然イメージが一致しない。

そのまま校舎の中までチラシを読みながら歩いていたら、廊下の角を曲がるところで出会い頭に、向こうから歩いてきた生徒さんとぶつかりそうになってしまった。
衝突はしなかったが(しませんでしたよ)、びっくりさせてしまったようだ。

お互いの顔が十数センチの距離まで近づいてしまった(接触はしてませんよ)。

その子は大きなマスクをしていた。目だけで表情をうかがい知れる状態だが、びっくりしたのか大きな目がよりいっそう見開かれている。
そのくりくりっとした大きい黒目。それが僕に見覚えがある彼女だと教えてくれる。
たった今チラシでその名前を知った彼女、鈴木愛理ちゃん。

「ご、ごめんなさい!!」
「いいえー、大丈夫ですよ」

あわてて謝ると、ふんわりとした声が返ってきた。
このチラシでまさに今さっき名前を知ったばかりだというのに、こうやって出会う事になるなんて。
しかも、廊下で出会い頭にぶつかるなんて(正確に言うとぶつかってはいませんよ)、なんというベタな出会い方。
古今東西だいたいの物語では、こういう出会い方をした少年と少女は紆余曲折を経て、最終的には恋仲に発展するものですよね。
もしかして彼女と僕はこうやって出会う運命(ry

だが、あまり調子に乗るのはやめようと思う。なんか冷たいものが背筋を流れる。
ここのところ何かおいしい思いをたくさんしているという自覚はあるので、そのうち天誅が下りそうで怖いから。

そんなことを考えていたがふと気付くと、目の前の愛理ちゃんはその大きな目で僕の持っているチラシを凝視していた。

「あの、それって・・・」

小首を傾げて聞いてくる愛理ちゃん。その大きな黒目が僕に向けられたのでドキドキしてしまった。
しっかし、お目目の大きいこと。まるで少女漫画に出てくる登場人物のようだ。
この子のこの目は反則だろう。かわいすぎる。

「あ、これですか? 明日やるライブのことが詳しく書いてあるみたいですよ。校門のところで配ってたのを貰ったんです」
「そうですかぁ。・・・・でも梨沙子のことだから、どうせみやのことしか書いて無いんだよねきっと。ケッケッケッ」

ちょっと早口な上にカツゼツが悪くて何て言ったのかよく聞き取れなかったが、愛理ちゃんは何か思い当たることがあったのか楽しそうに笑う。
・・・って、笑ってるんですよね、それ。
マスクをしているからなのか、そのくぐもった笑い声は何ともいえない不思議な感じの笑い声だった。

去り際、愛理ちゃんは僕に軽く会釈してくれた。その様がまた上品で。この子もまたお嬢様オーラがすごいなあ。

彼女の後ろ姿を見送ってから、階段を下りかけると、何か落ちているのを見つけた。
あ、これ愛理ちゃんが落としていったんだ。
今ぶつかりそうになった拍子に落とさせてしまったようだ。あわててそれを拾い上げる。

A4の用紙、なんだろうこれ。

「消失点-Vanishing Point-」

書いてあるのは、これは歌の歌詞なのかな。
印刷してある歌詞にエンピツで文字にマルしてあったり矢印や斜線などいろいろな記号やコメントがメモ書きしてある。

  言っておかなきゃいけないことが この世にはたくさんあるんだよね本当は
  繰り返してく季節の中で 甘えてたと気付いても きっと遅すぎて

ちょっと読んでみただけで、心の中にしみこんでいくような言葉。
いい詞だなあ。これ。
この曲も明日やるのかな。だとしたら是非聴いてみたい。楽しみにしておこう。

これ、とにかく届けないと。
あわてて、愛理ちゃんが歩いていった方向を追いかけてみたけれど、もう彼女の姿は見つからなかったんだ。



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