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先の番外編でも、お嬢様にここまで接近したら、舞様の逆鱗に触れて○○されそうなものなのに・・・
そんな感じで舞様には割と自由にさせていただいているみたいに思えるのですが、それは尻尾をつかむためにあえて泳がされているではという気も確かにしますね

それとも、ひょっとしたら舞様は気付かれているのかもしれません、この少年は特に害の無い人間だということに

そうだとしたら、それは何故なのか?

これはその伏線のお話です
本編と先の番外編の間、少年が高校2年生になって少し経った頃のこと




電車を降りてホームを歩いていると、出口に向かう人の波の中に彼女の後ろ姿を見かけた。
人混みの中から頭ひとつ出ているその後ろ姿。

「熊井ちゃん」

駆け寄って声をかける。振り向いた彼女。

「なーんだ、えーじか。」

熊井ちゃんは僕を見て名前で呼んでくれた。

「学校帰り? 土曜なのに?」
「うん。補習に出てたんで」
「補習って、テストの成績でも悪かったの?」
「違うよ。うちの学校は希望者には土曜補習やってんの」
「へー、さすが進学高だねー」
「僕もそろそろ頑張らないとちょっとヤバいかなと思って」
「うん、もうちょっと頑張った方がいいだろうね」

頑張った方がいいって、何で知ってるんだろう。
熊井ちゃんにもっと勉強しろって言われてしまった。

そういえば、熊井ちゃん、学業の方は最近はどうなのだろう。
それを聞いてみようと思ったが、答えが怖い。薮をつついて蛇が出てきたら大変だ。

だから取り敢えず当たり障りの無いことを聞いてみた。

「熊井ちゃんはどこ行ってきたの?」
「いや、それは知らない方がいい。関係ない人を巻き込みたくないんでね」

真顔になってちょっと怖い表情で答える熊井ちゃん。
あーなるほど、サスペンス映画でも見てきたんだな。

突然、熊井ちゃんに、じっと見つめられる。

な、何だよぅ。
真顔で見下ろされるとちょっと怖い。

熊井ちゃんは僕の制服を見て、こう言った。

「制服の第一ボタンはちゃんと閉めなよ。だらしない」

えー?
学ランのここは開けるでしょ。
ウチの高校はどう着ようとそれほどうるさく言われないんだし。別にいいじゃん。

第一、あの熊井ちゃんに制服の着こなしを注意されるとか、ちょっと納得いかないんだけど。

「ワイルドな僕には、きっちりしてるより、この方が似合ってるでしょ」
「なにそれ?ワイルドって誰が?」

自分の顔を指差す。
鼻で笑う熊井ちゃん。

「ちょっと悪そうで本気出せば強そうな感じに見えない? 僕も男だからさ」
「全く見えないけど。あいかわらず硬派を気取ってるの?」

熊井ちゃんのマジレス攻撃にも負けず、キリッ)顔をして頷いてみせる。

気取ってる、じゃなくて本当に僕は硬派なんだよ。分かんないかなー。
まぁ、女にはそうそうわかるまい、この男の美学。

そう。男と生まれた以上、例えば行く手に二つの道があったならより困難な方を選ぶのが男の生き様。
それが演歌、日本の心。

「止めないでくれ友理奈。これは男を磨くために僕があえて選んだ道なんだ」
「止めたりなんかしないよ。でも、困難だからっていう理由だけで選ぶのは、それってあまり合理的な考え方じゃないんじゃない?」
「・・・・・・」

うーん・・・・
やっぱり相手が熊井ちゃんだと、妄想もいまいち盛り上がってこないなあ。

いつもの妄想モードは不発に終わってしまった。
どうも熊井ちゃんといると調子が狂う。
なんだか物足りない気持ちが僕を支配するが、意識を目の前の現実に戻すと熊井ちゃんのマジレスはまだ続いていた。

「でもさー、硬派を気取ってる割には軽いよねー、言動が」

鋭すぎる。

僕の悩みはまさにそこなんです。

だが、やっぱりこればっかりは齢を重ねないと。
今の僕はまだまだ人生の修行中。
いろいろな経験を糧にしてこれから成長していくのだ(キリッ

そしていつか立派な大人になったら、成功者の象徴たるベンツその助手席に美人の部下を従えて、夜の高速道路を飛ばすのだ。
僕の体験した昔話を彼女にひとつひとつ聞かせてあげながら。
そして、僕と彼女は(ry

・・・・また妄想に入ってしまった。

一応断っておきますけど、いつもこんな妄想ばかりしているわけじゃないですからね。
これは、さっきの妄想が相手の選択に失敗して不完全燃焼だったからです。

って、今の妄想、なんか大人の女性が登場したぞ。何なんだろう? ってか誰?
自分でもよく分からない妄想をしてしまった。
でも、オトナの女性(しかも美人!)で妄想なんてちょっとドキドキしちゃう・・・・とかいって。


ひょっとして、僕の言動に重みが出てこないのはこの辺りにあるのかも知れないな・・・

さすが熊井ちゃん。

彼女の本質を見抜く力、これは天性の才能だと思う。
こうやって、今日もまた熊井ちゃんに軽く敗北感を覚えさせられるのだった。



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