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それから数十分。
みやとめぐぅのデート、それから私たちの尾行は続いていた。

「んだよ、もー・・・」

舌打ち交じりにカメラを構える美少女。道行く人々は恐れをなして、邪魔をしないようにと舞ちゃんを避けていく。

「もっとイチャイチャしろよ。指絡ませあうとかぁ、トイレの個室に2人で」
「あーあー、舞ちゃぁーん」


その話は、寮に戻ってから栞菜ちゃんとゆっくりしてくださーい、きっと喜ぶから。

「でも、思ってたよりあっさりしてるね。めぐぅとみやびって」
「でしょ!?」

たしかに、めぐぅって普段からあんまり人とベタベタしないタイプだとは思う。
同年代の子よりも早くお勤めを経験してるから、精神的に大人なんだろう。
私たちと一緒にはしゃいでいる時だって、ちゃんと冷静な目線を忘れていないというか。

でも、みやびに対しては別。
何気なく、誰かの口から出る“みやび”という名前に顔を綻ばせるし、中学時代のみやびの話を心から楽しそうに教えてくれたりもする。
あのめぐぅを、そんなデレ甘状態にできるのは、みやびだけ。誰がどう見たって、特別な関係。
だから、こういうデートの時なら、もっとはしゃいでイチャイチャしててもおかしくないだろうに。


「ねー、次帽子見たいな」
「ん?いいよ。あれは?あのお店のディスプレイ・・・」


腕なんか絡めない。手もつないでない。
歩調だけ合わせて、お互い違うものを見てても気にしてない。


「・・・うー」

さっきから子犬の威嚇みたいに唸り続けている舞ちゃん。
思うようなショットが取れないから、ってだけじゃない。多分、ヤキモチをやいているんだ。あの、なんとも表現しがたい二人の空気に。


「・・・なんか、夫婦みたいだねぇ」
「ふんっ」

おやおや?拗ね舞ですか?
口を尖らせてそっぽを向くその顔は、普段の小生意気な感じとのギャップもあって、やたら可愛くて・・・私の中の黒愛理さんが、かまいたくて仕方がないと騒ぎ出す。

「ケッケッケ・・・・ねぇねぇ、見て?めぐぅが荷物持ってあげてるよ?あー、そしてみやがドアを押さえてる!お互いを自然に助け合うあの姿勢。いやー、愛って、素晴らしいものですなぁ」
「ねー、ちょっとぉ」
「私は考えてみた。本当に相手のことを、心から信頼しているのならば、スキンシップなど必要ないのではないだろうか。
それが証拠に、あの2人ですよ。いわば、阿吽の呼吸。ツーとカー。少しの仕草で、相手の意図を読み取って、快適な状態を作り出そうっていう自然な歩み寄り!いいですねぇ」
「・・・ふん、カツゼツ悪くて何言ってっかわかんないし」

舞とちしゃとだって、あれぐらい。とかつぶやいてる時点で、聞こえてるってことじゃないかぁ。ケッケッケ


「・・・でもさ、舞ちゃんは2人の写真を撮って、一体どうするつもりなの?」
「え?わかんない?」

黒愛理様ともあろうお方が?なんて微量の憎まれ口返し。

「だってさ、別に・・・」

私が再度口を開いたときだった。

「ねーめぐ、こっちの黒のさ・・・」
「みやび、ちゃんと前見て!」

背丈より高い位置にある帽子を取ろうと手を伸ばしながら、同時にめぐぅの方を振り返って話しかけているみやび。
その横を突っ切ったお客さんの鞄が背中に当たって、グラッと身体が傾く。


「あ・・・!」

思わず飛び出そうとする私を、左手で制する舞ちゃん。

「大丈夫だから」

その言葉を裏付けるかのように、やれやれって感じの顔しためぐぅが、両手でふわっとみやびの体を受け止めた。


「・・・もー、ちゃんと足元見てなきゃダメでしょ?そんな高いヒール履いてるんだからさぁ」
「ごめんごめん、だってめぐに早く見て欲しくて」

・・・あ、何かかっこいいかも。
めぐぅは学園ドラマに出てくる、モテモテのクールな男の子のように、余裕綽々でみやびを支えている。
みやびはみやびで、あの美貌だ。本当に、見た目も中身もお似合いすぎる。
この光景を邪魔しちゃいけないと思ったから、舞ちゃんは私を止めたのだろうか。


「ふふん、いい写真が撮れたでしゅ。どうよ、これ」

梨沙子よろしく、肩をすくめてイヒヒと笑いながら、デジカメを差し出してくる舞ちゃん。

――ああ、はい、違ったみたいです。舞様をあなどってはいけないってことですな。ケッケッケ

「おおー・・・これは、なかなか」
「舞の写真の腕も、なかなかでしょ?」

連写モードで撮影したのは、たった今、みやびに起こったハプニング。

びっくりした顔でよろけるみやびが1枚目。
それを抱きとめるめぐぅが2枚目。
めぐに寄りかかったまま、みやが目をパチパチさせてるのが3枚目。
ラストは、2人で苦笑しているショット。・・・うん、捨てショットなしだね!素晴らしい。


「・・・その手のマニア(A原さん)とかが、買い取ってくれそうなレベルだねぇ」
「ふん。まあ、それもいいんだけど。いくよっ、愛理!」

鼻息荒い舞様に連れられて、私たちもついに、帽子のお店に突入。


「はいはいはいはーい。そこのお2人さーん」

なぜかミュージカル調で、未だくっついたままの2人の頭上に、声を降らせる舞様。


「あー・・・」

チラッと舞ちゃんを一瞥した後、すぐに私を見据えるめぐぅ。


“尾けてたの?”
“いーえ、偶然です”
“だよね”


無言のまま、お互いのちょっとした目の動きだけでぽんぽんとやりとりを交わす。

「愛理?舞ちゃんも・・・?」

一方、みやびは私たちの姿を確認して、なんだか照れくさそうに笑った。

「あ・・・あはは~、まさか、こんなとこで会うとは。へっへっへ」

典型的な、友達にデート現場を見られちゃったときって感じのリアクションだ。

「うんうん。まさかぁ、こんな遠くのショッピングモールで会えるとはね。ふふふ」
「んあ?何が言いたいの?」

いつもよりご機嫌度マシマシ、だけど隠しきれない邪悪なオーラが立ち昇る舞ちゃん。
みやびを守るようにめぐぅが立ちはだかって、2人の間に火花が散った。


「・・・あのー、ここじゃなんですのでぇ、場所変えませんか?」


アシュラマイマイと村上鬼軍曹の頂上対決じゃ、店舗の1つや2つ、破壊しかねない。


「ケッ、場所なんて関係ないでしゅ。でもまあいい、ついてくるがいいさ。そこが貴様の墓場となるのでしゅふはははは」

声高らかに笑うお姿は無駄に神々しくて、私はみやに借りたマップを頼りに、ひとけのない場所を探し始めたのだった。



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