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「千聖。」
仕事で事務所に向かう途中、華奢なミュールでひょこひょこ歩く小さな背中に声をかけた。

「あら愛理。ごきげんよう。」
わざわざ全身で振り返って、千聖がにっこり笑いかけてきた。
可愛いなあ。つられて笑顔になる。

「暑いわね。」

青いキャミワンピに水色のストール、手にはレースの日傘という完璧なお嬢様ファッションの千聖に、道行く人がびっくりして道を空けてるのが面白い。
実はこうやって2人きりになるのは、あの日 ―2人でエッチなことをやった時以来だった。
あの後も千聖は普通に接してくれたんだけど(それはそれでどうかと思う・・・)、私が変に意識してしまって、誰かを挟んで会話するのが習慣になっていた。
このままじゃ良くないと思って、ずっと修復のチャンスを狙っていたけれど、いざこうやって2人になるとどうしたらいいのかわからなかった。

「本当、暑いね。もう蝉も鳴いてるよ。」
「ええ、そうね。」
「・・・・」

お嬢様の千聖は、あんまり自分から積極的には喋らない。
私もガーッといくタイプではないから普段はこれでいいんだけれど、いかんせん、こういう場合の話の膨らませ方がわからない。

うーん。
困った。

もうすぐ事務所に着いてしまう。できれば2人でいる間に、もう少し盛り上がっておきたいんだけどな。

「あ・・・そうだわ、愛理。愛理のそのネックレス」
「え?」

珍しく千聖が話を振ってきた。

「それね、ずっと可愛いと思っていて。」
「えー?本当?嬉しいなあ~」

最近私がつけているのは、栞菜と買い物に行った時に見つけた華奢なデザインのクロスペンダントだ。
とても小さくて華奢なデザインだけど、凝った作りになっているからかなりのお気に入りだった。

「ええ。とても素敵。愛理によく似合ってるわ。小ぶりで、控えめなのにキラキラしていて」
「ちょ、ちょっとそんなに褒めるなよぅ」
恥ずかしくなって、千聖の軽く肩を小突いた。

千聖は本当によく人を褒める。
これはお嬢様になる前もそうだったけど、とても自然に、心のかゆいところをひっかいてくれるような不思議な力があった。
きっといっぱい家族で褒めたり褒められたりしながら生活してるんだろうな。千聖のお家って楽しそう。

「それでね、愛理。私、ほとんどアクセサリーを持ってなくて。もしよかったら、お買い物付き合ってもらえないかしら。」

嘘みたい。
千聖から誘ってくれるとは。

「私でいいの?」
「どうして?私、愛理のお洋服やアクセサリーのセンスが一番好き。」
「いやー照れるってば。ケッケッケ」


そうこうしているうちに事務所についてしまったから、仕事が終わってからこの話の続きをしようということになった。
楽しみだなあ。私はかっぱ踊りをこらえながら、満面の笑顔で楽屋に入った。




****************



「・・・聞いた?」

「うん。」

「お嬢様たち、お買い物だって。」

「・・・・ていうか、千聖私のセンスが一番いいって言ってたのに。あーのお調子もの」

「いや、それ私にも言ってた。ちっさーめ。そういうとこは前と変わってないな。」

「どうする?」

「どうするって、言うまでもなくない?」

「そだね。」

「やっばいワクワクする。震えがとまらん・・・とか言ってw」

「こっそりだからね、気づかれないように、後ろからそーっと。」

「ふっふっふ」

「キュッフッフ」



こうして、私と舞美ちゃんは即席お嬢様護衛隊(建前)を結成したのだった。




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