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「・・・は??何言ってんの、愛理」

不快感を露わにする舞ちゃん。わかってるでしょ?意地悪しないでよ、って感じかな。
だけど、残念ながら私は“舞様”な眼光って別に怖いと思わない。何か、むしろ可愛いと思ってしまう。今みたく黒愛理モード入ってる時は、特に。

「いいぞ、愛理!もっとやったれだかんな!」
「℃変態は黙ってろよっ。・・・ねー、ちょっと、何で?愛理」

ステージ下からの、お嬢様の「よかったわね、舞!」という無邪気な声援も癇に障るらしく、舞ちゃんは不機嫌MAXに私を問い詰める。


「お願いとかあるなら、フツーに言ってくれればいいじゃん。今はそういうんじゃないでしょ」
「ケッケッケ、いいじゃないかぁ~私は、舞ちゃんが欲しいのである!」

さっきのみずきちゃんって子の真似して言ってみると、舞ちゃんはオエッと舌を出した。
ケッケッケ・・・こういう℃Sちゃんをからかうのって楽しい。我ながら、いい性格をしてるもんだと思う。

普段から自分のことをおちょくる栞菜や、あるいはめぐぅが同じことをしたのなら、舞ちゃんは即抗うだろう。
だけど、今ちょっかいを出してるのは、穏健グループなはずの私。
どういう態度に出たらいいのか迷っているのか、唇を引き結んで私をじっと見ている。


“鈴木さーん、えーと、景品・・・は、そちらでいいんですかー?”

徳永さんの遠慮がちな問いかけ。

「はーい、こちらの舞様でぇ」
“あー、そう?ふーん・・・そっか・・・”


まあ、当事者ながら、みんながいぶかしむ気持ちもよくわかる。


私と舞ちゃんは仲がいいけれど、こういう行事で選んだり選ばれたりって関係かっていうと、それはちょっと違う。
いい意味で適切な距離を保って、お互いの状況を把握して付き合える感じ。だったはず。

「ねー、もういいでしょ?愛理ぃ。なんだよー、何か言ってよー・・・」
「ケッケッケ」

こうやって天才っ子を戸惑わせるのって、結構楽しかったりする。

――鈴木先輩と、萩原さんだって・・・
――でも、舞様は千聖お嬢様を・・・
――もしかして、これって三角関係とか・・・


ケッケッケ、まあ、そういうの面白いかもしれないねぇ。
結構性能のいい私のお耳は、興味深いささやきを次々キャッチしていく。

「よかったじゃん、萩原!新しいカップリングが誕生したかんな。うんうんじつにお似合いだ、応援するかんな!」
「はぁ!?・・・ねー愛理、なんとか言ってよ!もー!何で舞なんだよー!愛理ってばー!」

冷静沈着なはずの舞ちゃんが、子供っぽく駄々をこねるのが可愛い。
ずっと見てたくなっちゃうけど、加減を間違えると本気で拗ねられちゃうから、この辺かな。


「マイク、いーですか?」
“どーぞ”

徳永さんから借りたマイクを片手に、私は舞ちゃんの手首をつかんで1歩前に出た。

「というわけで、萩原舞さんは私がGETさせてもらいましたー!」

高らかに宣言すると、戸惑いながらもみんな拍手を返してくれる。
ここまで盛り上げられてしまうと、さすがの舞様も諦めがつくらしく、不満そうな顔ながら、私の手を握り返してくれた。

「・・・で?舞はどーゆー命令をされるんでしゅか?」
「ふっふっふ」

その質問はあえて聞き流し、私は舞台上から“コイコイ”と手招きをする。


「まあ・・・私、かしら?」

お相手は、千聖お嬢様。


「そうです、ちょっと上がっていただけます?千聖様」
「でも私、まだビンゴの列をそろえていないのよ」
「まーまー、それはそれ、これはこれ。ちょっとお付き合いくださいよぅ」

テンション高い私に小首を傾げつつ、お嬢様は素直にこちらへ赴いてくれた。


「・・・もー、わけわかんない。ちしゃと、こっち!」

舞ちゃんったら、依然私をジロジロと観察しつつも、お嬢様が近くに来てくれたから嬉しくなっちゃって、ステージ下にいる女の子たちに悠然と微笑みかけてあげたりしている。

・・・さてと。
仲良く並んだ二人を少し前に押し出すと、私は改めてマイクを取った。


「お時間いただいちゃってすみません。いま、千聖お嬢様に壇上へ上がってもらったのにはわけがあります。
私のお願い事。それは・・・」

よく突っ込まれる“早口モゴモゴ”口調にならないよう、慎重に、言葉を区切って話し出す。

「来年の学園祭、舞ちゃんと千聖お嬢様と私で、何か出し物をやらせてください!」

“えー・・・”
「はあああ!?なにそれ!」


場内がザワめく前に、大きな目を見開いた舞ちゃんが、驚嘆の声を上げる。

「どういうこと!?何で舞が」
「だって、何でもいう事を聞いちゃうぞキャンペーンなんでしょ?私のお願いも聞いてもらえるでしょ?」
「そんなこと言ったって・・・ねー、なんなの?愛理今日変」

珍しく、本気で当惑している様子の舞ちゃん。
景品としての自分を選び取ってしまった上に、こんな重要な事をみんなの前で半強制状態で発表されて、混乱しているのだろう。
ケッケッケ、戸惑う女王様って可愛い。でも、あんまり苛め過ぎると嫌われちゃうかな。
黒愛理はあんまし降臨しないから、自分でも加減がよくわからない。


「なんてこったい愛理!愛理は萩原の味方なんか!よくもあたしのお嬢様をキエエ!」
「うっさい有原!もーなんなのこれ!舞の計画と違うし!」

別の方向からも思わぬおもしろリアクションが飛んできて、黒愛理としては楽しくてたまらない状況だ。
会場はザワついてるし、あんまりよくない状況なのはわかってるんだけどね、ケッケッケ

「・・・素敵なアイデアね、愛理」

その、ちょっと不穏になりかけた空気を浄化したのは、お嬢様の可愛らしいお声だった。
黒目がちな目をゆっくり瞬かせながら、いぶかしむ舞ちゃんの顔を覗き込む。


「舞。舞は今、ビンゴゲームの景品になっているのでしょう?
それなら、愛理のお願いごとをお引き受けしないとね」
「でも、」
「ウフフ、楽しみね。愛理と舞と私、一体どんな催しが出来るのかしら?愛理は、どんなプランを?」

おもちゃを差し出された子犬のように、キラキラした目で私を見るお嬢様。

「そうですねー・・・トリオ漫才とかどうでしょう?」
「やだよ舞そんなの」

「歌、やったらー?」

その時、ステージ下から唐突に声をかけてきたのはもも。


「千聖、歌好きでしょ?愛理も好きでしょ?舞ちゃんも好きでしょ?」
「ちょっとももちゃん、別に舞は」
「もぉ知ってるよ?舞ちゃんが一人で給水塔にいる時、可愛い声で歌ってるの」

ももが大きな愛でもてなして♪と振りつきで踊ってみせると、舞ちゃんはカァッと顔を赤くした。

「ウフフ、そうね。千聖も、舞の歌声が好きだわ。
甘くて、少しピリッと痺れて。ハチミツと、ジンジャーを混ぜたような素敵な色合いの可愛い声。
皆さんにも、舞の歌を堪能していただきたいわ。愛理の澄み切った御水のような声と、きっと綺麗に重なると思うの。
えと・・・それから、私の歌も、お嫌でなければ・・・」
さんせーい!と煽るもも。真野さんの件といい、今日のももはえらくお友達思いだ。
「ね、みんなもいいでしょ?愛理のビンゴの景品だもん。もぉは聞きたいけどなぁ」

その呼びかけに、聞いてみたーい!と、勇気ある舞様ファンがちらほら声を返していく。

「舞ちゃん、あたしからお嬢様をNTRしたんだかんな。そのぐらいのお願い、聞いてあげてもいいじゃんか!」
「変な事ゆーなよ!・・・わかった、わかりました!でも来年1回だけだからね!」

まったくもう、とか言いながら、私のムチャブリに応じてくれた舞ちゃん。

「ちょちょちょ、あとで詳しく話し聞かせてよっ!学校新聞の1面に載せるから」
「しょうがないでしゅね」

新聞部モードの徳永さんからの取材要請にも、諦めたように応じる態度を見せる。
それで、漸く私の黒モードも落ち着いて、いつものぼへーっとしたテンションが戻ってきた。

「・・・はーい、それじゃ、来年の学園祭の楽しみも出来たってことで、ビンゴの続きいっちゃいましょう!
次の数字はぁ・・・」

徳永さんの声を背に、私は景品様を伴ってグラウンドへと戻っていく。

――つん、つん

「ん?」

見ると、若干ほっぺたを膨らました舞ちゃんが、上目づかいに私を睨んでいた。


「ごめんごめん、何か悪ふざけが止まらなくなってしもうた」

謝ってはみたものの、舞ちゃんの表情は変わらない。

「舞ちゃーん・・・ごめんよぅ・・・」

なだめてすかして、大慌ての私のしばし観察した舞ちゃんは、「愛理さーん」と唐突に口を開いた。

「へ、へい」

反省モードの私。
ピシッと背筋を伸ばして向き合うと、舞ちゃんがほっぺに頭突きをくらわせてきた。

「あいたた」
「わかりにくいんだよっ、愛理の親切は!」

あっかんべーとともに、お嬢様のとこへ走っていってしまった舞ちゃん。

「・・・ケッケッケ」

親切、ね。
お嬢様を絡めて、舞ちゃんを驚かせつつ喜ばせてあげたかった。その気持ちが伝わっていたのは嬉しい。
ま、黒愛理の暴走が過ぎたような気がしなくもないけど・・・終わりよければ全てよし、ってことで。

人並みをこっそりすり抜け、私は賑わうビンゴ会場から少し離れてみた。・・・やっぱ、これぐらいの位置が一番落ち着くなあ。

少し距離があってもわかる、ぴょんぴょんジャンプしてはしゃぐもも。舞美ちゃんの「ビンゴしましたー!」と壇上へ上がる姿。えりかちゃんと佐紀先輩の弾けるような笑い声。
今日のような“非日常”の中にある、“日常”。来年は、もう見ることの出来ない・・・。

だけど、さっきまでの私とはもう違う。
寂しさよりも、来年もここへ来てくれるだろう、尊敬すべき先輩がたを、どう御持て成ししようかなって。今はそう思っている。

きっと、今しがた得た、大きな大きな次のステップのおかげだろう。絶対、みんなの度肝を抜いてやらなければ。

遠ざかった灯りと、小さくなった喧騒に目を眇めながら、私の思考はもう既に、来年の舞ちゃんたちとのステージのことでいっぱいになっていたのだった。





~ビンゴ会場~
リ*・一・リ<ウフフ、やっと列が揃ったわ!
从*´∇`)<おめでと!
リ*・一・リ<ええと、景品は・・・

      ハァハァハァハァ
ハァハァハァハァハァ ノk|*‘ρ‘) ハァハァハァハァハァーン
      ハァハァハァハァ

リ*・一・リ<
从*´∇`)<
リ*・一・リ<・・・この、ア●パンマンおすなあそびせっとにするわ
从*´∇`)<・・・デスヨネー

Σノk|‘-‘)

リl|;´∀`l|<ウ、ウチがもらってあげるから!まだ1マスも開いてないけど!
ノノ∮' _l')<あ・・・2枚目ももうリーチだ・・・





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