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「愛理、こっちこっち!!」
「え?」

抹茶のデコレーションアイスを持ってうろうろしていると、奥の方から舞ちゃんの声がした。

「お?お?」

お買い物休憩中のカップルや、女の子同士のお客さんで賑わう店内。
なかなかその姿が見つからず、キョロキョロ見渡していたら、痺れを切らした舞ちゃんが迎えに来てくれた。


「はーやーくぅ!」
「・・・ケッケッケ」

いや、本当に珍しい。わざわざ席まで立って。
いったい、何が舞ちゃんのテンションをこんなにあげているんだろう。私とのデート・・・だけじゃないだろうな。こんなんなったのは、さっき急にだったし。


「あーやっぱ抹茶だー。それ白玉ついてて美味しそうだなって舞も思ったんだよねー。
でもー、こっちの!舞のアイス見て!ショートケーキっぽいでしょ?ちゃんとスポンジの上に乗っかっててー」
「舞ちゃん、ほんとどうしたの?ケッケッケ」

余計な詮索はしないように、って思ってたんだけど、こうも可愛い笑顔を見せられ続けたならば、話は変わってくる。


「どうって?」

席についた舞ちゃんは、マイペースにアイスをほおばる。
とっくに、さっきの考え込むような素振りは消えうせている。
気分やなのは承知の上だけれど、楽しそうな様子なら少しは突っ込んでみてもいいだろう。舞ちゃんのテンションをころころ変えている、その要因について。

とはいえ、私はとってもとっても地雷を踏みやすいタイプ。
慎重に言葉をさがしつつ、舞ちゃんに話を振っていく。

「何かね、さっきさー、舞ちゃんがシリアスな顔してたから」
「舞が?」

そうだっけ・・・とつぶやいて、スプーンをくわえたまま黙り込む舞ちゃん。

「ほんとにー?いつ?」

おや?
別に、さっきのことをごまかそうっていうんじゃなくて、本当に思い当たることがないって感じだ。

「えっと、ほんとついさっき。ここ来る前、舞ちゃんほら・・・お店の中見て固まってたじゃん。ギャルっぽい服の・・・」
「ギャル・・・」
「だからね私、てっきり誰か中にいたのかと思ったんだ。あの、なんていうかな舞ちゃんが嫌っ・・・いや、敵とみな・・・んー、なんていえばいいんだろう。つまり、」
「あー!!」


私が続けて説明していると、舞ちゃんはそれを遮るように、急に声をあげた。
・・・びっくりした。冷静な舞ちゃんのこんなおっきい声なんて、そうそう耳にできるもんじゃない。
周りのお客さんも、何事かとこちらをチラ見するほどだ。

「思い出した?」
「・・・ふふふ、ふふふふ」

すると舞ちゃんは、今度はさも嬉しそうにグフグフと笑い出す。

「なになに?どうした?」
「ふひひひひ」

その発作のような爆笑は止まらず、ついにはスプーンを投げ出して、私の肩をバンバンと叩きだした。

「いてて」
「ふふ、ふふふごめん。もー・・・ごめんね、ほんと。だめだ舞、今日。おかしくって」

君が変わり者なのは、いつものことじゃないかぁ。なんて心の中でツッコミを入れつつ、私は次の舞ちゃんの言葉を待って、抹茶アイスを削ってほおばった。


「んーとぉ、まずは、御心配をおかけしてすみませんでしたぁ」
「いえいえ、おいふぃよこれ」

さっき舞ちゃんが目をつけていた、白玉とあずきをアイスに混ぜて差し出すと、嬉しそうにパクッと食いついてくれる。


「んぐ。・・・えっとね、別に、あそこのお店に、舞の嫌いな人がいたんじゃないよ」

嫌いな人は、ね。と小さく繰り替えず舞ちゃん。

「てことは、知ってる人がいたにはいたんだね」
「いえーす。愛理は話がスムーズに進むなぁ」

今度は自分のショートケーキ風アイスをわたしの目の前に置くと、ジェスチャーで食べるように促してくる。

「ただ、会うと思わなかったからマジでびっくりしちゃって。・・・話しかけようか迷ったんだけど、やめといたの」

私が甘酸っぱいイチゴをほお張るのを見届けた舞ちゃんは、また話を始めた。

「なんで?」
「んー。何か邪魔しちゃだめかと思って。あとこっちも邪魔されたくなかったしね」
「ふむ。」


ということは、先方は2人か。
邪魔されたくない・・・つまり、私とのデートもそれなりに・・・ケッケッケ、まあそれはいいか。


で、そういうぞんざいな言い方をするってことは、わりと近しい存在の人達なのかもしれない。
舞ちゃんは友達と知り合いの境界を実にはっきりさせるタイプ。そんでもって、親しくなればなるほど、雑でぶっきらぼうな態度をとってきたりする。
委員会も部活動もしてなくて、クラスにこれといって仲のいい子を作っていない、そんな舞ちゃんの友達であれば、恐らく私も顔ぐらいは知っている人なのであろう。だけど、ギャル服の2人か・・・
いやいや、待てよ。二人ともうちの学校の子とは限らないだろう。彼氏さんとデート中の誰かかもしれないしなあ。

などと、まるで茉麻ちゃんの愛読しているマンガの某子供眼鏡探偵のごとく、推理を巡らせている間にも、舞ちゃんの独り言とも私に言ってるとも取れるようなお喋りは続いていた。


「いやー、でもまさかあんなところで。あの2人が。ねえ?ぬふふ」
「・・・それ、私も知ってる人?」
「んふふふ」

問いかけてみるも、答えは返ってこない。


「おーい、舞ちゃぁん」

私の心の片隅で、黒愛理がざわざわと疼き出す。・・・だめ、まだ出番じゃないですよー?ケッケッケ


「ねー、愛理が行きたい雑貨屋さんさぁ、トイカメラ、売ってたっけ?」

今度は何の脈絡もなく、そんなことを言い出す舞ちゃん。

「んー・・・たぶん。ホームページでカメラの特集やってたし、種類もあるんじゃないかな」
「よしっ」

私の答えに満足したのか、うんうんと2回うなずいた舞ちゃんは、いきおいよく立ち上がった。

「ほ?」

「そこ、行こう!」
「ええ?」

ぐいぐい腕を引かれて、梨沙子よろしくあばばばと軽く慌ててしまう。

「まだ食べてるよぅ」
「ワッフルコーンだし、食べ歩きでも大丈夫でしょ!ねー、いいでしょー?」


いつになく強引で、ワガママっこな舞ちゃん。

「ケッケッケ」

でも、不思議なことに嫌な気はまったくしない。
私を引っ張りまわそうとしている、この状況。
いつもは基本的に、寮の皆がバタバタと走り回るのを観劇して楽しんでるのが私のポジションなのに、こうして“役者”側に招きいれてくれようというのだから、わくわくしてしまう。

「舞様はー、どのようなカメラをご所望で?」
「んー、見た目はどうでもいいかな!ま、可愛いほうがいいけど。
小型であんま目立たなくて、でも顔とかは結構しっかり取れるといいな。
シャッター音は周囲のノイズに紛れるタイプで。
操作は一回見ればわかるし、難しくても簡単でもいいよ」

――おいおい、何か物騒なことに使うんじゃなかろうな。

そう心の中でつっこみつつ、ケッケッケ笑いは溢れ出て止まらないのだった。



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