※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。



♪あ・い・し・て・るーーーっ!!

Kiss!Kiss!Kiss!(という曲だと桃ヲタが言ってた)のラストの会場全員での大合唱。
僕らもこれがラストのシャウトになることが分かっていたから、腕を精一杯上げて力の限りの声を出した。
あのときの会場の熱気・雰囲気、その瞬間を共有できたことが幸せで。最高の瞬間だった。

アンコールに入ってからの怒涛の盛り上がり。
思い出してみても、それは凄まじいものだった。
予想外のことが次々と起こり、息をつく暇も無いぐらいステージに吸い込まれるような感覚。
全てが終わったとき、体中の力を全て使い果たしていた。もうクタクタだった。
ここまで興奮したのはいつ以来だろう。そしてその中で完全燃焼できたことで感じるこの充実感。
ついにライブは終わってしまった。燃え尽きたよ、真っ白に。


「お疲れさん!!」

ずっと隣りだった桃ヲタさんから握手を求められた。大学生ぐらいの人だろうか。僕も興奮状態だったので、思わず力強く握手をかえしてしまった。なんだろうこの戦友感覚。
アイドルコンサートのこういうノリも悪くないなあ。やってみたら意外とヲタ活動というのも面白いのかも。意外と馴染める世界なのかも知れないなあ、なんて思った。

Buono!ヲタの人達とはライブを通してこうやって知り合いになった。
だから僕のヲタ友は何故か桃ヲタの人ばかりになってしまったのです。
でも、桃ヲタさん達、いろいろあったけど、結構いいやつらだったな。

またどこかでライブがあったらよろしく、と桃ヲタさんに言われた。
えっ、またライブとかやることあるんですか?

「それはわからない・・・ももちも高校卒業だからなぁ。でも、またいつかきっと3人でライブやってくれるさ。お願いしますチンプイさん・・・・」
(遠い目をしながら何やらブツブツとつぶやいている)

最後の方よく聞き取れなかったけど、Buono!の情報が欲しいならりーちゃんのところに行くといいと言われた。

「りーちゃんって誰ですか?」
「何だりーちゃんも知らないのか・・・みやヲタのおまいつだよ。最強筆頭ヲタとして名を馳せる有名な子だから見ればすぐに分かる」

すみません、みやヲタのおまいつって何ですか? 専門用語の羅列はちょっと意味がわからないんですけど。
翻訳すると、いつも最前列にいる彼女は自他共に認めるBuono!イチの熱狂的ファンで、彼女の情報の早さと正確さには定評があるらしい。
頼めば私設でやっているメールマガジンを配信してくれるそうだ。

「今日は一段と強烈だったからな。彼女に会ってもそのオーラに飲まれないといいけどなw  って・・・・」

突然桃ヲタさん達が僕を見て固まった。

??

いや違う。彼らの視線は僕ではなく、僕の後ろ側に向けられているんだ。
それにつられて振り返って見ると、そこには立っていたのは一人の少女だった。

「「「「・・・・・りーちゃん!!」」」」

桃ヲタさん達はそう言って固まってしまった。

この子がりーちゃん・・・

最強筆頭ヲタっていうからどんな凄いのが出てくるのかと思ったら、とてもかわいらしい女の子じゃないか。
が、しかし、その格好は最強筆頭ヲタの名前に恥じないものだったのだ。
一目で熱心な雅さんのファン(というよりモロにキモヲタ)ということが分かるそのハッピ。
桃ヲタの着ているピンク色の各種Tシャツも大概だと思うけど、このハッピはヲタグッズとしての衝撃度はそれ以上だ。

すげえ・・・ ヲタオーラがひときわ輝いている。
しかも、あの調子こきまくってる桃ヲタどもをこんなに緊張させるなんて。

あれ? この子どこかで見たことあるな、と思ったが、校門のところでビラを配っていたあの子じゃないか。
あの子が最強筆頭ヲタだったのか。なるほど、布教活動といいこの格好といい最強筆頭ヲタと言うだけのことはある。


やってきた彼女は口をへの字に結んでいた。不機嫌そうなその表情。桃ヲタはビビりまくっている。
最強筆頭ヲタの方が口を開いた。ヲタがヲタに何か言うみたいだぞ。

「あなたたちでしょ。赤サイ配ったの」

そう問いかけられた桃ヲタどもは、緊張の極致なのかかろうじて頷くのがやっとの有様。
そんな桃ヲタを眺め回していた彼女。

「りぃに断りも無くあんなことして・・・・」

桃ヲタ絶体絶命、ご愁傷様です。
そのとき、彼女の口元がふっと緩んだ。
え? 彼女、今ちょっと笑った?
そんなりーちゃんから続けて出てきた言葉、それは・・・・

「でも、雅先輩のためだもんね。お礼を言います。ありがとう」

桃ヲタどもは緊張のあまり言葉が出てこなかったようだ。
一瞬固まった彼らだったが、褒められたんだと分かると、間髪入れずガッツポーズと共に飛び上がって歓声を上げ始めた。

(ウオォォーーーーー!!!)

興奮するのは分かるが、だからといって僕をどついてくるのはやめろ。


この子がりーちゃんか。
ちょうどいいや、この場で彼女にお願いごとをしよう、と思ったら興奮した桃ヲタどもに抱きつかれた。

「隊長に褒められちゃったよ!どうよ!これ!!」

背中をバシバシ叩かれる。痛いっつうの。
どうよ!って言われても・・・ 良かったねオメデトウ(棒読み)
そんなことより、僕は彼女にお願いがあるんだから早く放してください。

うざい桃ヲタどもを振り払って、行ってしまったりーちゃんを追いかける。

群集の中でも彼女の姿を決して見失うことはなかった。ひときわ目立つその姿。
背中の、大きくプリントされた雅さんの顔がこっちを見ている。ホントよく着れるなこんなハッピ・・・
その後ろ姿に声をかける。

「あのー、すみません」

緊張した。だって何か大物ヲタオーラが漂ってる人に声をかけるわけで。

振り向いた彼女。目が合った瞬間、そのあまりの可愛さにあらためて驚く。
現実感の感じられないような、そのお人形さんみたいな容姿。
こんな少女漫画に出てくるような美少女、実在するんだな。さっすが女子校だ。

彼女と向き合うと、つい我を忘れて見とれてしまう。
あどけない表情が子供っぽくも見えるのに、醸し出している雰囲気は逆に大人っぽく見える。
何か不思議な雰囲気を持っている女の子。ちょっと表現するのが難しいけど、まるで魔女のような?
こんな女の子、僕は今まで見たことが無い。

感動的なライブの直後だからだろう、彼女の目は潤んでいるように見えた。頬もほんのりと赤みがかってて。
そのせいもあってか、彼女の表情はとても色っぽく見えて、僕はちょっとというか思いっきりドキドキしてしまった。

めちゃめちゃかわいいな、この子!!
もし、僕に好きな子がいなかったら一目惚れしていたかもしれない。


「僕、このたびBuono!のファンになったんですけど、メールマガジンとか申し込めますか?」
「新参さん? Buono!のファンになってくれたんなら、もちろん大歓迎だよ! 夏焼先輩カッコ良かったでしょ!!」
「え、えぇ。すごくカッコ良かったです」

さりげなく緑サイは後ろに隠して、うなずいた。
最強筆頭ヲタさんは新参の僕にも気さくに接してくれた。
さすが隊長と呼ばれてる人だ。やっぱり人に上に立つ人はこうでないと。
梨沙子ちゃん(というそうです)に私設のBuono!メルマガをお願いしてたら、不意にフガフガした声が聞こえてきた。

「すぎゃさん!」

千聖お嬢様ではないですか!!
お嬢様、少し目が赤くなってるような・・・お嬢様も泣くほど感動したのかな・・・
わかりますよ、お嬢様! 素晴らしいステージでしたからね。
先ほどのお嬢様のギターも堪能させていただきました。そして歌声も。
大勢での合唱でしたけど、お嬢様のお声は僕にはすぐにわかりましたよ。

お嬢様が梨沙子ちゃんに話しかける。

「どちらに行かれてたの? 急にいなくなってしまうから、め・村上さんも心配していたわ」
「メイドさんが? なんで?」
「すぎゃさんともっとお話しがしたいんですって。雅さんもお待ちになってるのよ。ぜひ語り合って頂きたいわウフフフ」

お知り合いなのか。お嬢様はその場にいた僕にも気がつかれた。

「まあ、ももちゃんさん!」

ももちゃんさんって・・・・ 本当に何ですかそれ?・・・
お嬢様は僕が後ろ手に持っていた緑のサイリウムに気がつかれた。

「愛理を応援していただいたのね」
「はい!最高のライブでした!本当に感動しましたよ!!」
「そう言って頂けたらBuono!の皆さんも喜ぶわ」
「お嬢様のギターも拝見しました。堂々とされてましたね。あとラストの大合唱、盛り上がりましたよね!」
「お恥ずかしいわ、まだ初心者なので。でも一緒にステージに出られるなんてとても嬉しくて」
「それまでのステージも御覧になっていらっしゃったんですか?」
「えぇ、ずっと見させていただきました。途中で舞に邪魔されたりもしましたけれどウフフフ」

お嬢様のお話に舞ちゃんが出てきた!
それを聞いたとき僕の舞ちゃんセンサーも激しく反応しはじめた。たぶん、今このすぐ近くに舞ちゃんがいる。
ってことは、この物語的に、このあと何か奇跡の出来事が起こる予感がする!

その期待感もあって、お嬢様のお話の続きに心をときめかせていたとき、さっきの桃ヲタ軍団が通りがかった。
そして、僕にこう言ったんだ。

「おっ、少年! まだいたのか。よし、これも何かの縁だ。少年も反省会行くぞ!!」

え、何だって? なんだ反省会って?
せっかくお嬢様とお話しているのに余計な口を挟みやがって・・・ 
何が「これも何かの縁だ(キリッ)」だよ。

あのー、、僕は桃ヲタじゃないんですけど、そこんとこ分かってますかね・・・


「え!? いま僕はこの方とお話をしt」
「いいから、早く来い!!」「さあ行くぜー!!」「楽しかったっすねー!!」「Buono!最高!ももち最高!!」「あー、早くビール飲んでヲタトークしてえぇぇ!!」「「「「りーちゃん乙!またねw」」」」

興奮してて人の言うことを全く聞いていない桃ヲタども。駄目だこいつら・・・
せっかくお嬢様とお話をしていたというのに。ふざけんな!
この男子目線編は僕と学園の生徒さん達との物語なのに、この展開はおかしいでしょ常識的に考えて。


学園祭最終日、このあと舞ちゃんに会える予感が凄くしていたのに。
それなのに、ヲタどもと一緒に学園を後にすることになるとは。
学園祭のあいだ何回もおいしい思いを味わってきたが、最後の最後でこんな仕打ちが待っていたのか。

お嬢様は聖母のような慈愛に満ちた柔らかい微笑みで、拉致される僕にひらひらと手を振ってくれた。

さようなら、お嬢様。
何が悲しくて、お嬢様とのお話を中断させられてヲタ飲みに行かなければならないんだろう・・・
意気揚々と歩いていく桃ヲタ軍団に囲まれて、正門に向かって歩く。学園の生徒さん達からは好奇の視線を受けつつ。
この僕の沈痛な心情をどうぞ察して下さいますように。



TOP