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昨日、わたしのところに栞菜が血相変えてやってきた。
それで栞菜が言うには、例の男の子は舞ちゃんと舞美にふたまたをかけているらしい。
ふたまたって・・・ 栞菜ちょっと落ち着いて。

でも、本当かなあ、それ。
栞菜は「絶対間違いないかんな!」と息巻いていたけれど、わたしにはどうにも腑に落ちないのだった。

あの子が舞ちゃんに好意を持っていることは最近知った。
さらに栞菜から、舞美に誕生日プレゼントを渡したのがこの子だということを昨日聞いたとき、そうか例の誕生日プレゼントあれは舞美の勘違いだったんじゃないのか、ということに思い当たった。
今考えてみれば、あれはどう見ても舞ちゃんへのプレゼントだろう。
舞美とどういうやりとりの結果そうなってしまったのかは知らないけれど。
わたしはそう確信した。

大体、いつだってあの子は舞ちゃんのことばかり見ている。舞美のことはそれほど見てはいない。
お嬢様がご一緒のときはお嬢様のことも見ているけど、これはまあ分かる。誰だってお嬢様は見てしまうだろう。
で、舞ちゃん以外の寮生に対しては、栞菜のことも結構見てるよ。
少なくとも、舞美よりは栞菜のほうを見てると思う。
だから、舞美よりもむしろ栞菜にちょっと興味があるんじゃないのかな。
それを栞菜に言ったらどういう反応するだろうか。

しかしまあ、だとすれば何てわかりやすい子なんだろう。
年下の男の子か。
ついからかってみたくなる。
優位な立場から見下ろすような・・・こう、上から目線っていうんですか。
舞様の気分ってこういう気分なんだろうか、なーんて思ったりして。

おや、噂をすれば・・・彼が歩いてきたじゃあないですかムフフ。
晴れない顔をしてるのはどうしたんだろう。



どうやって届けよう。彼女がいそうなところなんて見当もつかないし。
あぁ、これは困ったぞ。どうしよう。

と、思って歩いていたら、通りかかった模擬店の前にいたのは、あの美人はえりかさん!

チャイナドレス!! 
う、美しすぎる。ここは本当に一介の高校なのだろうか・・・


「あら、この間の・・・」
「は、はい、こんにちは! 実はかくかくしかじかで、あの、これ、たぶん彼女の落し物だと思うんですけど、渡してあげてもらえますか?」
「いいですけど、どうして私なら愛理のこと知ってると思ったんですか?」

えっ! だっていつも一緒に歩いてるじゃないですか・・・
でも、それを言うと何かいつも見てるってことを白状してるみたいだし。

えりかさんの表情からは、そこはかとなく笑いをこらえているような様子が感じられる
どうやら、僕はこの年上のお姉さんにからかわれているのかもしれない。
うわー、何か恥ずかしくてまともにこの人の顔を見られないんですけど。

「なるほど、でもいま私ちょっと手が離せないので、友達に聞いてみますね、届けてくれるかどうか」

そう言うと、えりかさんはケイタイで誰かに電話をかけた。

「あ、もしもし? 今時間空いてる? ちょっと愛理に届け物してほしいんだけどいいかな」

「今、友達が来ますから、その子が届けてくれるそうです。ちょっと待っててくださいね。せっかくだから何か食べていきませんか?」

ここは中華の軽食を食べさせてくれるお店らしい。腹も減ってたし、ちょうどよかった。
いくつか食べやすそうなものを頼んでみる。

「ところで、もう会えましたか?」
「えっ!? 会うって、誰にですか」
「誰にって・・・だって会いに来たんでしょ?」

えりかさんは「私、知ってます」といわんばかりの顔で僕を見ている。
ひょっとして・・・ひょっとして、舞ちゃんのことを言ってるのかなあ。
いや、そんなはずはない。お嬢様以外にはバレていないはず。
でも、いま自分の顔を見られたらその瞬間に見抜かれそうで・・・
やばい、恥ずかしくて顔を上げられない。だから、うつむきながら黙々と食べるはめに。



「えりかちゃーん!!」

その子はやってくるなり、えりかさんの腰に飛びついてきた。
入ってくるなり抱きつくというこの登場の仕方。このあいだと全く同じだよ、栞菜ちゃん。今のはノーマルな抱きつき方だったけど。
栞菜ちゃんは本当にスキンシップがお好きなんですね。

「ちょっと・・・何でそんなにテンション高いわけ?」
「だって、だってさ、お嬢様がわたしに、ダイスキ、って言ってくれたんだよ! それでテンション高まらない方がおかしいかんな! どういうことかって? よくぞ聞いてくれましたグヒョヒョ。実はさっきまでお嬢様とデートしてて(ry・・・・って、またお前か!」

やっと僕に気付いた栞菜ちゃん。
リアクションが楽しいなーこの子本当に。
ところで今、お嬢様とデート、って聞こえたんだけど、それってどういう・・・

「えりかちゃん、この子・・・・何で・・・」

指を指すな、指を。

「これ拾ったのがこの子なんだよ。愛理にメールしたら、今体育館にいるそうだから、悪いけど届けてあげて」
「あのー、、彼女のいる場所がわかるんなら、僕が自分で届けますけど」
「いや、それはダメだかんな。届けるとかウソついて持ち帰ったあげく、この直筆コメント付き歌詞カード(余白にはすーさん。のイラスト付き)をヤ●オクででも高く売るつもりがないと、どうして言い切れるかんな」
「ちょっと何言ってるか分かんない・・・」
「とにかく、愛理には私が届けるから」
「なんでついてくるんだよ。さては次は愛理に狙いをつけたわけ?」
「栞菜ちゃんさー、さっきから何を言ってるのか、意味がわからないんだけど」
「!!どうして私の名前を!?」

あ、いけね。

「えりかさんが言ってたでしょ、栞菜って。だから栞ちゃんの名前を知ったってわけ」

言ってたっけ? まぁ上手くごまかせたような気がする。

「栞ちゃんって! 馴れ馴れしいんだかんな」

栞菜ちゃん、この子は男子の軽口への対応に慣れてるね。女子校の生徒さんらしくないような気もする。男子の扱い方を心得てるようなのは何故だろう。
でも、それで良かったよ。この状況で変に警戒されて一方的に避けられたらどうしようもないもん。
栞菜ちゃんに感謝します。だから、ちょっと持ち上げてみる。

「ところで、さっきまでお嬢様と一緒だったって言ってたけど、栞ちゃんとお嬢様は仲がいいんだね」
「そりゃあ、お嬢様にとっての一番はこの私ですから」
「やっぱりそうですか!そうなんじゃないかなーと思ってたんですよ!」
「わかる? そっかー、やっぱりわかっちゃうか。まあ当たり前のことだけどね」

軽くおだててみたら、さっきまでの怖い表情がウソのように笑顔を向けてくれた。
コロコロと表情が変わる栞菜ちゃん。これだよね、この変化する表情が魅力的なんだ、栞菜ちゃんは。機嫌も直ってきたみたいで、良かった良かった。
と、ホッとしていたら、再び彼女の表情が変化する。

「うまくかわせたと思ってるみたいだけど、疑いが晴れたわけじゃあないからね! あと、私が男子との付き合い方をよく知ってるみたいな言い方は誤解を招くかんな。私は男の子よりも女の子の方が好きなんだから!」

なぜ僕が考えていたことがわかるんだろう・・・ この子も舞ちゃんと同じ能力(?)持ちなのか。
そんな僕の心の中を読めているかのように、℃や顔全開の栞菜ちゃん。
でも、自分の発言が自爆をしているということには気付いていないようだった。
そうか、栞ちゃん、男の子よりも女の子が好きなのか・・・

歩いて着いた先は体育館の裏口。
リハ中は関係者以外入れないからここで待ってて、と言われて僕は外で待つ。
結構長い時間待ったあと、栞菜ちゃんが出てきた。

「愛理が、ありがとう、だってさ。それで、これを渡してあげてって頼まれた」

栞菜ちゃんは少しそっぽを向きながら、僕に1枚のチケットを手渡してくれた。

「栞ちゃん、僕のことを愛理ちゃんに悪く言ったりはしないでくれたんだね」
「その場にいない人の悪口をいうのは好きじゃないんで。もし一緒にいたら私得意の話術でとことん貶めてやったけどね」

だから僕に外で待ってろって言ったのだろうか。それは考えすぎかな。
栞菜ちゃん、この子とはやっぱり仲良くなりたいな。

貰ったのは明日のBuono!ライブのチケット。
まじですか! これは嬉しい。
ビラを読んだときからこのライブは是非行ってみようと楽しみにしていたのだ。
そのチケットを貰ってしまったりしていいんだろうか。

「栞ちゃん、ありがとうね」
「べ、別に、わたしが礼を言われる事は何もしていないかんな」

なんか照れてる。かわいいw


「・・・・・あのさ、」

栞菜ちゃんは何故か一瞬ちょっと思いつめた表情になった後、こう言った。

「これだけは憶えておいて。もし私の大事な人達を傷つけたりしたら、一生許さないから」



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