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車で家に帰る途中、いつもみたいにお姉ちゃんのわき腹をつっついてみた。
ク゛フク゛フ笑いながら反撃してくると思ったけれど、「きゃんっ」ってリップみたいな声を出してのけぞった。
バカじゃないの。バカじゃないの。バカじゃないの。
心配したのに。ふざけつづけるお姉ちゃんに私は自分の気持ちを馬鹿にされてしまったみたいで、悔しかった。
「明日菜ったら、どうしたの?」
甘ったるい舌たらずな喋り方がむかつく。思わず髪に触れた手を振り払ってしまった。
「もう、その寒いキャラやめないと口きいてあげないから。絶交だよ。」
姉妹で絶交って。でもお姉ちゃんには効果があったみたいで、泣きそうな顔してオロオロしている。
「明日菜。何か気に障ることをしたのならごめんなさい。でも、私思い当たることがなくて・・・・」
「何っゞ∫Σ&#!!!!!」

今度こそ掴みかかろうとしたら、またママが止めに入った。
「明日菜、お姉ちゃん疲れてるの。あんまりちょっかい出さないで。」

ああもう、本当嫌だ。疲れてるとか関係ない。お姉ちゃんがイタズラ好きなのは知ってるけど、今そんな空気じゃないって言ってるだけなのに。
「明日菜」
「もう話しかけないで。」
私はお姉ちゃんに背中を向けて、フテ寝することにした。


“家に帰ったら、数学の予習をしないと”
“ええ、お母様のおっしゃる通りね”
“うふふ”

断片的に耳に入ってくる言葉が勘に触る。ママもママだと思う。いつもお姉ちゃんばかり甘やかすんだから。ずるい。

そもそも私達姉妹がハロプロのお仕事を始めたのだって、私が大好きなモーニング娘。になりたいと言ったのが始まりだったはずだ。
なのにママは、キッズオーディションを受けるのに年齢が足りてなかった私には我慢しなさいと言って、お姉ちゃんだけ受けさせた。
私のことを待って、また別のオーディションを一緒に受けるんでもよかったはずなのに。
あの時はお姉ちゃんが「千聖どうしてもこれ受けたい!なんでも言うこと聞くからお願い!」
とママに食い下がったんだっけ。
お姉ちゃんは基本的に優しいけれど、どうしてもやると決めたことに関しては絶対に譲ってくれない。
私の一番の夢を私より先に掴んで、お姉ちゃんはキッズになってしまった。
結局私もその後エッグになれたから、もうそのことは恨んでないし今更うじうじ言うつもりはない。
でも今日みたいなことがあると、やっぱり自分ばかり損しているような気持ちになる。
ケガがたいしたことなくて、ふざけているんだったら早く怒ればいいのに。
こんなキャラで家に帰ったら、弟だって心配してしまうだろう。






「お帰りー!ちさと姉ちゃんケガ大丈夫?」
家に着いたら、よっぽど心配していたのか弟が玄関の前に立っていた。
「ありがとう。たいしたことなかったのよ。ずっと待っててくれたのね。」
お姉ちゃんはとても優しい顔で微笑んで、弟をやんわりと抱きしめた。
「え」
普段はやんちゃな弟が、お姉ちゃんの腕の中で目をパチクリさせておとなしくしている。
パパもママも、「千聖は優しいお姉ちゃんだね」とか言っている。
私はこのとき初めて、怒りではなく恐怖を覚えた。

・・・・・もしかして、私がおかしいの?もともとお姉ちゃんはこういうキャラで、私が今日突然そのことがわからなくなってしまった?

「遅くなってしまったわね。お布団しいて、寝ましょう。」
お姉ちゃんの手が私の背中に添えられる。拒めない。
妙にあたたかくて、優しい手がとても重く感じた。





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