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とあるカフェで熊井ちゃんと向き合っていた。

ことの起こりはこうだ。
昼休み、熊井ちゃんからメールが来たのだ。

(今日この後、学校終わったらどうせヒマしてるんでしょ。あの角を曲がったところにあるカフェで待ち合わせね)

どうしてヒマと決め付ける? 今日は図書館に行こうと思っていたのに。
だが、熊井ちゃんからの誘いだ。それはやっぱり面白そうだから、学校が終わると件のカフェに向かったのだった。
席を3人分取っておいて、って言われたのが気になるけど。


熊井ちゃんは来るなり開口一番、

「なかさきちゃんに会ったんだってー?」

熊井ちゃんの言ってるのは、この間お嬢様と一緒に歩いていたあの優等生の子のこと。
熊井ちゃんは彼女のことをよく知っているらしい。彼女も僕らと同い年だそうだ。
名前は中島早貴ちゃん。通称なかさきちゃん。

な、か、さ、き。

彼女のイメージにぴったりのニックネームだね。男子生徒のノリであだ名つければ略称はnkskで決まりだな。
なかさきちゃんは学園の風紀委員長を務めており、熊井ちゃんはしょっちゅう彼女に指導されているらしい。
風紀委員長か。あの子の風貌を考えるといかにもって感じだなあ。似合いすぎている。

「友理奈ちゃん、あの男子はどういう人だケロ!って問い詰められちゃったよ。あはは」
「で、何て答えたの彼女に」
「全部伝えたよー。舞ちゃんのことが好きで舞ちゃんに会うために毎朝待ち伏せしてることから何から」

なに、それ・・・

「何でそんなことまで言うんだよ、もう! 第一、聞かれてる質問に対してその答えはおかしいでしょ常識的に考えて。しかも何その表現・・・ あらぬ誤解を招くじゃないかよ! 彼女とも仲良くしておきたいのに」
「なかさきちゃんと仲良くなりたいの? なかさきちゃん人見知りするし、仲良くなるのに時間かかるよ」

「それに、なかさきちゃんって、ちょっと変わってるからねー。だから寮の人達の中でも浮いちゃってるし。なかさきちゃんって少し変わってるから」

そうなの?
二度も言うほど、変わった人には見えないけどなあ。熊井ちゃんの方がよっpp
よく見かける時だって、普通に寮生のみなさんで仲良くしてるけど。

でも、女の子のグループは表面の見た目だけでは計り知れないっていうしなあ。
この間の舞ちゃんと栞菜ちゃんの謎の関係のこともあるし。
実は見た目の仲の良さとは違う裏の世界があるんだろうか・・・なんて考え込んでしまった。

「まぁ、なかさきちゃんと仲良くなりたいって言うんなら、うちがそれとなく話しておいてあげるよ」

一見ありがたい申し出のように聞こえるが、それは非常に危険だ! 大慌てで断る。

「いや、いいよいいよ。別にそこまでしてくれなくても」
「遠慮すんなよー。うちが上手いこと話しをつけてあげるから」
「いやホントいいですから、どうぞお気遣い無く」

遠慮じゃないです。不安なんです。
そんなことされたら非常に不安で、しかもその不安はたぶん的中する。
彼女のこの手の余計な御世話、じゃなくて親切心は、ほぼ確実に逆効果になることは経験上間違いないところなんだ。



あ、そうだ。もうひとつ気になっていたことがあった。

「あのあと栞菜ちゃん僕のこと何か言ってた?」
「栞ちゃん? 別に何も言ってなかったけど?」
「そっか。それならいいや」
「何それ? 何を言われてると思ったの?」
「いや、別に。何も言ってないならいいんだ」
「よくないよ。うちにわざわざ聞いたってことは何かが気になるんでしょ? 何が?」

しまった。熊井ちゃんが食いついてきてしまった。
これは彼女の納得がいく返答をするまで解放してもらえないぞ。

「栞菜ちゃんに変な風に誤解されたら嫌だな、と思って。彼女は面白がったりしそうだからさ。僕と舞ちゃんとのこと知ったら」
「どういうこと?」
「僕は真剣なんだ。だから、あまり茶化したりしてほしくないんだよ。僕に対してならいいけど、舞ちゃんには絶対に。それで舞ちゃんに迷惑がかかったりするのは申し訳ないから」

熊井ちゃんは僕の言ってることがピンと来ないみたいだったけど、僕がいつになく真剣に発言したからか黙って聞いて頷いてくれた。
でも、あまり分かってないみたいだ。それはこの後の熊井ちゃんの朗らかな返答からも明らかだった。

「それでさ、念のため聞くけど、熊井ちゃん僕のことを栞菜ちゃんにはどのように伝えたの?」
「うん。全部伝えたよー。舞ちゃんのことが好きで舞ちゃんに会うために毎朝待ち伏せしてることから何から」

めまいがしてきた。
そりゃ、熊井ちゃんが僕の想いへの配慮などするわけがないのは分かりきっているけどさ。
さすが熊井ちゃんだな、と逆に納得させられてしまう。
しかも、なかさきちゃんに対しての説明と一字一句違わないし、などとどうでもいいことに感心してしまった。

しかし、この「舞ちゃんのことが好きで舞ちゃんに会うために毎朝待ち伏せしてる」というキーワードは何とかして変えさせたい・・・

でも、もう手遅れだろうな、残念ながら。
熊井ちゃんのツボにはまってしまったのだ、当分の間は面白がって使われ続けることは覚悟しないと。

まぁ、心配しなくてもそのうち飽きてコロッと忘れちゃうだろう。それまでの辛抱だ。
その間にどれだけ拡散されるかを考えると絶望的な気分になるが、それはもう自分の力ではどうしようもないことなのだ。
あと何回言われたとしても、それは熊に噛まれたとでも思って忘れてしまわないと。

げっそりとした気分に陥っている僕に熊井ちゃんが偉そうに指示する。

「そこの椅子の荷物どけておいて。そこ、もうすぐももと梨沙子が来るから」
「えっ!?誰が来るって?」
「だからぁ、今日はもぉ軍団のミーティングだから」

え?何て言った? 何軍団だって? なんだそりゃ?
熊井ちゃん、お願いだから僕を変なことに巻き込まないで下さいね。

「だから、そっちの方が学校から近いから席を取っておいてもらったんじゃん。何だと思ったわけ?」

実は熊井ちゃんからお誘いのメールが来たとき、結構嬉しがってた自分がいたりして・・・
なのに単なる席取り要員だったのかorz
はいはい、お役に立てて光栄です。
それが顔に出てしまっていたみたいで。ちょっと拗ねた顔になっていたらしい。

「なーんだ、そうかー! そんなに入りたいなら、もぉ軍団の舎弟にならしてやってもいいよ」

お断りします(AA略
そんな怪しいグループには入りたくないです。しかも、なんでハナから下っ端扱いなんだ。
だいたい、今の話の流れで、どうしてそういう考え方になるんだろう。

まぁいいや。
それより、さっき熊井ちゃん“りさこが来る”って言ってたよね!?
それって、あのりーちゃんのことだろうか? 脳裏に先日出合った彼女のかわいらしいお顔が浮かぶ。
彼女に会えるっていうのか。だとしたら、それは何て言うか、とっても楽しみじゃないか? ちょっと気分が上向いたぞ。
決してそれを表情には出さなかったけど。

そのとき、店のドアが開かれた。
現れた2人を見て僕は驚いてしまった。そこにはあの人があの人と。

「あっ、もも来た。あれ?千聖お嬢様じゃん。梨沙子はどうしたんだろ。おーい、ももー。こっちこっちー」
「くまいちょーお待たせ。じゃーん!今日のミーティングにはちさとが参加しまーす」
「おー!いいねー!! でも梨沙子はどうしたの?」
「すぎゃさんは英語のテストが思わしくない結果だったそうで、いま追試を受けていらっしゃるのよ」
「それで梨沙子が来れなくなったって千聖がもぉに伝言しに来てくれたから、そのまま一緒に連れて来たのさ」
「テストが思わしくない結果って、つまり梨沙子赤点だったんだー。あはははは。追試とかうけるー」
「ちさとは追試にはならなかったの? そりゃまた珍しいね」
「まぁ!桃ちゃん失礼ね。なっきぃにも教わってちゃんと勉強したのよ。それより、こういうところに来ることは滅多に無いから楽しみだわ」
「もぉ軍団には学園内では話せないような重要な機密の話もあるんだぜ。だからこの秘密のアジトはよく使うんだぜチェケラ」
「ウフフ、放課後に勝手にちさと連れ出しちゃったりして、またいいんちょさんに怒られちゃうね」
「大丈夫よ。なっきぃは心配しすぎなんだから。もう千聖も大人なのに」
「なかさきちゃんともぉ軍団は所詮水と油。いつだって一心同体なんだぜ」


うわぁ、なんかいかにも女子生徒の会話って感じ(一部熊井ちゃん除く)。
そばで聞いてて萌え萌えとした気分になる。


「ところで、この子、誰?」



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