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・・・・何だかお尻の辺りが湿っている。気持ち悪い。

「舞ちゃあああん!」
なんだよ、千聖うるさいな。私はいつのまにか眠ってしまっていたらしい。
千聖が私の体をがくがく揺さぶる。
「んー、ちょ、待っ・・・・」
?この手は、千聖の手じゃない。もっと細くて、ひんやりしている。
眠くて閉じかかる目を無理矢理こじあけると、眩しい光の中からなっきぃの唇が顔に近づいてきていた。
「うわあ!何!何!」
「起きた!舞ちゃん起きたよぉみぃたぁああん!」
高い声で耳がキーンと鳴った。おまけに涙がボタボタと顔に落ちてくる。
な、なっきぃとキスする予定はない。一体何が起きているんだろう。
「もう、バカバカバカ!どうしてごんなところにぎだの!」
そっか、バレちゃったんだ。まあ、ここら辺が潮時だったのかもしれない。
まだ海は真っ黒で見えなかったけれど、みんなが持ってる懐中電灯で洞窟の中だけは昼間のように明るくなっていた。
「な、な、なっきぃ。逃げないからちょっと離し」
「何言っでんの!あどねぇ舞ぢゃん!みんながどでだげ心配しだのがわがってんの!」
わかった、わかりました。ごめんなさい。だから鼻水を落下させないで!

「千聖ぉ。どうしちゃったんだよー」
隣では、栞菜愛理コンビが千聖の傷だらけの足をさすったり、髪をとかしたりしている。
えりかちゃんは後ろから千聖を抱きかかえている。でも私たち以上にビショビショだ。さては海に落ちたな。
舞美ちゃんは黙って仁王立ちで私たち二人を眺めていた。やばい。無表情モードだ。
「舞ちゃんね、危なかったんだよ。二人がここ来たときはどうだったか知らないけど、水が押し寄せてきてたの。
二人とも水に浸かったまま目閉じてて私、もうだめかと思った」
なっきぃが夢中で話しかけて来た。さっきのは人工呼吸か。

「・・・とりあえずさ。」
舞美ちゃんが口を開いた。空気がちょっと凍る。
「ここは狭いし、危ないから浜辺に戻ろう。」
そのままきびすを返して、さっさと外へ出てしまった。
どうしようどうしよう。これはまずいかもしれない。ストレートに怒られたほうがマシだ。
「舞ちゃん、行こう。」
なっきぃが体を起こしてくれて、体を支えられながら洞窟を出た。
「今、何時ぐらい?」
「・・・0時だよ。夜中の0時。私たちずっと二人を探していて」
なっきぃのお説教は延々と続く。
0時って。
私たちが逃げ出したのは、夕方のことだった。
それからずっと、みんな私達を探していたんだ。ごはんも取らずに、寝ないで。
きっとスタッフやマネージャーも一緒だ。パパやママに連絡が行ってるかもしれない。
今更ながら寒気がしてきた。自分達のやったことの重大さに足がすくんだ。
「ど、どうしよう、なっきぃ。舞なんてことを」
歩いてられなくなって、足場の悪い中腹にしゃがみこんでしまった。
「舞ちゃんしっかりして。まだ警察には言ってない。みぃたんが心当たりあるっていうから、とりあえず様子を見ようってことになったの。
さっき二人がいたっていう連絡はしたから。みんなで一緒に謝りに行くから、ね?大丈夫だよ。」
私たちのやりとりが聞こえたのか、背後で千聖が息を呑んだ。
「大丈夫だって。ほら行くよ。舞美が待ってる。話はちゃんと聞くから。」
普段は天然が目立つえりかちゃんが、今はシャキシャキしていて心強い。
みんなに支えられながらようやく岸に戻ると、「こっち。」と舞美ちゃんが手招きした。
「座って。」
水際を避けて、舞美ちゃんとえりかちゃんを正面に私と千聖が並んで腰を降ろした。愛理となっきぃと栞菜は四方に散らばって懐中電灯で私たちを照らしている。何だこれ。
普段なら笑って突っ込んでいるところだけど、とてもそんな雰囲気じゃない。
私たちはそれなりにまずいことをしたんだ。どう罵られてもしかたない。
「舞。ちっさー。」
名前を呼ばれて顔をあげると、舞美ちゃんが右手を振り上げていた。

えっ、待ってまだ心の準備が。

反射的に目をつぶった。

ビッターン!
ペチン

・・・・あれ、痛くない

おそるおそる目をあけると、舞美ちゃんが両手で私のほっぺたを包んでいた。

「えっビンタじゃないの!」
えりかちゃんは千聖を思いっきり張り倒していたみたいだ。とはいっても握力7。千聖はキョトンとした顔をしていた。

「もー・・・・2人とも、怖かったでしょ。ごめんね。」
怒られるのかと思っていた。でも、舞美ちゃんは私と千聖を抱き寄せて、事もあろうか謝ってきた。
「私、2人がこの岩場にいたのは気づいてたんだ。でももうちょっと遊ばせてあげようって思ってたら、いつのまにか見失ってた。バカだ私。」
「ち、ちがうよお姉ちゃんは悪くない。私が千聖を誘って、千聖は断りきれなくて一緒にこんなとこまで来ちゃったの。」
「それは違うわ。私は、私の意志で」
「ストーーーーーーップ!!」

どこかで聞いたような口調で、なっきぃが止めに入った。
「もう誰が悪いとかいいよ。2人はどこにも行かないでしょ?これからもキュートでしょ?」
「うん。」「はい。」
「じゃあ、みんなで大人に謝りに行こうよ。」
愛理がにっこり笑って言った。


こうして、私たちのランデブーは失敗に終わった。
砂浜を歩く間、千聖と手をつなごうとしたら栞菜にチョップされた。
「2人は1週間接近禁止だから。」
無理矢理遠ざけられて、舞美ちゃんに腕を引かれた。
「舞。」
「はい。」
「・・・・あんまり、勝手に大人になるなよ。」
照れ笑いのような、泣き笑いのような顔で舞美ちゃんはデコピンをくらわしてきた。
「ほらほら、行くよ。」
デコピンは痛かったけれど、大人扱いをしてくれて少し嬉しかった。

「いやだ、えりかさん。私そんなことしていないわ。本当よ。ひどいわ。」
・・・あっちはあっちで盛り上がってるみたいだ。

ふと、千聖と目が合った。
思わず手を振ると、栞菜がまた空中チョップでさえぎってしまった。
“見つかってよかったわね、舞さん”
たしかに千聖の目はそう言っていたと思う。
そうだね千聖。私たちは帰る場所があるから、こんなバカなことができたんだ。

「まあ、1週間ぐらいは我慢しよっかな。」
私は唇を指でなぞりながら、栞菜の目を盗んでもう一度千聖と微笑み合った。


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