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校舎の屋上にやってきた。そこにある給水塔。
見ればハシゴが付いてるじゃないですか。
何とかと煙は高いところにのぼりたがるっていう例えの通りなのか、僕はこういうところを見つけるとつい登りたくなっちゃうのです。
はしごを上って一番高いところまで登りつめる。こんなところに勝手に入ったら怒られちゃうかな。
でも思ったとおり、ここからの眺めは絶景だ。学園内を一望できる。

そこに座り込んで校庭を見下ろしながら、ここに来る前のさっきの出来事を思い浮かべてみた。
面白かったなあ。



校庭の片隅でやっていたイベントの出店。女子サッカー部の出店だろうか。
サッカーのゴールが設置してあるその店の生徒さんに声をかけられる。

キックターゲットかぁ。やってみようかな。
実は結構得意だったりもするのだ。


向き合ったゴールマウスの中に設置されたボードは5枚。
5枚か。5枚なら1枚あたりの大きさも結構大きいから、たいして難しくないな。

こういうのを成功させるためには、具体的目標を設定してモチベーションを高めてやることが必要なのだ。

よし、それじゃあ、5枚全部抜いたら舞ちゃんはおれの嫁!

これでばっちり。
あとは成功するイメージを頭に思い浮かべて、左足に全神経を集中する。
まずは右上からいってみようか。
集中を高める。この緊張感。久し振りだ。

おっしゃー!
5枚全部抜いた。やっぱりボールの感触はいいなあ。

「かっこいいー!」

女の子の歓声が聞こえる。
女子高生の歓声を浴びれるなんて、すごいじゃん自分。
得意げになって振り向くと、その女の子たちが見ていたのは、まぁもちろん僕のことではなかったのだ。
なーんだ・・・

彼女たちが見ていたのは、

「キャー生徒会長さーん!!」「かっこいいー!」

お姉ちゃんだ!
隣りの別のゴールマウスにいたお姉ちゃん。

予期しなかった嬉しい出来事に、僕もつい間抜けな笑顔を向けてしまう。
お姉ちゃんが感心したように僕に声をかけてくれた。

「今日も来てたんですか。見てましたけど、見事全部抜くなんて上手いんですねー」

毎日来てましてどうもすみません。
でも、僕を憶えてくれたんですね。さらに、今の見ていて頂いたんですか。重ね重ね光栄です!

お姉ちゃんはさらに続けて話しかけてくれる。

「じゃあ、もし良かったら次は私とPK合戦なんてどうですか」

お姉ちゃんと対戦! なんという楽しい申し出なんだろう。
そんなラッキーな役が僕でいいんですか。喜んでお相手させて頂きます!

とは言ったものの、ペナルティーキックかあ。
実はPKみたいな力任せのシュートを蹴るのは、もう僕にはちょっと厳しいんだ。
でも、相手してくれるのはお姉ちゃん。こんな幸運めったにない。無理してでもやってみたくなる。
それに、女子高生相手のPK合戦ならお遊びみたいなものだろうから、まぁ特に問題ないだろう。

最初に僕がゴールキーパーをする。
しょせん女の子のキックでしょw そんな軽い気持ちでゴールマウスに立った。

11mの距離をおいてキッカーのお姉ちゃんを真正面に見つめる。
真顔のお姉ちゃんの凛々しいお顔が正面に。
見れば見るほどかっこいい人なあ。見とれてしまう(おっと集中しないと)。

お姉ちゃんが助走をつけて右足を振りぬく。なんてきれいなフォームだ。
その瞬間、弾丸のようなボールが僕の顔の横を通り抜けた。
一歩も動けなかった。動くどころか全く反応できなかったぞ。
何だ、今のシュート!タイガーショットかよ!

まわりからは一斉に黄色い歓声がわきあがる。当たり前のことだけど、何というアウェイ。

お姉ちゃんは学園の生徒さん達からもすごい人気なんだな。
他校の僕にも親切にしてくれるような、そんな絵に描いたようないい人で、善人オーラを発しているのが目に見えるようなそんな性格の人なんだもん、そりゃあ誰からも好かれるに決まってる。

そういえば、生徒会長さんなんですね。
いま見たとおりスポーツも運動神経抜群みたいだし、会話の端々からも感じられる知性を見ると勉強の方も出来るんだろう。極めつけが生徒会長。

「完璧な人」っていうのはそれはきっとお姉ちゃんのような人の事を指す言葉としか思えない。

次は僕の蹴る番だ。
再びお姉ちゃんを真正面に見ることになる。僕を見据えるお姉ちゃん。あぁ、かっこいい、本当に。
たった今も脳内でその魅力を語ってしまった当のお姉ちゃん相手に、ちゃんと蹴ることができるのだろうか自分。
それに、大丈夫だとは思うけど、もし蹴ったボールをお姉ちゃんにぶつけたりでもしたら。その時は生きて学園を出られなくなる予感がする。

だから、ここはあれですよ。リスクを避けるためにも、遠藤選手がよくやるようなコロコロPKで。

お姉ちゃんの動きをよーく見て、重心がまさに片方の足に乗る瞬間に、インサイドキックでそちら側にコロコロと転がす。
体重が乗ってしまった軸足側には飛ぶことができない。反応はしているのに逆をつかれて動けないお姉ちゃんの横を、ボールはゆっくりとネットに吸い込まれる。
ヤラレター!っていう感じの笑顔がはじけるお姉ちゃん。爽やかすぎる。どこまでも笑顔の似合う人だ。

だが、ゴールが決まったその瞬間、まわりで見ていた人達からは僕に対してすごいブーイングだった。

「何それー・・・」「ズバッと蹴ればいいのに」「生徒会長さんに失礼じゃない」「それは無いよねー」「全く小さい男だかんな」「勝負するのが怖いんだろうね」「せこいよねー」

すごい言われようだ。そこまで言わなくてもいいじゃん・・・
一斉に叩かれまくって、さすがに凹んだ。

だから2本目からは普通に蹴ろうとしてみるが、あんなに美しい人をずっと正面に見つめてるんだから、緊張でやっぱり足がまともには動かないのだった。

結果、お姉ちゃんには5本全部強烈なシュートを決められた。5本目は見事にみぞおちに入った(悶絶した)。
対して、僕は1本も決められなかった。
だって、お姉ちゃんと真正面から向き合って、気迫を向けられるわけないじゃん。
こういうのは気持ちが上回ったほうが勝つのだから。最初から勝負にならなかったね、こりゃ。

常勝の勝利者のみが持ちうる風格が漂っているお姉ちゃん。
お姉ちゃんに勝負を挑んでそれで勝てなくて悔しい思いをさせられている人もいるんだろうなあ。
その仲間入りが出来たこと、もう僕は非常に光栄に思います!

周りにいた女の子たちはキャーキャーとはしゃいでいる。
流れる汗と全開笑顔がとても爽やかなお姉ちゃん、本当にかっこいい。さすがおれの義姉(あね)。


あぁ、楽しいな。やっぱり僕はサッカーが好きだ。
またこういうのやりたいなぁ。なかなか機会はないだろうけど。
サッカーの話しも思いっきりしたい。誰かサッカーの話しとか存分に出来るような詳しい人いないだろうか。



ホント面白かったなあ。
そんな、さっきの出来事を思い出してニヤニヤしていたら、眠くなってきた。
昼下がりの日差しが心地いい。

いつのまにかまどろんでいたようだ。




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