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「おい・・・おいおいなっちゃんよ。キテるよね、ちさまい。どうすんの、これ」
「心配しなくても、舞ちゃんの脳内はいつもキテるよ・・・痛っ!蹴らないでよ!女の子でしょ!」

無事コンサートを終え、食事の後ホテルへ移動する車内で、私は隣のなっちゃんに話しかけた。

「聞いてよ!だってすごくない?舞の愛が、あの(自主規制)の千聖の浮気性をなおしゃしぇたのでしゅ」
「・・・うん、本当に良かったと思う!おめでマイマイ!」

持ち前の女優魂を発揮して、わざとらしい笑顔で祝福してくれるなっちゃん。憎たらしいけど、今は幸せだから流してやる。
後部座席で、イヤホンを舞美ちゃんと分け合ったまま眠りこけてる俺のちしゃとの顔をチラ見して、さらに私の機嫌は良くなっていく。


「しかもさ、このタイミングでだよ?今日さぁ」
「うん」
「舞と千聖、ホテルの部屋一緒なんだけど!」

そう。
「もう浮気やめる」と千聖が宣言し、キスまでくれたこの記念日に、なんとなんと相部屋だったのです、ちさまい!
これはもう、運命が私たちを祝福していると言ってもいいはずだ。


「てか、ちさまいは大体いつも同部屋じゃん」
「・・・なっちゃんって、乙女心わかってないよね。ちゃんと恋愛しないであればっかやってるからだよ、一人エ」
「ギャアアアア」


うるさい!と寝ぼけた千聖にかばんを投げつけられて、私たちは肩をすくめた。


「ま、でも良かったんじゃない?マジで」


落ち着きを取り戻したなっちゃんが、したり顔で再びささやいてきた。

「だって、舞たちの関係が安定してるんだったら、早貴はもうあのちさまいエロ妄想を聞かなくてよくなるんでしょ?」
「なにいってんの、あれはまだまだ続くよ」
「ぎゃふん」
「てかほんとにね、なっちゃん。
舞はね、後悔してるの。前に千聖にひどいことしたでしょ。あれは本当に良くなかった」


そう、なっちゃんのエロDVDに感化されて、千聖にあんなことやこんなことをしたあの事件。
あれは興奮し・・じゃなくて、本当に本当に反省しているから、しばらくはエロい接触は避けようと、ずっと舞なりに気を使っているのだ。

「だから、なっちゃんには今後も舞の妄想劇場に付き合ってもらうよ。定期的に放出しないと、噴火しちゃうから」
「もー、マジ勘弁・・・」

うんざり顔のなっちゃんは放置して、私は窓の外へ顔を向けた。

ともあれ、今日の私はすこぶる機嫌がいい。
千聖が舞だけ見てくれるって言ってくれたんだから、もうそれだけで十分。
えりかみたいに抱き合ったりとか、舞美ちゃんみたいに千聖の体に触れたりする必要は全然ない。
もっと深い、心と心の大事なところが重なり合ってるっていうことが重要なんじゃないかな。愛ってそういうものだと舞は思いましゅ。
キスをしたり、それ以上の事をするっていうのは、あくまでその延長線上にあることであって云々



*****

所変わって、車移動から30分後のホテルのちさまい部屋。

「・・・まーい、千聖ちょっと外出るから」
「えっ!う、うん」

「大丈夫?」
「へーき。てか気にしないで」

部屋の扉が閉じる音を背に、私はため息をついた。
――全然ダメ。舞、意思弱すぎ!!!私は頭を抱えた。

さっきなっちゃんに車の中で威張り散らした言葉のとおり、同室だからといって、別に千聖に変な事をするつもりはなかった。本当に。この部屋の中を見るまでは。


「・・・和室とか、エロすぎじゃね」

私はそうつぶやいて、お布団の上にダイブをかました。

そう、珍しい事に、本日は和風のお部屋だった。
そして、ホテルの人が宿泊人数を間違えたのか、布団は一つしか敷いていなくて、千聖が「うわー、めっちゃドキドキするぅ」なんて言うもんだから、プラトニックラブ(笑)を唱えていたはずの私の頭は瞬時に沸騰してしまったのだった。


畳の匂い。枕もとの仄かな灯篭。ちょっと古ぼけた布団。
いつもの部屋と勝手が違うからか、はたまた日本人のDNAに刻まれていてどうたらこうたらだからか、すごくドキドキしている。


やっぱこれは・・・一緒の布団で寝るのか。そんなことして、私は大丈夫だろうか。
きっと寝るとき、千聖は手をつなぎたがるだろう。
そんで、舞ちゃんの手ってあったかいね、とかいって妖しく笑うんだ。
そのまま、私の肩に頭を押し付けるようにして、高い体温と、艶かしい寝息が・・・


「あああもう!!!」
「舞、なにやってんの?」


土下座ポーズでもだえていると、いきなり後ろからお尻を蹴られた。

「んだよ、千聖・・・って、ちょっとまって、何それ!」
「何って、見ればわかるじゃん。ちょっと手伝ってよ」

顔を上げ、いとしのちしゃとを眺めようとした私の視界に、信じられないものが飛び込んできた。


「なんでそんなの持ってきてんの!」
「だって、このままじゃどっちか布団なしになっちゃうじゃんか」

そう、ちょっとの間部屋を出ていた千聖は、小さい体をよたよたさせながら、布団セット一式を持って戻ってきたのだった。

何怒ってんだよー、なんて笑いながら言うその笑顔が心底憎たらしい。

「マネージャーさんに聞いたらさ、一組布団あまってるっていうから」
「・・・舞と一緒に寝ればいいじゃん」
「やだよ暑苦しい」

睨みつける私なんて相手にもせず、千聖は手際よく布団をセットしていく。
もう、本当にデリカシーないんだから!さっきまでのドキドキ感も、ムラムラ感も一気に吹っ飛んでしまった。

「舞?」
「もーいい。舞疲れたから寝るよ。お休みっ」
「うわっ、こえー」

明らかに拗ねてるってわかってるはずなのに、千聖は気にも留めてくれない。
まったく、付き合いが長いというのも考えものだ。こういう時、ご機嫌なんてとらずに即放置プレーになってしまう。背中越しに聞こえる鼻歌が、さらに苛立ちを倍増させる。
「ねー、電気って、手元のやつ以外は消していい?」
「好きにすれば」
「ほーい」

信じられない。信じられない。信じられない。何その軽い態度は!
今日の今日まで浮気三昧で、やっと改心した日ぐらい、もっと彼女(舞でしゅ)に優しくするべきなんじゃないのか!

「おやすみ、舞」
「・・・うん」

わかってるけど。千聖の本妻で居続けるためには、こういう試練にもじっと耐えなければならないんだって。
でもちょっとぐらい、舞の布団に布団くっつけるとか、いじけてるんだから機嫌とるとか、そういうオプションがあってもいいんじゃないのかい、岡井さん!


「んん・・・フガフガ」


その後もたっぷり数時間、私はふとんの中で悶々としていた。
対照的に、マイペースに寝言を繰り返す千聖。もう、勝手に一人で寝ないでよ!寂しいじゃん!


「グフフ・・・むぃやヴぃちゃぁん・・・」
「あぁん?」


「グフフフ・・・しょんなとこ、だめだぉ、みやびちゃん・・・ドゥフフフ」


――プツッ


自分の頭の中で、何かが弾ける音がした。


えっっっらそーに、「みやびちゃんは性欲の対象には(ry)」とか言ってたくせに、はい出ました、岡井さんの大嘘つき!

「ムフフフ・・ぐへへへ」
「うるさい、千聖!」

いい度胸じゃないか。恋人の隣で違う女との夢を平然と見るなんて。NO浮気宣言をしたこの日に。
そっちがその気なら、こっちもその気でしゅよ、岡さん。


「・・・てか、うちら恋人同士なんだから、いいよね」

自分のその声がやけに湿っていて、舞様モードに切り替わったことを自覚する。

私はゆっくり体を起こして、仄かな明かりに照らされた寝顔をジッと見た。
こんなに舞のこと苦しめてるのに、唇をむにゅむにゅ動かす仕草は赤ちゃんみたいだ。そのギャップに心臓がドキドキと波打つ。


「千聖が悪いんだからね」

車の中での、なっちゃんへの宣言を打ち消す言い訳をしながら、私は一気に千聖のふとんをはぎとった。



・・・
・・・・・
・・・・・・・


「岡井さーん・・・」



はだけてる、というレベルじゃなく、腰のとこに全部巻きついた浴衣。
ずれたブラ。はみだすたゆんたゆん。がにまたに青いパンツ。無意識にへそを掻く手。

無駄なナイスボデーとはよく言ったものだ。
千聖の布団の中では、想像以上の光景が広がっていた。


「・・・マジで、ありえないんだけど」


真っ白だった頭が、少しずつ冷えて元に戻っていく。

まあ、いろいろ丸出しになっていらっしゃいますし、シチュエーション的にはエロいと言えなくもないけれど、エジプトの絵画のようにカクカクと直角に曲がる手足と、あまりにも幸せそうなアホっぽい寝顔が、私の気力を萎えさせる。


これは・・・素直に欲情していいものか。それとも紳士的に浴衣を直して、何事もなかったように隣で眠るべきか。

世にもくだらない葛藤に頭を痛めながら、私は布団を剥ぎ取ったまま、お日様が昇るまで千聖の惨状を凝視し続けたのだった。


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