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決闘の場に選んだのは、チビッ子広場に隣接する休憩所。
こういう場所でなら、さすがの舞様だって、多少は人目を気にしてくれるだろうという判断で、ここへ足を運んだ。

「・・・で?ご用件は?」

せっかくのデートを邪魔されてしまっためぐぅ、露骨に不満そうな顔をして、舞ちゃんを見据える。
怖っ・・・。

「ふっふっふ」

対照的に、舞ちゃんはつるつるほっぺをご機嫌にキュッと上げて、満面の笑顔。
2人ともすぐ顔に出るタイプだから、何も知らない人が見たって、何となく状況が把握できてしまいそうな感じだ。


「・・・ふんふ~ん♪」

一方、みやびは涼しい顔してケータイをいじっている。
めんどっちいことになったけど、まあめぐぅがどうにかしてくれるでしょ、みたいな。
晴天の空の下、1つのテーブルを囲んで、それぞれがいろんなお天気に顔を染めている。
この状況、私の中の黒愛理が面白がって、ニヤニヤするのを抑えられない。

「舞ちゃん、さっきの見せないの?」
「・・・ああ、あれね。ほんと愛理ってさぁ・・・ま、いいか」

舞ちゃんはポラロイド式デジカメを取り出すと、さっきの写真を無造作にめぐぅの前に放った。


「・・・お?」

みやびとめぐぅ、2人の視線がテーブルの上に定まった。

「これ・・・」

「ふふん。いっつもあんなに取り澄ました態度のくせに、なんでしゅかこれは。デレデレしちゃって。あーみっともない」

黙っているのをいいことに、舞ちゃんは実に嬉しそうに喋り出す。

「ほら、これなんてどうよ!公衆の面前で、後ろからだっことか!それなんてタイタニックでしゅか?それともあしゅなろはくしょでしゅか?」
「古っ」
「こーんなハレンチな写真が流出したら、軍曹の地位もグラグラに傾いちゃうよね?
ちしゃとも全然いう事聞かなくなったりして。この(自主規制)め!恥を知りなさい(キリッ とか言って?
あのバカしつじも、村上さんみたいな(放送禁止)の指図は受けません!ってなるかもよ?
それが嫌なら、即刻有原の野郎の添い寝係を解任するでしゅ。そして、新しく舞を・・・」


「えー、いいじゃん、この写真!」

お調子にのって、椅子の上によじ登って演説する舞ちゃんを、みやびの声が遮った。


「は?」
「これ、さっき帽子屋さんでよろけた時のでしょ?あはは、こんなんなってたんだー」
「もう、だから言ったでしょ?みやびは不注意なんだから」

あっけに取られる舞ちゃんの目の前で、じつに楽しげなお二人さん。


「ちょ・・・え、舞これ、バラ撒くって言ってんだけど?いいの?」
「いーよ。やればー?」

頬杖をついためぐぅさん、余裕の笑顔で舞ちゃんの脅迫を受け流す。
予想外の展開だったのか、舞ちゃんは俄かにオロオロしだして、すがるような目を私に向けてき

「・・・ケッケッケ。むしろ、寮のみんなに配って回ったっていいよって感じ?」
「あー、そうだね。みやびの顔も可愛く撮れてるみたいだし。何なら私自らやろうか?」
「めぐだっていい顔してるじゃーん。・・・ま、めぐはいつも可愛いけどさ」

どうやら、舞ちゃんの思惑とは正反対に、写真は2人のイチャイチャ燃料となってしまったようだ。
舞ちゃん写真うまいね、なんてみやびに褒められて、舞ちゃんはとても複雑そうなお顔。
ゴシップ誌にありがちな、“熱愛発覚!?”からの交渉を企んでいたのに、むしろ喜ばせてしまうなんて、さすがの天才っこも予想していなかったのだろう。


「なんだよー・・・」

出鼻をくじかれた舞ちゃんは、一気にトーンダウンしてしまった。


「・・・で、でもこんな卑猥な写真」
「んーどこが?普通じゃん?あはは、萩原さんって結構ピュアなんだねえ。いつもあんなに小生意気なくせに」
「舞ちゃんカワイー」

思わぬ方向からのからかい。
舞ちゃんの顔が真っ赤になって、膝の上でそろえていた手がプルプルと震えている。

ケッケッケ、まあ、これは仕方ないよね。

舞ちゃんは頭がいいし、本だってたくさん読んでるから、“こういうこと”に関する知識もたくさんあるんだろう。
だけど、それはあくまで机上のなんとやらであって・・・実際に、幾多の試練を乗り越えてきた2人の、精神的な成熟にかなうはずもない。
私個人としては、もしこれに写ってるのが自分だったら・・・なんて考えると、背筋が凍るような気持ちになる。だから、写真は十分脅迫に使えるように感じる。
だけどもともと大人っぽいめぐぅに、いかにも外の世界を知っちゃってる感満載のみやびのコンビじゃ、女子校育ちの私達の思考なんかお子ちゃま同然なんだろう。

「な・・・なんだよぅ舞のことバカにして」

「んー?してないよ、何いじけてんの」
「うっさいな。大体、舞にはあんなキツいくせに、何で夏焼さんには甘いわけ?
てか、別にうらやましがってないからね!全然、舞とちしゃとの方がラブラブですぅ~」
「ま、舞ちゃん?」

天才ッ子は、想定外のことには弱いらしい。
めぐぅに優しくされてるみやへのヤキモチ、自分とお嬢様ではかもし出せない2人の大人っぽい空気へのヤキモチ。
そういうのがごっちゃごっちゃになって、舞ちゃんの思考回路はショート寸前のようだった。

「も、もういい!舞先帰る!」

ついに耐え切れなくなったのか、舞ちゃんはバッグを乱暴に掴むと、クルッと踵を返した。


「え?写真は?」
「あげましゅ!!」


ドスドスと乱暴な足音。
あっけにとられる私たちを残して、怒りの余波を感じさせる背中が遠ざかっていく。

――あー、いじめすぎてしまった。いや、厳密には今日の黒愛理はたいしたことやらかしてないんだけども。
もう少し、舞ちゃんに加勢してもよかったのかもしれない。

どうしたものかと2人の方を見ると、出しっぱなしの写真を分け合って、バタバタと席を立つところだった。


「めぐ」
「ん」
「あとで」

そんな、会話にもなってないやり取りの後、みやは舞ちゃんとは別方向へと歩いていってしまった。

「愛理、またね」
「え?う、うん」

そう言ったっきり、みやはもう振り返らない。
めぐぅに対してはバイバイもなしだ。

「・・・うちらもいこ、愛理」
「へ?」

そして、今度はそのめぐぅに腕を引かれる。

「萩原さん。追っかけないと」

まったく、すーぐ拗ねるんだから。なんてカラカラ笑いながら言う。

「・・・ごめんね、邪魔して」
「ん?」

めぐぅは目をキョトンとさせて、私を見た。

「だって、みやびとのデートだいなしにしちゃったし。
今さ、みや、気使って別行動にしてくれたんでしょ?なんか・・・」
「ああ、そんなの別に。どーせ明日も会うし。
それより、可愛いとこあんじゃん、萩原さんも」

いじけマイマイ、なんて舞ちゃんが聞いたら激怒しそうなニックネームを口ずさんで、めぐぅは私の数歩前を早足で歩く。

「まー、あの子もまだまだ子供だねぇ。ナマイキな事ばっか言ってくるから、つい忘れちゃうけど」

そんな風につぶやく顔は、なんだかとても嬉しそうで、舞ちゃん本人にも見せてあげたいなぁなんて思った。

「舞ちゃん、どこだろ」

「あー、大丈夫。何となく予想できるから。愛理、ちょっと待っててね。カバン、いいかな」

めぐぅは肩掛けバッグを私の腕にひょいっと引っ掛けると、パタパタ走ってどこかへ行ってしまった。

「ほ?」

何事だろうと私がキョトンとしているうちに、小さい紙袋を持ってすぐに戻ってくる。

「いこ!」

腕を引かれるがままにたどり着いたのは、モールの出入り口ゲート。
このまま出ちゃうのかな、と思ったら、めぐぅは高い門扉の裏側に首を突っ込んだ。


「なーにいじけてんだよっ」

めぐぅの背中越しに、同じ場所に目線をやると、そこには体育座りの舞ちゃんがいた。
うらめしげに、めぐぅの顔を上目に睨みつけて。

「な、なんでしゅか。バカにしにきたんでしゅか」

表情とは裏腹に、声色がどこか嬉しそうなのは隠しきれていない。


「あっそ。そーいうこというなら、これあーげない」

めぐぅは涼しい顔して、さっきの紙袋を軽く振った。

「あ・・・」

途端に香る、イチゴの甘いにおい。
よくよくその袋のパッケージを見ると、私と舞ちゃんが帰りに寄ろうと言っていた、パン屋さんの名前が記されていた。

「限定のイチゴクロワッサンなんだけどなー。焼きたてなんだけどなー。いらないんだー」
「い・・・いらないなんて言ってない!」

思わず立ち上がった舞ちゃん。
バツの悪そうな顔でうつむくのを、めぐぅはあえてスルーして「じゃ、帰るよ」なんて言って舞ちゃんの手を取った。


「・・・子ども扱いしないでよ」

そう言いつつ、その手を振り払ったりはせず、おとなしく歩き出す舞ちゃん。

「これ、もってあげるね!」

このいい感じの風景に混ざりたいと思い、私はクロワッサンの入った紙袋を舞ちゃんの手から自分のほうに手繰り寄せた。


「・・・エヘヘ」
「ケッケッケ」

ここまでされると、もう憎まれ口も出なくなるらしい。
ゲートを出て、電車に乗り込んでからも、2人の手は離れることはなかった。


「あの・・・大学の話とか、聞きたいんだけど。今勉強してるのって・・・」
「んー?私の学部はねぇ・・・」

珍しく、めぐぅの話に素直に聞き入る舞ちゃんは、本当、等身大のあまえんぼうな15歳って感じで可愛かった。

「・・・なんか、めぐ、優しくなったね」

そのうちに、喋りつかれて眠ってしまった舞ちゃんの髪を撫でるめぐぅを見て、ついそんなことを口走ってしまった。

「私はもともと優しいんですぅ・・とかいってw」
「やっぱ、好きな人が近くにいると、心穏やかになったりするものなのかな?」
「んー?」

――あ、何か余計なこと喋りすぎたかも。

「あ、じゃなくてそうじゃなくてぇ、別にみやびとめぐぅがそういうあれっていうんじゃないんだけども」

テンパってる私を見ても、怒るでもなく目を細めるだけ。
何か、余裕を感じる。そう年が離れてるわけでもないんだけど、高校生と大学生って、やっぱり違うのかな、なんて思った。


「まー、さっきの写真だけど。着眼点は良かったよね。
ただね、あれぐらいじゃあ、どーってことないし。みやびなんか逆に喜んでたしね」

まあ、違う日に本気出して尾けられてたらヤバかったかもね、という発言には、あえて突っ込まないでおきましょう。ケッケッケ。


「ふわぁ・・・」
「お?愛理も眠いの?いいよ、着いたら起こすから」

いろいろあったせいか、電車の揺れに身を任せていると、急激に眠気が襲ってきた。


「・・・まだまだ子どもだね、2人とも。とかいってw」

寄りかかっためぐぅの肩はあったかくて安心感を覚える。
めぐぅがケータイを開いて、To みやび と書かれた画面を打ち出すのをぼんやり見ながら、私はいつの間にかまどろんでいた。







リ*・一・#リ<せっかく早く戻ったというのに!誰もいないじゃないの!キーッ!
(執△事;)<あわわ

(o・ⅴ・)<ただいまでしゅ

リ*・一・#リ<もう舞ったら!千聖を仲間はずれにしてフガフガフガ

(o・ⅴ・)・・・

(o・ⅴ・)<一緒にイチゴクロワッサン食べるでしゅ
Σリ*・一・#リ<

サクサク リ*・一・リ (・ⅴ・o)<おいしいねー

スズキサンハァハァ(*若△事) 州*´・ v ・)リ|*‘ヮ‘)|。o(可愛い・・・)



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