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学校帰りの夕暮れ。
歩いていると、向こうから学園の生徒さんが一人歩いてくるのに気付いた。

なかさきちゃんだ!!

その時、僕の心は浮き立った。なかさきちゃんに会えるとは!
あれからずっと、彼女のことをもっと知りたいと思ってたんだ。
仲良くなりたいなと思って。彼女の笑顔も見てみたいし。これはその絶好の機会、だから心が浮き立ったんだ。

暗がりの中を向こうから一人で歩いてきた彼女。
夕闇のなかで見る彼女の整った顔立ちは、透き通るように白く見えた。

どこか北国の田舎町から出てきて学園の寮に入ったのだろうか、って感じのする純朴そうなその顔立ち。
まあ、僕は人のことをとやかくは全く言えないんだけど。田舎者っぽく見えるという意味で。

なかさきちゃんのその表情には、やっぱり引き付けられるものがある。

そして、彼女の何とも言えず幸の薄そうなその雰囲気。
なかさきちゃん、苦労人なんだろうなあ・・・


なーんて、勝手に彼女のキャラをそんな風に想像してしまい、つい可笑しくなって噴き出しそうになる。
勝手にこんなこと思ってるのが真面目な彼女にバレたら思いっきり睨み付けられそう。

僕がなかさきちゃんの姿を認めるとほぼ同時に、彼女も僕のことに気付いたようだ。
すると、彼女の表情はわかりやすく変化した。


すっごく嫌そうな顔・・・


そんな顔されるほど僕は何かしたのだろうか。
あの時のお嬢様とのことがあるからなんだろうけど、そこまでの顔をするほどのことだろうか。

何か僕のこと誤解してるんじゃないか、彼女?
ひょっとして、チャラい男とでも思われてたりして。こんなに硬派な僕なのにそれはないと思う。

もし変な風に誤解されていたらと思うと、誤解されたままっていうのは嫌なので、そこははっきりさせたくて彼女に声を掛けた。

「なかさきちゃん!」

そう声を掛けると、彼女はビクッと体を震わせた。

なんか、なかさきちゃん怯えてる?
ひとりでいるところを男に声を掛けられたのが、そんなにびっくりすることだったのだろうか。

でもやっぱり、この子の表情って、とっても魅力的でかわいいな。
この状況でこんなこと考えているのがバレたら決定的に嫌われそうだから、僕は彼女に対して意識的に善人アピールの笑顔を向けた。

もちろん、なかさきちゃんは僕に対して怯えてなんかはいなかった。
なんとなくそう見えるのは、彼女のその表情に対する先入観にすぎない。

でも、僕のことを決して好意的に思ってもらえていないのは確かのようだ。
僕に対して警戒心を解いていないのはその表情からも明らかだし、僕の呼び掛けに対してもなかさきちゃんの返事はとげとげしかった。

「・・・何か?」

露骨に僕を避けて通り過ぎようとする彼女の行く手を反射的に阻んでしまった。

「ちょっと待って。話しを聞いてよ!」
「こ、困ります。離して下さい!」

離して下さいって、別に僕は彼女のことを掴んだりとかはしてないんだけど。
そんな言い方されたら、まるで僕が女の子にからむ悪い男みたいじゃんか。

もしかして、これはまずい状況に陥っていないか?

客観的に見て、まるで女の子が悪い男に声を掛けられてるみたいに見えるんじゃないか、これ。
それはダメだろ、善意の第三者から最低な男と見られかねない。

現に、通行人のおばさんがまるで不審者でも見るような怖い目付きで僕のことを睨んでいる。
この僕のことが、怯える少女にニヤニヤとした顔でからむ変態男、に見えているのかも?
とんでもない誤解だ。


この誤解された状況を早急に沈静化しなければと思っていると、そこにまた別のひんやりとした冷たい声が僕にかけられた。

「なにしてるんだかんな」

振り向くまでもない。この特徴的な声。
栞菜ちゃんだ。

「栞ちゃん!!」

彼女の登場でとりあえず場の空気が変わった。
周囲の人たちはとりあえずそれぞれの行動に戻って、それ以降周りの目を感じることは無くなったのだ。
僕は栞菜ちゃんに助けられたんだろうか。
それとも、彼女の登場でここから更にやっかいなことになる展開なのだろうか。

「あのな一つ言っておくけど、“栞ちゃん”とかオメーちょっと馴れ馴れしすぎるだろ。置かれてる立場ってものをわきまえろよ。分かった?」
「(何だよそれ・・)わ、わかったよ・・・ じゃあ、栞菜。←これでいい?」
「バカなの、お前? 気安く名前で呼ぶなって言ってるんだけど」
「ちぇっ。細かいんだな有原は」
「有原さん、だろ。上下関係を尊重できない人間は社会に出て苦労するかんな」

いつ彼女が僕より上の立場になったというんだろう。
なんなんだ偉そうに。同い年だろ!何だその上から目線は。
だんだん分かってきたけど、この人ちょっとおかしいでしょ。頭の中どうなってんだ。

・・・って思ったら睨まれた。
また心中を読まれてしまった。サトリ相手っていうのは本当に面倒くさいことこの上ない。

彼女のその表情、完全に僕を上から見下ろしている。
あきれ返ったような口調で栞菜ちゃんが話し始めた。

「オメー、この前は愛理をつけまわしてたかと思えば、次から次へとよくもまあ」
「えっ!? 愛理なの? 私が聞いたのと違うんだけど」
「それも間違ってないよ。こいつ手当たり次第だから。とんでもない男だかんな」
「・・・・そういうデタラメをまるで真実であるかのように発言するのはやめてもらえるかな。栞、有原さん」

反論する僕の態度が気に入らなかったのか、睨んでくる栞菜ちゃん。
そして、彼女は僕の耳元にドスの利いた声で囁く。

「わかってると思うけど、命が惜しいなら俺の嫁には手を出すなよ。あー、でも萩原がいいんだっけ、このドエームが」

意味不明。

俺の嫁って・・・・
なんなんだこの人は。

なるほど。それは確かになかさきちゃんには聞かれたくないでしょうね。
でも、今のはちょっと聞き捨てならないところがあった。

「僕のことはどう言ってもらっても構わないけど、舞ちゃんのことを揶揄するのはやめてくれないかな」
「なんだぁ!? ずいぶんと生意気な口をたたくんだね。女好きのくせに」

女好きとはなんだ! 
こんな硬派な僕に向かって、そんなことを言われるのは心外だ。僕は舞ちゃん一筋なんだ。
そりゃ、確かにお嬢様も可愛くて心を惹かれるけど。それから愛理ちゃんも。あと最近は梨沙子ちゃんも気になっ(ry


僕らのやりとりにもうずっとドン引き顔のなかさきちゃんが栞菜ちゃんに尋ねる

「かんちゃん、この人のことよく知ってるの?」
「知りたくもないんだけどね。なりゆきで」


ツンツンとした表情のなかさきちゃん。やっぱりなんかいいなあ、この子の表情。

なんて、この状況なのにそんなことを思ってしまった。
怒ってる顔なんだけど、やっぱりどうしても怯えている感が見えるように感じられてしまうのは何故なんだろう。
彼女のそんな複雑な表情。こういう表情って男には結構たまらないものがある。

この子は女子校に進んで正解だと思うよ。
共学だったら男子が放っておかないだろう。こんなに可愛くて、こんなにイジりがいのありそうな女の子。
大人気になってしまうんじゃないか、いろいろな意味で。
nkskには(自主規制)を見せたくなる、とか言い出すやつも出てきそう。

なかさきちゃん、小学校は普通の公立校だったんだろうか? どういう感じだったのか、ちょっと興味があるな。
熊井ちゃんの幼馴染なんだっけ、なかさきちゃん。なんとも面白そうじゃあないですか、この子の歩んだ道は。

やっぱり彼女とは仲良くなりたい。僕に怖い顔でなく笑顔を向けてもらいたい。
そして、色々と話しをしてみたいな。
学園生の同学年の人の中で、何となく彼女が一番まともな話しが出来そうな気がするんだから。



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