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「・・・おかしい」

地獄のダイエット開始から数日後、夕食の席で、舞ちゃんは向かいに座るお嬢様をジッと見つめ、つぶやいた。
お嬢様の目のまえには、蒸した野菜にポン酢と大根おろしを添えた超超超ヘルシーディナー(舞様監修)。
隣の栞菜がハンバーグをパクつくのを横目で睨んでいたお嬢様は、舞ちゃんの声に反応し、視線を戻した。


「なぁに?何がおかしいのかしら」
「・・・軍曹、お願いしましゅ」
「へーい」

お嬢様のお声は無視し、言葉少なにやりとりするめぐぅと舞ちゃん。

「きゃああ!?」
「こら、暴れるな!」

めぐぅは初日同様、お嬢様の後ろに回ったかと思うと、おもむろにその小さな体を抱き上げた。


「離しなさい!め・・・村上さん!命令よ!」

最近はもはや何の権限もなくなったお嬢様の「命令」は当然のごとく流され、またも高い高い状態に処されてしまうお嬢様。


「あんまり乱暴なことしちゃダメケロ、舞ちゃん!(キリッ)」
「どうでしゅか、軍曹」

・・・ええ、もちろん私もスルーされまくりですが何か?べ、別に泣いてなんかいないケロ!


「・・・変化なしですね、萩原さん」
「ふーん・・・」


2人の℃Sの眼光が、お嬢様をギラリと捉える。

「ちしゃと、鬼軍曹の見立てだと、ダイエット前と体重がまったく変わっていないみたいでしゅけど」
「な、なにを言ってるの?千聖にはなんのことだか」
「あ、それは違うよめぐぅに舞ちゃん。ちゃんと微妙に痩せてはいるよ。昨日たっぷり触った感じだと・・・まあ、4●.6㌔ってとこだかんな。」
「そんなの誤差の範囲でしゅ。ちしゃと、どういうことでしゅか」
「フガフガフガフガ」

――栞ちゃんよ、何なのその能力は。当然のように受け入れる舞ちゃんもどうかしてる。
今朝学校で梨沙子ちゃんが「舞ちゃんと有原さんって岡井さ・・ううん、やっぱなんでもないです」とか言いながら、失笑して去っていったことを思い出す。ああ、2人の残念な性癖が学園中に拡散されていく・・・

「あの食事内容で、痩せないなんておかしい。
寒天にお豆腐、納豆、野菜、こんにゃく。むしろ太る要素を教えて欲しいぐらいでしゅ」
「そ、それはだからえっとあの・・・ぎゃ、逆の意味で偏った食生活が、千聖の体を蝕んでしまったというか」
「はあ?何言ってんの?だったらこれはどう説明するわけ?」

舞ちゃんがビシッと指さすその先にいたのは、エキゾチックな美貌の持ち主・我らが寮長。


「ん?呼んだかな?」

お嬢様と同じく、夕食のメニューは蒸し野菜オンリー。
それを、まるで菩薩のような微笑を浮かべて食しているえりかちゃん。
ダイエットには全然乗り気じゃなかったはずなのに・・・もはやあきらめの境地なのか、ただただ淡々と、お箸を動かして食物を口に運んでいる。


「ほら、えりかちゃんはあんなに痩せたっていうのに。同じメニューのちしゃとがそのままってどういうこと?」


舞ちゃんの指摘どおり、過酷な食事制限を我慢強くこなしていたえりかちゃんは、もとどおりのスレンダーな体を取り戻していた。

まあ、解脱したような顔で「チョコ・・・」「ケーキ・・・」と虚ろにつぶやくのは気がかりだけれど。


「き、きっと、えりかさんと千聖では代謝が違うのよ。それに体格ももともと違っているし」
「・・・・・あ、そういえばお嬢様、今日は何味を食べたんですかー?」

フガフガと言い訳を続けるお嬢様に、いきなり舞美ちゃんがにこにこと話しかけた。

「あ、あら・・・舞美さん、一体なんのお話を・・・」
「ほら、最近放課後よく大学の学食にいらっしゃるじゃないですか。もぉ軍団の子たちと一緒に」
「が・く・しょ・く?」
「ああー、舞美ちゃん、舞美ちゃん!」


愛理の半笑いのフォローもむなしく、舞ちゃんの目がキラリと光る。・・・ごめん、お嬢様。擁護してさしあげたいのはやまやまですが、中島の敵う相手では・・・

一気に空気が張り詰める食堂で、舞美ちゃんはいつもの調子で明るく喋り続ける。

「ほら、今ラーメンフェアやってるでしょ?お嬢様、いっつも梨沙子ちゃん熊井ちゃんとラーメン3種」
「ちーしゃーとー!!!!!」


舞火山、大噴火。


あ、でも暴力はダメ。とめぐぅがお嬢様の前に立ちはだかってしまったから、舞ちゃんは顔を真っ赤にしたまま、乱暴にドスンと椅子に座りなおした。
そのまま、横の私の脇腹をつねる。


「ま、舞ちゃん痛いケロ!痛いケロ!」
「ケッ。摘む肉がないでしゅ。身のしまった魚介め。出荷すんぞ」

嗚呼、ひどいとばっちりだケロ!でもこのぞんざいな扱いに、悦びを感じてしまうもう一人の私がいるのも事実で・・・。“そういうこと”にはやたら反応が早い栞ちゃんが、ニヤッと笑いかけてくる。


「・・・ちしゃと」

舞ちゃんは珍しくちょっと低い声を出した。
さすがのお嬢様も、姿勢を正して向き直る。

怒鳴るのかな、なんて思ったら、舞ちゃんは1つ大きなため息をついてうつむいた。


「・・・舞?」

「ちしゃと、ひどいでしゅ・・・」


ひっく。

静かな部屋に、舞ちゃんがしゃくりあげる音。

「舞ちゃ・・・」

横から見てたら、舞ちゃんの膝に雫がぽつりと落ちるのがわかった。


「え・・・ええっ!?」


ロリ舞(選択小説を参照ケロ!)ならともかく、この、覇王様が。涙を?


「舞がこんなに一生懸命、やってるのに・・・」
「ま、舞?まあ・・・そんな、泣かないでちょうだい、舞ったら」

お嬢様は急にオロオロし出して、私を押しのけるように舞ちゃんの隣へ座った。


「・・・これからちゃんと、ダイエットやる?」

お嬢様の指を指でもてあそびながら、ちょっと甘えた声を出す舞ちゃん。


「お嬢様!舞ちゃんの涙を無駄にしてはいけないケロ!」

私もたまらず後ろからお嬢様を説得する。

「・・・わかったわ。改心して、減量に勤しむ事にします。舞、ごめんなさいね」

さすがに泣かれたのは応えたのか、お嬢様はいつもの(キリッ)て感じの顔になって立ち上がる。


「お嬢様、よくわからないけど、とりあえず走りに行きましょう!
走れば何もかも、どうでもよくなりますよ!ね?」
「ええ、そうね。舞、見ていて。私の頑張りを!」
「ふふふ、お嬢様・・・蜃気楼が見え始める頃、お嬢様もウチと同じ境地にたどり着けますよ・・・ふふふ・・・」

体育会系と悟りを開いちゃった系、2人の応援もあって、お嬢様は食事を終えると、すぐにジャージに着替えて、ランニングに出かけていった。


「・・・いやー、でも早貴、さっき本当にびっくりしたよ!だってさぁ・・・」
「でも、お嬢様が頑張るきっかけになったなら、それは良かったんじゃないかなあ。ケッケッケ」

食後、調理場にて後片付けをしながら、愛理と雑談に興じる。


「あ、ちょっと残りの食器さげてくるね」
「ほーい」

洗い場を愛理に任せて、食堂に戻ると、ちょうど足元に手のひらサイズの容器がコロコロと転がってきた。


「ん?」
「ああ、ごめんごめんなっちゃん」

ひょいっと摘み上げると、表面に「タイガー●ーム」の文字。よくある、定番の湿布薬だ。ツンとしたにおいが鼻を掠める。

「舞ちゃん、肩こり?」

そういえば、これママが使っていたな・・・なんて思いつつ聞いてみたけれど、舞ちゃんは無言で首を横に振った。

「さっき、塗りたくったんだよね、まぶたに。あーまだヒリヒリするんだけど」
「・・・は?」


まぶた・・・ですと?

私の脳裏に、中等部のころの思い出がよぎる。

そう、あれは演劇発表会の時。
悲しいシーンでうまく涙を流せない私のところに、ゆりなちゃんがくまくま笑いながらやってきた。

なかさきちゃん、うちいいもの持って来たよ!これを目に塗りつければ、絶対に泣ける!大丈夫、ちゃんと弟で試したし!さあ!やめろ熊井コラ、眼球はダメだケロ!痛いケロ痛いケロ!ほーらなかさきちゃん、ちゃんと泣けたね、良かったね!!

「・・・舞ちゃん、もしかしてさっき泣いてたのって」
「ふふん」

舞ちゃんは軽く笑うと、私の手から取ったタイ●(ryを、ぽーんと栞ちゃんに投げた。


「ほんと、これ効くねー。いろんな意味で。」
「でしょ?舞ちゃんの涙なら、お嬢様もイチコロだかんな」

――お、恐ろしい・・・こいつら、グルだったのか・・・!でも、いったいいつから?だって栞ちゃんは、


「か、栞ちゃん、お嬢様のダイエット、反対じゃなかったの・・・?わけがわからないケロ」

私はクラクラする頭を押さえながら聞いた。


「はーん?まあ、そんときはそんとき、今は今だかんな。私は常にエロくて可愛くて楽しいものの味方だかんな。
どんな形態のお嬢様だろうと、お嬢様がお嬢様なら栞菜的には何の問題もないし」
「なーにかっこつけてるんでしゅか、℃変態の癖に。ま、ちしゃとの愛くるしさの前ではそういう考えにならざるをえないのはわかりましゅ」

なんだ、こいつら。
まるで不良男子が河原で殴り合い、「へへ、お前のパンチ、効いたぜ?」「そっちこそやるじゃねえか」っていう定番のあれみたいに、爽やかに拳をぶつけ合う2人。何、この世界観。


「いいんだよ、なっきぃ。わからないのが普通。ケッケッケ」
「キュフゥ・・・」

いつの間にか調理場から移動してきた愛理に肩をぽんぽんされながら、私は乾いた笑いを漏らしたのだった。



――数週間後
リ*´一`/リ  ホッソリ

(o・ⅴ・)<舞のおかげで痩せ聖ちゃんでしゅね

リ*´一`/リ<ウフフ・・・

(・ⅴ・o)<それに引き換え

ノk| ‘ - ‘ ;)<あわわわ

ノk| ‘ - ‘ ;)<お嬢様を挑発するために食べまくってたら、ごらんの有様だかんな

ワクワク(o・ⅴ・*)<ようこそ、萩原式ダイエットスクールへ!
リ*゜一゜/リ<ウフフウフウフフフフウフフ
从・ゥ・从<栞菜、とりあえず走ろう!走れば(ry
リl|*´∀`/l|<受け入れるのです、この世の全ての不条理を・・・そこに見えた光こそが新世界の

ノk| ‘ - ‘ ;)<ヒーン

ガクガクガクガク ノソ*^ o゚;)州´・ v ・;)ブルブルブル


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