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“それでは菅谷さん、類は友を呼ぶという言葉を、身近な例に置き換えてせつめいしてください”

ついこないだの現代文の授業で、私は先生から指名されて、こんなことを聞かれた。
その時、自信を持って「美人のまわりには美人が集まる!!」って答えたんだけど、みんなのの反応は微妙なカンジだった。

絶対あってると思うんだけどなあ。だって岡井さんとこの寮生とか、クラスの仲良しグループとか、だいたいそんな感じじゃん。それに・・・


「?なにか??」
「あっ、・・・べつに。スミマセン」


そう、この人も。
今、私の隣でBuono!ライブのアンコール開演を待っている、この超超超目力って感じの美人。・・・岡井さんちの、メイドさん。
この人は、私の夏焼先輩の特別な人なのだという。ほら、やっぱり類友じゃん。・・・特別ってのが思いっきり引っかかるけど。


まあ、確かに?
これだけくっきりしたパーツで構成されたお顔なら、私の夏焼先輩の隣にいても見劣りするということはないだろう。
でも、特別な人って何。特別な人って。とくべ


「あの、ごめんなさいね」
「あばばばばこちらこそすみません!」

調子乗った心の中を読まれたのかと思って(岡井さんのまわりはそういう人が多い!)とっさに謝ると、思いっきり首を傾げられてしまった。

「いや、えーと、ライブ、最前で見たかったでしょう?みやびからのお願いとはいえ、こんなところで」

――ああ、そのことか。

「別にいいです。アンコールまでは一番前にいたし」
「でも、途中で泣きながら飛び出していきましたよね」

うぐぐ。見られていたとは。
この人、あんまし遠慮しないでズバズバ言ってくるんだ。あんまり私の周りにはいないタイプだ。まあ、K井ちゃんぐらいだろ。他に該当者がいるとしたら。


私の行動を、いろいろ疑問に思うのも無理はない。
今日は朝から校門の前でお手製のビラを配布して(他校の男の子とかにもあげたもん!)、お手製の夏焼先輩ハッピを着込んで、最前ではしゃぎまくってた私がどうして、今こうして、7列目の座席に座っているのか。


話は10分ほど前までさかのぼる。



*****

ぐすん、ぐすん


甘くて柔らかい、天女のそれといっても大げさではない夏焼先輩の歌声を背中に、私は暗い廊下で泣いていた。
楽しかったのに。途中までは心から、Buono!ライブを楽しんでいたのに、今はただただ切ないだけ。

だって、今日の夏焼先輩は、確実に恋をしていたから。ステージから。客席にいる誰かに。

最前列の特等席から拝み見た夏焼先輩。本当に美しい。神の化身なんじゃないかと思う。


でもでも、そのいつもより潤んだ瞳も、幸せの余韻が残る目じりの笑いじわも、唇(以下略)とにかく、絶対絶対絶対、夏焼先輩の心はどこか一点に囚われてしまっていたのだ。


そのことに気づいてしまった私は、もうステージを正視することができなくなってしまっていた。
だってだって、そんなのって悲しすぎるじゃん。

私の夏焼先輩が、私じゃない誰かを思っていて、それなのに私はこんなバカみたいに…


「ひっく」


わかってるもん。単なるファンの手に届くような人じゃないって。
勝手に私が好きになっただけだって。
だけどそうやって理屈で片づけられるほど私は大人じゃないし、そんなに簡単な思いでもない。

入学式の日、初めて夏焼先輩を見たときには、あまりの美しさに心臓が止まったみたいだった。
ちょっとけだるそうな表情、かっこよく着崩した制服。友達としゃべってるときだけ垣間見える、楽しげな表情とのギャップ。
あの日から、夏焼先輩の全部が、私の心を捕えている。今この瞬間も。


だから、今ステージを直視することができないこの葛藤…うう、辛いよう。
このハッピも、脱ぎ捨てられたらどんなに楽だろう。でも、そんなことはできない。
だって、私はそれでも夏焼先輩のことが・・・


「すぎゃさん?」


いつもどおりの変な呼び方で、心配そうな声が頭上から降ってきた。



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