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キャンプファイヤーに火が点り、校庭に歓声があがった頃、裏庭の方から、千聖お嬢様と舞ちゃんが歩いてきた。
後夜祭、来ないのかと思ってた。二人で静かなところ(多分給水塔だな)で、学園祭終了の余韻に浸るのかなって。
舞ちゃんの性格を考えれば、それも想定できたんだけれど・・・なんとなく、来てくれてよかったってホッとした。


「おーそーいー」

さっそくお嬢様にジャレつく栞菜と、それを牽制する舞ちゃん。いつもどおりの情景に、私は目を細めた。

「愛理、火の前で写真撮ろっ!」
「うん、今行くー」


ぼんやりその光景を眺めていたら、梨沙子に腕を組まれて、炎の近くまで移動する。
後夜祭スタッフさんに写真をお願いして、何枚か撮っているうちに、徐々に人が集まってきた。

場所独占しちゃってたかな・・・?と移動しかけると、3人組の女の子たちに「あの、鈴木先輩!」と声をかけられた。

「ん?」

自分の顔を指差してみる。だけど「どうしよう・・・」「でも・・・」とか言って、それっきりなかなかこっちには話しかけてくれない。
すると、梨沙子がツンツンと私の脇腹をつつきながら、イヒヒと笑った。

「わかったー。愛理と撮りたいんでしょ」
「あ、は、はい!あのよかったらぜひ」

キラキラした目で見つめられて、嬉しいような気恥ずかしいような・・・。あんまり、こういうふうに煽ててもらったことってないから。

「じゃあ、私撮ってあげるよ?」
「いえ!あの、菅谷先輩も一緒に!ぜひ!」
「わ、私も?何で?」

最近の下級生は、なかなか積極的らしい。
手の空いているスタッフの子をすぐに見つけ出して、私と梨沙子を真ん中に、一番火がキレイに映える場所を陣取った。
撮っている間もいっぱい話しかけてくれて、ちょっとしたスター気分だ。とまどいつつも、やっぱり嬉しい。

「Buono!のステージ拝見しました!私たち、愛理先輩のファンでっ写真撮ってもらえるなんて嬉しいです!」
「梨沙子先輩の応援チームにも入りたいんですけど、えっと夏焼先輩オンリーのファンじゃなくてもOKですか?」

えーどうしよっかな、なんて言いつつも、梨沙子もすっごい嬉しそう。
Buono!か・・・。今年は特に、大変なこともいろいろあったけど、その分感慨もひとしお。


「梨沙子、私ちょっとあっちいるね」
「あ、うん!後で行くね」

撮影後、メルマガ登録のことで下級生に囲まれている梨沙子に一声かけて、私は芝生のところに腰をおろした。
心地よい倦怠感と、充足感。無意識に頬が緩んで、ムフーと変なため息がこぼれた。

キャンプファイヤーの炎のおかげで、外にいても寒くないし、周りにいる生徒さんたちの顔もちゃんと見えるから、一人でも寂しい気はしない。
よく目を凝らすと、そこらじゅうに見知った顔が居るのがわかる。


「・・・めぐ、髪伸びたね」
「みやびは短くなったね」
「めぐ、また可愛くなったね」
「みやびも可愛くなったね」
キャッキャウフフ、イチャイチャベタベタ。


――おやおや、一部学外の方が紛れ込んでいらっしゃるようですが、何も見てない、聞こえてない。お幸せそうで何より、ケッケッケ。


「でね、3曲目でももが袖でこけそうになってー。あと、アンコールで着てたワンピース、着替えの時裾がストッキングに巻き込まれて、ももだけおもいっきしパンチラしててー」
「ほうほう、それで?」
「ちょっとくまいちょー!何で失敗談だけ覚えてるの!千奈美もメモしない!記事にすんの禁止だから!もっとあるでしょ、ももの可愛くてチャーミングすぎるステージパフォーマンスが」
「はい、あざっしたー。次号の学校新聞をお楽しみにー」
「・・・おいっ!」

お隣では、徳永さんともものいつものコント。with、煽り役の熊井ちゃん。


「・・・しっかり見回ってね。もう学園祭は終わったんだから、いつもどおり節度ある学校生活を(ry」
「はい、委員長!」

風紀委員長モードのなっきぃは、不届き者はおらぬかと巡回強化中のもよう。
さっき私と梨沙子がいた炎の前では、舞美ちゃんやえりかちゃん、清水先輩が、ファンの子たちとの撮影に応じているみたいだ。
帰らずに後夜祭まで残ってくれた姉妹校の真野さんも、茉麻ちゃんと談笑しながら、時折うちの学校の生徒の相手をしてくれている。

きっと、後ではももも写真撮影をするんだろう。・・・高等部の学生として参加できるのは、今年が最後だから。

「最後、か・・・」

もものことだから、来年も本当にステージに上がろうって企んでいることだろう。
舞美ちゃんたちだって、今後も可能な限り、学園祭に顔を出してくれるに違いない。
でも、その時にはもう、同じ立場ではなくなっているわけで。
私ももうすぐ、この赤いリボンのブレザーとお別れして、青い制服に身を包むことになる。

そんなことを考えていたら、どんどん物寂しい気持ちが湧き上がって、私はそっとその場を離れた。

普段はポジティブ思考な分、一度くよくよしだすと止まらなくなるのが私の悪い癖。

行く当てなくブラブラしていると、前方にふわふわ揺れる、見知った小さなお顔を発見した。
千聖お嬢様だ。さっきまでは舞ちゃんたちと一緒にいたはずなのに、今はお一人でいるみたいだ。取り巻きさんたちもいなくて、完全フリーなお嬢様ってなかなか珍しい。

女子校の学内なら危険なんてないだろうし、そっとしておいてもよかったんだけれど・・・なんとなく、私はその背中に手を掛けた。


「あら、愛理」

さして驚くでもなく、振り返ったお嬢様はいつもみたいににっこり笑ってくれた。

「今ね、後夜祭のスタッフの方から、ビンゴゲームの用紙をいただいたの。2枚あるから、まだ受け取ってなければ、これ」
「2枚って、誰かと一緒に参加なさるんじゃないんですか?舞ちゃんとか、栞菜とか」
「いいえ、舞と栞菜は向こうで難しいお話をしているわ。愛理さえよければ・・・」

もちろん、拒む理由なんであるはずもない。

「ぜひ、ご一緒させてください」

私はビンゴカードを受け取り、お嬢様の横に並んだ。


「ウフフ、よかった。さっき千聖がカードを2枚いただいたのは、きっと、こうして愛理と会えるのが運命づけられていたからなのね」


――お嬢様、嬉しい事言ってくれる。でも、舞ちゃんたちがどこで聞いてるかわからないから、小さい声でね!
あのコンビは、下手すりゃ地面に潜ってでも探り入れてくるから・・・。



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