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つ、ついに本人に言ってしまった・・・!

今までだって、もぉ軍団メンツとか、友達にならいくらでも言っていた、“夏焼先輩は大事な人”ってフレーズ。

もちろん100%本心だけれど、やっぱり面と向かって言うにはとても重い言葉で・・・。だからこそ簡単に言えないっていうか・・・あっ、でも、簡単な気持ちっていう意味じゃなくて、つまり(以下激しい自問自答)

「・・・梨沙子ちゃん」
「はいっ!!」

気がつくと、夏焼先輩が至近距離でジッと私を見ていた。
あばばば、ドアップ!みゃんこは美神!
反射的に後ずさりしかけた私の腕を、ガシッと掴む先輩。
こっそりおそろいにした、ホワイトムスクのコロンが香る。私はもはや失神寸前だった。

「ねえ、梨沙子ちゃん」
「は・・・はひぃ」
「みやのこと、特別だって思ってくれてるの?」
「と、とくべつゅれしゅ」

ああ、どうしたらいいんだろう。
あの夏焼様が、夏焼大明神が、私のような下賎な民にお声をかけてくださっている。ありえない!どうしよう!

横目でチラッと伺ったまーさと舞ちゃんは、唇の端をヒクヒクさせて、もうわかりやすくドンびき状態。
ももなんて、後ろ向いて笑いを堪えてるのがバレバレ!失礼な!
あ、熊井ちゃんはまーさによっかかって寝てます。飽きて。


「みやびさん、梨沙子さんはね、本当に本当に、みやびさんのことが大好きなのよ」

そんな中、子犬みたいな目をらんらんと輝かせた岡井さんだけは、全く私のアイタタな状態にも動じていないようだった。

「例えば、お召しになっているその法被。
梨沙子さんが、250枚近くにも及ぶみやびさんのお写真の中から、厳選したものを背中にプリントした、珠玉の1着なのよ。
それから、よくご覧になって。ネイルやハチマキ、身に着けていらっしゃる小物類全て、みやびさんのイメージカラーである赤で統一されているわ。
普段お話している時も、梨沙子さんのお口から、みやびさんのお名前を聞かない日はないの。ちなみに、昨日は42回ほど、“夏焼先輩”とおっしゃっていたわね。
こんなに純粋で、見返りを求めもしないひたむきな愛が他にあって?
千聖は、梨沙子さんこそが、みやびさんのさいきょうひっとうをたで、おまいつで、まさいで・・・」

――ああ、やめて岡井さん!私の恥ずかしいエピソードを意気揚々と語るのも、インターネッツで調べたヲタ用語を適当に使うのも!

岡井さんが何か言葉を発するたびに、抱き合ったまーさ&舞コンビは、一歩ずつ私から離れていく。
「べ、別にひいてないよ?あはは?」みたいな気を使った笑顔が逆に辛いんですけど!

他人のリアクションがこんなんじゃ、当の夏焼先輩なんてもう、ダンゴ虫を見るような目をしていることだろう。


「・・・いやー、どーしよう、もも!こーゆーの、照れる!」


だけど、うなだれる私の頭上から降ってきたのは、意外にも明るい声だった。


「え・・・」
「だってなんか、本物のアイドルみたいじゃん、うち!なんちって」

恐る恐る伺い見た夏焼先輩は、ちょっぴりほっぺを赤くして、ケラケラと甲高い笑いをあげながら、私の肩をバシバシと叩いた。

ちょ、ちょー可愛い・・・無邪気に笑っとる・・・女神の微笑みや・・・ああ、写真撮りたい・・・じゃなくて!私にドン引きしてない!良かった!

「ねー?だからもぉが言った通りでしょ?梨沙子はガチなんだって。ほんっとーにみやのこと応援してるの。
親友のあいりんも、軍団長のもぉのことも置いてけぼりになっちゃうぐらい、ね!」
「そ、そうっそうです!」

すでに心臓は胸を突き破って飛び出しそうなほど高鳴っていて、頭にも完全に血が上っているような状態だけど、私は勇気を振り絞って口を開いた。


「あの、た、たしかに、夏焼先輩はプロのアイドルじゃないかもしれないけれど、でも、梨沙子にとっては、本当に美人で・・・歌も、上手いだけじゃなくて、すっごい頑張って練習してるの知ってるし、でもそういう陰の努力を見せないとこも好きで、だから、・・・ひっく
ほ、ほんとに、ずっと憧れてて、だから、私にとっては特別な人で」
「えー、泣かないで、梨沙子ちゃん!大丈夫?」

何言ってるか自分でもわかんないし、メソメソしてるし、相当悲惨な状態だろうに、夏焼先輩は変わらず優しくしてくれる。

「そんなに言ってもらえて、嬉しいよ」
「ウッウッ・・・き、きもくないれすか」

きもいれす、と口パクする舞ちゃんはさておき、夏焼先輩は笑顔で首を横に振ってくれた。


「全然!まー、ちょっとびっくりしちゃったけど!私なんかに、そんな一生懸命になってくれるなんて。しかも、梨沙子ちゃんみたいな可愛いこが!
別に、盗撮とか危険な応援してるわけじゃないんでしょ?」
「・・・・・・・はいもちろんです」
「お前何だその間は」
「ももはお口チャック!」
「だったら、みや的には嬉しいな。ホント、キモイとかないから。・・・特別な人かぁ」

ちょっと小首を傾げて笑った夏焼先輩は、私のおでこにコツンとおでこをぶつけてきた。

「だったら、梨沙子ちゃんも、私の特別なファンだねっ」
「あばばばば」

もう、限界。

「梨沙子!?」

ああ、神様(礼拝さぼってごめんなさい)仏様夏焼様。こんな幸せがあっていいのでしょうか。
1キモヲタから御本尊公認の特別なファンへと超絶ジャンプアップ。しかも、おでこコツンのサービス付きで!もう夢なんだか現実なんだか判断できない!

駆けつけた茉麻の腕の中で、心配そうな夏焼先輩と目が合う。

「わ、わたひ、ほんとうに、しぇんぱいの、とくべつ・・・」
「うん、本当に、だよ」
「フヒヒヒ」

よかったわね、梨沙子さん。なんて涙ぐむ岡井さんに、(寝てたくせに)その肩を抱いて号泣している熊井ちゃん。みんなが私のために泣いたり笑ったりしてくれて、今日ばっかりは、いじけて拗ねてた自分のことを情けないやつだと思った。

「梨沙子ちゃん」
「はいっ」

もう、みっともなくグズグズ泣いたりしない。
何せ、私は特別なファンなのだ。特別な特別な特別な(ry

「みや、梨沙子ちゃんのこと特別って言ったの、口だけじゃないからね。だから」

少し、夏焼先輩の顔が真顔に戻る。

「今から、私の特別な人に会って貰いたいんだ。今日、私が変だったの、どうしてだか知ってほしいから」



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