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「ま、舞?どうしたというの、そんな格好をして」
「ふふん、シュパルタ鬼コーチの萩原でしゅ」

履きなれないピンヒールで若干よろよろしながらも、舞ちゃんは℃Sの表情のまま、私とお嬢様を交互に見比べた。

「これから2人は、舞が考えた献立に基づいた食事をしてもらいましゅ」
「えっ・・・」

めぐぅの方をチラリと見ると、腕組みをしてうんうんと深くうなずいている。

「ま、作るのは萩原さんじゃないですけど。明晰な頭脳で、カロリー計算や栄養のバランスを考えてくれたんですよ」
「そういうこと。要するに、摂取カロリーと運動のバランスが取れていればいいんでしゅ。ダイエットなんて簡単簡単。調理は舞の家来に任せるので大丈夫」
「家来って」

胸を張る舞ちゃんの後ろで、胃を抑えながら食材を運んでいる若い執事さんが見えた。・・・ご愁傷様です。

「で、運動は私だよ!せっかく体育学の勉強してるんだから、誰かの役に立ちたくて。
よかった、一緒に頑張ろうね、えり、お嬢様!」

にこにこしながらお嬢様と私の肩をポンポンと叩く舞美。
ピンクのジャージも相俟って、小学校の人気者の体育の先生みたいだ。
優しく楽しく、効果的な運動をレクチャーしてもらえそう。・・・だと、何にも知らなければ思うだろう。だが、中身は全力体育会系女子。どんなムチャクチャなダイエットメニューを与えられるかわかったもんじゃない。
舞美と一緒にスポーツを楽しんでるお嬢様はともかく、ひ弱な現代っこの私なんか、潰される。心身ともに。確実に。

「大丈夫だよ、えりこちゃん。なっきぃもサポートするケロ」
「う、うん・・・」
「すごい顔色。別に、今から地獄に送り込まれるわけじゃないんだし」

――そいつはどうかな。


気づかいの人、なっきぃの笑顔も今は心苦しい。


ファッションショーに向けて、やせなきゃならないのは事実。正論。ていうか、むしろありがたいお申し出だ。
だけど、とにかく私はヘタレだし、頑丈にできていない。そんでもって、出来る限り楽したいのだ。
それでいて、みんなの気づかいを無碍にはしたくないし、でもでもだけど・・・。
そういう優柔不断な性分だから、何も始まっていないというのに、既に一人うつ状態。
キーキー怒って感情を爆発させてるお嬢様のほうが健全だ。


「・・・ねー、だけど本当にそんなんする必要ある?」

すると、ずっと黙って私たちの話を聞いていた栞菜が、頬杖をついたまま口を開いた。
おお、可愛い妹よ!姉(ウチ)のピンチに、動いてくれる気になったのね、嬉しい!

「だよね!ウチあんまり過酷なプレイは」
「あ、じゃなくて。お姉ちゃんはモデルさんやるんだから痩せなはれ。私が言いたいのは、お嬢様のほうだかんな」

ションナ!
栞菜の目つきが、一般美少女女子高生のそれから、℃変態の色欲に彩られたそれに変わっていく。・・・お姉ちゃんは悲しいよ、栞菜!いろんな意味で!


「いいですか皆さん。お嬢様には、5段階の形態があるかんな」

研究発表でもするかのように、栞菜は起立して熱弁を始める。

「ガリ聖、痩せ聖、千聖、ぷに聖、ぽにゃ聖。いまはさしずめ、ぷに聖ってとこかな」
「まあ、何を言っているの栞菜!」
「昨日ベッドの中でたっぷり抱いたあの感触だと、そうだなぁ、4●.2kgってとこかな。どう?」
「フガフガフガフガ」

そのリアクションだと、大正解だったらしい。小数点以下まで・・・。時々、栞菜を遠くに感じるよ、ウチ。
「千聖の上がぷに聖なら、やっぱり痩せたほうがいいってことなんじゃないの?」

めぐぅの指摘に、わかってないとばかりに首を横に振る栞菜。

「女の子ってぇのは、実際ちょっとぷくぷくしてた方が可愛いかんな。痩せてる=モテると思ってるのは女の子だけだかんな。骨ばっているボデーなんて、オレらに言わせりゃ抱き心地が悪くて全然ダメだね(MEN’S kan-na調べ)」
「モテるとか、今全然関係ないでしゅ!大体なんだよMEN’S kan-naって。どうせエロ本だろ!すっげえマニアックな」
「はぁ!?メンカンはオシャレなメンズのイケてるバイブルだかんな!」

――もう、わけがわからないよ。

架空の雑誌のことで言い争いを始めている優等生2人を尻目に、舞美とお嬢様はすでにスポーツ前の準備運動を始めていた。

「お嬢様、とりあえずランニング行きましょう!」
「ええ、そうね。舞美さん、宜しくお願いします」
「えぇ~・・・行っちゃうの?お嬢様ったら。ダイエットしたくないんじゃなかったの?」

口を尖らせる私に、お嬢様は眉を下げてごめんなさいって言う。

「・・・だって痩せないと、栞菜のスキンシップが、より過激化してしまいそうでしょう?」

貞操の危機かもしれないわ、なんて真顔で言うお嬢様に、またまた御冗談をと言い切れないところが恐ろしい。

「お嬢様がやる気を出してくれて、メイドとしても嬉しいです。有原さんを喜ばせては危険ですからね。
何でも協力しますから、何なりとお申し付けくださいね。」

すました顔で言うめぐぅを見て、・・・もしかしたら、栞菜、やる気を起こさせるためにわざと?なんて思ったり。


「とにかく、ちしゃとは舞のなんだから!ちしゃとの“ピー”が“ピー”で」
「うるさいうるさい!お嬢様の“ピー”は私の“ピー”と“ピー”で」
・・・いや、そうじゃなさそうだな。
舞先輩LOVEとか、栞菜先輩キレイとか言ってる後輩たちが見たら泣いちゃうだろうその光景に、私はただただ苦笑するしかなかった。



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