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ステージに照明が再び点る。
コールから解放され肩で息をしながら、再びあがった黄色い大歓声を聞きながらステージを見つめる。

ついにステージに再登場した3人。
その姿を見て、

  「愛理ちゃん、かわいい・・・・」
「「「「「「ももち、かわいい・・・・」」」」」」

僕も桃ヲタさん達もそう言ったきり、魂を奪われたかのように動きが止まってしまった。見とれてしまったのだから。あまりにも美しいその姿に。

会場全体からため息のような感嘆の声があがる。
その後、思い出したようにだんだん声援が飛び始めると、我に返った桃ヲタさん達はアンコールのその衣装に反応を示しはじめた。

「ももちかわいい。このシンプルな衣装もよく似合ってるな。さすがももち」
「そうか!イヤリングとか全てはずしてるんだな。だからか」
「今日の衣装さんセンスいいねー」

なんだ!? おまえら凄いな。
キモヲタのくせにメンバーがアクセサリーをはずしたことまで気づくとは、そんな細かい所までしっかり見てたのか。
いや、キモヲタだからこそ逆にそこまで見てるのか。恐るべし桃ヲタ。

それに比べて僕は、愛理ちゃんがどんなアクセサリーをつけてたかなんて、ちょっと情けないことに全然憶えてないや・・・
ステージを見てたつもりになってたけど、もっともっと真剣に見なきゃダメだってことなんだね。
修行が足りないことを彼らに痛感させられた。僕はまだまだだなぁ。

>「あと2曲でラストになりますが、来年も来てくれるかなー?って、来年できるとしたら、愛理と2人組だけどねっ」

工工エエエエエ(´Д`)エエエエエ工工
桃ヲタ大発狂。
本気でショック受けて茫然自失で泣きそうな顔になってる奴までいる。

>「ちょっとぉ!もぉ参加するからね!大学から駆けつけるから!」

桃子さんの言葉に、すぐに復活した桃ヲタ大歓声。わかりやすいやつらだ。
この人達の反応を見てるだけで面白い。


アンコールには秘密のゲストの人が呼ばれてるそうだ、桃子さんがそう言っていた。
そして、桃子さんがそのゲストさんをステージに呼ぶと、そこに登場したのはセーラー服を着た生徒さんだった。
真野さんと呼ばれてたその人、これまたきりっとした顔立ちの日本美人だ。
この学校には本当に美女しかいないのだろうか。
って、セーラー服を着ているということはこの学園の人ではないのか。

でも桃子さんと真野さんはお互いのことを良く知っているかのようなトークを展開していた。
真野さんと桃子さんとの軽妙なやりとり。会場を笑いで包んだそのやりとりは息もぴったりと合っている。

この2人、相性がいいんだな。どういう関係なんだろ。
それは桃ヲタさん達も同じことを思ったようだ。おい彼女はどういう人だ?俺が知るわけないだろ!というヲタ同士のやりとりが聞こえてくる。
「姉妹校の生徒会長さんらしい」「おぉ、早いな!情報班乙!」

・・・・ヲタの情報収集能力って本当にすごいんだな。


真野さんは表情を引き締めるとピアノの前に座った。
そしてゆっくりと前奏を奏で始める。

♪言葉にしたらこわれそうで怖くて いつもふざけあうことしかできなかった

この歌詞、もちろん憶えてる。愛理ちゃんが落としていった歌詞カードの、あの曲だ。これが聴きたかったんだ。
想像していたような美しいメロディー、歌詞の意味も相まって、ハートに直接的に響いてくるそのメロディーに一気に引き込まれる。
それは、雅さんの気持ちが乗り移ったようなその歌声によるところも大きかったのかもしれない。

♪あの時 僕に少しだけ勇気があれば 運命は変わっていたのかな

真っ直ぐに前を見据えて歌いこむ雅さんのその歌声を聴きながら、僕は全身が震えるような高ぶりを感じていた。
こんなに感情を歌声で表現できるなんて。
この曲がきっとこのライブの核心部になるのだろう。そんな予感を抱かせるにふさわしい名曲だと思う。

曲は続いていく。

>“―――”

「えっ!!?」

桃ヲタさん達が絶句している。どうしたんだろう。

「ももちが歌詞飛ばし!?」「まさか、そんな・・・」

よく分からないけど、桃ヲタさん達の様子から察するに、ここは本来桃子さんのパートのようだ。
だが、桃子さんは口を閉ざしたまま、当然のように踊りだけに専念している。その姿に動揺は全く見られない。
そして愛理ちゃんも桃子さんのその行動が至極当然のことのように平然と踊っている。
ただ雅さんだけが少し動揺しているみたいだ。

僕には事情がよくつかめないが、この曲をよく知っているらしい桃ヲタさん達には何か思い当たることがあったようだ。

「いや、違う!飛ばしなんかじゃない!! 今ももちがアイコンタクトしてきた! この曲はみやに持たせるからって!!」

アイコンタクトってあんた・・・なんで桃子さんがおまえと目を合わせる必要があるんだよ。
第一いま桃子さんは全然こっちなんか見てなかっただろうが・・・
まあ、当の桃ヲタがそう言うのだからそうなんだろう。桃ヲタの中では。

でも、確かにいま桃子さんの表情は、客席に何か訴えかけるようなそんな表情に見えないこともないような気もする。
ひょっとして、桃ヲタの言ってること、それは全くの見当はずれの妄想というわけでもないのかもしれない。

ラストのここに来て、これは何か予期していなかったことが起きているのかも。緊張感が高まる。

「消失点、これ雅ちゃんのメイン曲だもんな。何かやるのか、ももち!!」

「おい!赤サイ持ってるか!」

突然、隣の桃ヲタが叫んだ。

「ソロコーナーに備えていつも3色常備してるからあるよ、20本ぐらいなら」
「俺も10本ぐらい持ってる」「俺も10本」「俺、5本」「俺もry」「俺ry」

曲中にも関わらず、何か打ち合わせをし始めた桃ヲタさん達。
次々と赤いサイリウムを取り出し始める。
用意周到。さすが歴戦のヲタさん達だ。伊達にリュックをパンパンにさせてるわけじゃないんだな。

「よし! それぐらいあれば、とりあえず立見席は埋められるな。やるぞ赤サイ祭り!!」
「「「「うおっしゃああああ!!」」」」

何か桃ヲタ会議してる。そんで異様に盛り上がってる。
桃ヲタのど真ん中にいる僕は、それゆえ当然この会議でもど真ん中で桃ヲタさん達にひとり囲まれているのだ。

事情がだんだん飲み込めてきた。

桃ヲタ曰く、
あのももちが歌詞を飛ばすことなんかありえない。
ももちの様子を察するに、何か特別の事情があるのだろう、“この曲はみやをフィーチャーするから”と言っているのが見て取れる。
だから、我々ヲタはももち達のその思いを全力でサポートする義務がある。そのために、大至急体制を整える必要がある。

つまり、そういうことのようだ。

雅さんのために、その思いをステージと共有しようというこの状況に僕もテンションが上がってくる。

そうこうしている間にも曲は進んでいく。

♪遥かに遠く続く明日のどこかで

「愛理ちゃんも歌わないじゃん。もうこれは絶対間違いない!」
「時間がない。急いで周りに配れ!」
「急げ!赤サイ祭りいくぞ!!」

僕の周り、緊張感が一気に高まった。
慌ただしく動き始めた桃ヲタさん達。目的達成のため、赤サイを手に四方八方に展開し始める。
ちょっとかっこいいな、キモヲタのくせに。

「お前、後ろ側配って来い。お前はそっち側行け!急げ!」
「余ったら貴賓席や一般席にも渡して来いよ。あとは・・」

みなまで言うな。

「こっち側、僕が配ります」
「よし、少年頼んだ。急げよ!」

周りのお客さんや生徒さんたちに赤いサイリウムを配って回る。
どのお客さんもすぐに意図を察してくれて、頷きながらサイリウムを折ってくれた。
素晴らしい雰囲気のお客さん達。
これはBuono!のメンバーがライブの時間を通して客席をそういう雰囲気にしてくれたからに他ならない。
このライブに参加できた喜びがこみあげてくる。

「急げ、急げ! 絶対2番に間に合わせるぞ!!」



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