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舞の様子がおかしい、と神妙な顔のなっきぃから打ち明けられたのは、ちっさーの誕生日の前日のことだった。

「どういうこと?」

事務所の近くのファミリーレストラン。
ドリンクバイキングコーナーから、2人分のウーロン茶を持ってきたなっきぃは、まじまじと私の顔を見る。


「・・・てかやじーは、感じなかったの?舞が挙動不審になってるって」

そう言われて、私は小首を傾げた。

小一時間程前まで、コンサートのリハーサルで、顔を合わせていた舞。
今日は調子がいいかも、なんていって、中盤の曲の間奏で披露するアクロバットを練習していたのが印象的だったけれど・・・。


「・・・ごめん、わかんない。舞、元気そうじゃなかった?」

素直に白状すると、なっきぃはタコさんみたいに口を尖らせて、くしゃっと顔をゆがめた。

「まー、やじーは3バカじゃないから、よくわからないか」

サンバ科?なんだろう、ダンスかな?


「今日さ、舞ったら、全然千聖に話しかけてないんだよね。それでいて、すっごい千聖のほうジーッとみてんの。ジーッと」

その様子を再現するように、向かいの席から、私に湿った視線を投げかけるなっきぃ。・・・怖い。いつも元気で、あまえんぼうな舞が、そんな表情をするなんて、とても信じられない。

「ケンカして、謝るタイミングがわかんないとか・・・。あ、でも今日はお嬢様のちっさーか。ケンカはないな、うん」

舞のことがわからないなら、ちっさー・・・。今日のちっさーはというと、愛理のメイン曲のユニゾン部分を2人で延々とハモッていたっけ。
お嬢様ちっさーだから、いつもより声がふわふわしてて、春のひだまりみたいにぽわんぽわんと・・・


「・・・あっ、わかった!」

突然、頭の中にピコーン!と豆電球が点いて、私は思わずなっきぃに向かって思いっきり挙手してしまった。


「な、なに、やじー」
「すごくない!?」
「いや、何がすごいのか言ってくれないと・・・」
「あ、そか」

はしゃいでしまったから、周りにいるお客さんの目が若干痛い。
私は姿勢を正すと、ポテトをつまんでるなっきぃをじっと見た。


「舞は、愛理とちっさーに嫉妬してるんだ!今日仲良くしてたから」
「・・・やじー。いや、みぃたん!!」

なっきぃはバシッと親指を立てた。満面の笑顔つきで。


「すごい!あのみぃたんが、人様のそんな繊細な感情を読み取るなんて」
「なっきぃ!私も嬉しいっ」


パチパチ、パチパチ


私たちのあまりのはしゃぎっぷりに、周りからついにまばらながら拍手が巻き起こってしまった。


「あはは、どーもー・・・」

改めて腰を下ろして、今度は声を顰める。


「でもね、やじー。今日のことだけじゃないんだ」
「ん?」
「なんかね、愛理ったら、昨日、千聖の誕生日の前祝いをやっちゃったんだって」
「へー!そか、明日お祝いできないから?愛理優しいね~」


私がそういうと、なぜかなっきぃは軽くため息をついて首を振った。


「やじーったら、肝心なとこはわかってないのね」
「え?え?何で?」


――だめだ、やっぱし乙女心(?)は難しい。


「舞はさー、とにかく千聖に関しては、誰にも負けたくないんだよね。
なっきぃだってその辺は結構気使ってるんだけどさ、愛理はマイペースだから、自分がやりたいようにやっちゃうっていうかぁ」
「んー・・・でも仲間っていうか、友達関係みたいなので勝ち負けって、なっきぃ考えた事ある?みんなで仲良くすればいいんじゃないかな」
「ちょっとー、頼むよやじー」


どうも、私の答えはとんちんかんなものらしく、なっきぃは不満顔だ。


「はっきり言って、舞の千聖への思いは、友情超えてるからねっ」
「そうなんだ・・・。友情の先には、何があるの、なっきぃ?」
「・・・哲学的ですね、やじさん。それは・・・愛じゃないかな」

愛、か。
でも私だってちっさーには、いや、ちっさーだけじゃなく、℃-uteのみんなには、友情だとか仲間やライバルと言った言葉では片付けられないような思いを抱いている。
一言にはならないような大好きっていう気持ち。そういうのを愛っていうのなら、私もちっさーを愛してるってことになるだろうし、もちろん舞も愛理もなっきぃもちっさーを愛してるだろう。
そして、ちっさーも私たちのことを愛してるって言ってくれるはず。みんながみんなを愛していて、なんていいグループ!


「℃-uteって、いいグループだよね!なっきぃ」
「・・・どうなったらそういう結論になるのか、まったくわかんないんですけど」


呆れ顔のなっきぃ。
今日は珍しく、的を射たような回答が出来たと思ったんだけどな・・・。
なかなか、天然リーダーのレッテルを剥がすのは難しい。


――♪♪♪

「おっ」

ふいに、テーブルに出しておいた私の携帯が音を奏でた。
見なくても、誰からの連絡なのかわかる。彼女自身が、私の携帯を勝手にいじくって、設定した専用着信音だから。

「ふふふ、噂の人物からだよ~」
なっきぃに向かって軽く携帯を振ると、画面に目を落とした。


“件名:ごめんね
本文:おねーちゃん、ごめんなさい。舞とチサトは旅に出ます。探さないでください”




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