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ストールを纏って、時々ほっぺにちゅーってしながら歩き続けて。
気が付くと私たちは、見覚えのある大きな岩場に来ていた。


「…先、進んでいい?」

ほんの少しの沈黙の後、耳元でそっと囁く。
もっと先に進んだら、海面に足がふれて、ワンピースを汚してしまうかもしれないから。

“あの場所”には行きたいけれど、千聖の嫌がることはしたくない。
今までの私だったら、強引に手を引っ張ったかもしれないけど、いつまでもそんな子供じゃない。
千聖の望むことをしたい。心からそう思う。だって、今日は・・・


「ええ。進みましょう、舞さん」

淡く青い布の中で、千聖がうなずいて笑う。


「いいの?」
「もちろん」
「わかった」

二人を覆っていたストールを、千聖の肩に掛けてあげて、私は早足で千聖より先に、岩場のすぐ下まで移動した。


「こっち」

手を伸ばすと、少しはにかんで、指を絡ませてくれる。
まるで彼氏にでもなったみたいだ。
千聖は結構、期待させて後で地獄に突き落とす、みたいなパターンが多いんだけど、そんなことは今はどうでもよかった。


千聖は私のわがままをきいて、ここに一緒に来てくれた。
つまり、私を選んでくれたってことなんだから。


「…足元、気を付けてね」


歩みを進めていくたびに、波が、サンダルの中に侵入してくる。

「千聖、大丈夫?砂入って気持ち悪くない?」

ママにも呆れられちゃうぐらいの、甘ったれなはずの私が、今は千聖を守りたくてたまらない気持ちになっている。
少し長めの、千聖のスカートの裾を片手でつまんで、そのまま先へ歩いていく。


「まあ、舞さんたら」
「波来たら、濡れちゃうから」


顔は見えないけど、ちっちゃい声で千聖がありがとうっていうのがわかった。
喜んでくれることもうれしいし、こういう紳士っぽい行動をしちゃう自分かっこいい、みたいなナルッぽい気持ちもある。

彼女を喜ばせたいって尽くしちゃう男子って、こういう気持ちなのかなってなんとなく思った。



「はー・・・着いた」


岩場に沿って、波打ち際を歩くこと10分。
私と千聖は、ぽっかり空いた洞窟の中に来ていた。


「ありがとう。舞さん」

千聖がずっとつなぎっぱなしだった手を離そうとするから、もう1回強く握った。

「こっち、来て。舞の横」

波が打ち寄せてこない、奥の方。椅子みたいになっている岩を見つけて、隣に千聖を座らせる。

「懐かしいね、ここ」
「そうね」
「疲れてない?服、汚れてない?」
「舞さんが千聖を守ってくれたから、大丈夫よ。
前に来たときは、千聖が舞さんを誘導したのだったわね。
でも今日は、舞さんが千聖を」
「ふふん、まあね」

ほんの少しの気づかいも、千聖は漏らさずキャッチしてくれる。
私はうれしくなって、千聖に飛びついた。

「きゃっ」

そのまま、唇同士をくっつける。


「…もう、だめって言ったじゃない」

その声は、少し笑っているみたいだった。

「もう暗いし、大丈夫でしょ。誰にも見えないよ。てか、こんなとこ人来ないから」


ほんの少し離した唇。
息が届く距離でそう告げると、もう一度キスをした。
何度もちゅっちゅっとついばむうちに、千聖の体から力が抜けて行って、私に身をゆだねてくれるのがわかった。


前にここでしたキスは、歯はぶつかって痛いし、全然ロマンチックじゃなかった。
少しは大人の関係ってやつになったのかな、と私はひそかにほくそ笑んだ。



「・・・ここ、波は来ないのかしら」

何度目かのキスの後、まったりと寄り添っていたら、千聖がつぶやいた。


「ほら、前の時は、深夜になって潮が満ちてしまったでしょう?今日も、あまり長居しないほうが…」
「大丈夫。ちゃんと調べてきたから。今日はあんまり波がこないみたい」
「でも、それにしても、大分時間が経ってしまったのではないかしら?そろそろ帰りの準備をしないと」
「もう、そういうのいいから」


ラッコ抱っこした千聖の、むきだしのうなじにかぷっと歯を立てる。


「ひゃん!舞さん、だめよ、そういうことをしては」
「ええじゃないかええじゃないかぁ」

悶える千聖がかわいくてえっちくて、ちょっかいを出すのをやめられない。
――なんか、ただイチャイチャするのってすっごい楽しい。

ずっと、エッチなことしたいとか、千聖を支配したいとか、そんなんばっかり考えてたけど、こういう無心のスキンシップってすごくいい。
穏やかな幸せってこういうことを言うんだろうな。私はうれしい気持ちになった。



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