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「あー、うん。そうだよ。舞が誘ったの」
「ギュフーーーーー!!!!!」

早朝の生徒会室。

朝っぱらから大噴火を繰り返すなっきぃを、舞ちゃんは冷ややかな目で眺めた。


「なっちゃん、何カリカリしてんの。カルシウム足りてないんじゃない」
「怒るに決まってんでしょーが!な、なんで!なんでくくくまい」
「SAYホーオ」
「ホーオ」
「乗るな!」

生徒会に入ったよ!などというラッパー熊井の言う事が信じられず、尋問のためとりあえず生徒会室に連行したなっきぃ。
そこに一人でいた舞ちゃんに事情を説明したところ、予想外の答えが返ってきて、ただいま絶賛キュフキュフ中といったところ。

「な、なんでゆりなちゃんを。生徒会に?信じられない」
「千聖もとても驚いたわ。でも、大きな熊さんと一緒に仕事をするのは、とても楽しそうね」
「おじょじょじょ!」

なっきぃからしてみれば、学生の代表である生徒会に、学園一の奇人が入り込むなど、考えても見なかった事態なのだろう。

変人といえば、例えば栞菜だって相当アレなタイプだとは思う。だけど、やることはきっちりやった上でけじめのついた変態であるからして・・・勉強はできるし、深く知らなければ、まじめで大人しい優等生にも見えるわけで。
熊井ちゃんのように“装う”ことを知らない人とは全く違う。

「どどどうしてこんなことに。嗣永さんだって、空気読んで生徒会仕事には関わらないでいてくれたっていうのに」
「あ、それは違うぜなかさきちゃん!ももはめんどくさがりなだけだぜ!今日のお昼のデザートは桃だぜ!」
「熊井ちゃん、韻を踏むっていうのはそういうことじゃないでしゅ」

「そんなのどうでもいいから!もー、茉麻ちゃん、何とかいってやって!生徒会長でしょ!」
「えっ」

みんなの視線が刺さる。・・・何とかと、言われましても。舞美ちゃんなら、どう答えるのかな・・・


“あはは、まあ、細かい事はどうでもいいじゃないか!それより、走(ry”


――はい、あてにならなかったでした。


「んー、じゃあ、舞ちゃんに聞きたいんだけど」
「うん」

少し考えて、私は舞ちゃんに話を振ることにした。

「熊井ちゃんを生徒会に誘ったのは、舞ちゃんだって言ってたよね?それは、どうして?」
「決まってるじゃん、必要だと思ったからだよ。ダメ?」
「おー・・・」

間をおかず、当然のようにそう答える舞ちゃん。無駄じゃね?その質問。といわんばかりに。
天才で自信家だなんて、世の中にはすごい子がいるもんだと今更ながらしみじみ感じる。舞ちゃんという存在そのものに、説得力があるというか。思いっきりはしょったその答えにも、無条件で納得してしまいそうになる。

「ギュフ!舞ちゃん、これは生徒会存続の危機といっても過言ではないケロ!もっと詳しく理由を!」

だけど、学校でも家でも一緒にいる相手にはその俺様理論は通用しないようだった。

「舞ちゃん。私はね、ゆりなちゃんが嫌いで言ってるんじゃないの。
でも、私たちは守っていかなきゃならないんだから。みぃたんや佐紀先輩、えりこちゃん・・・もっともっと前の先輩たちが作り上げてきた、生徒会を」

生真面目ななっきぃらしい、強い責任感を感じる発言。
私はというと・・・さっきから、言うべき言葉というか、この場を取り繕ういい意見が見つからず、一人で動揺している。
なっきぃの言いたいこともわかる。だけど、熊井ちゃんには熊井ちゃん、舞ちゃんには舞ちゃんの考えがあっての行動だというのも理解している。

だけど、当の舞ちゃんはいつもどおり余裕綽々の態度で、ニヤニヤ笑いを浮かべながらなっきぃをからかう。

「ふふん。なっちゃんってほんと頭かたーい。
転んで頭打ったら、割れるんじゃない?地面の方が」
「なっ・・・!」

怒りでプルプルしつつ、言葉では舞ちゃんにかなわないってわかってるから、口をモゴモゴさせるのが精いっぱい。
負けず嫌いななっきぃ、もうあからさまに涙目になってるから、とりあえず口を挟ませてもらうことにした。


「舞ちゃん、言い過ぎだよー」
「エヘヘ」

まったく・・・私がちょっと叱ると、子供みたいに嬉しそうな顔するんだから。

「ウフフ。舞ったら、茉麻さんのことをお母様みたいにお慕いしているから、怒っていただく事が嬉しいのよね?だからといって、なっきぃをいじめてはだめよ」

すると、援護のつもりなのかなんなのか、お嬢様が思わぬ方向から舞ちゃんを突っつきだした。


「舞ったら、大人ぶっていても、そういうところは可愛らしいのね」
「はぁ!?子ども扱いすんなっていつも言ってるでしょ!ちしゃとのほうが絶対子供!」
「はいはい、ウフフ、そうね。舞のいうとおりね」
「もー!なんだよっちしゃとのくせに!」

おお・・・つええ、お嬢様。
何も考えてないように見えて、人の痛いとこを突いてくる。

岡井さんは無邪気に傷をえぐる天才!という梨沙子の言葉が脳裏をよぎった。

「なかさきちゃん」

すると、今度は熊井ちゃん。
ヘイヨーとかチェキラとか言ってたテンションはどこへやら、今は真顔に戻って、まっすぐになっきぃを見つめている(ただし格好はチャラ熊)。
真面目な顔してると本当に凛々しくて、見た目だけなら剣道部とか、弓道部とか、和装を身につけて行うスポーツを嗜んでそうな雰囲気。
普段が普段だけに、忘れそうになるけれど、やっぱ異質な美人だなーなんて感じる。


「な、なによゆりなちゃん」
「あのさ、本当にこのまま前の生徒会のカラーと同じでいいのかな?
たしかに、去年はバランスよかったってうちも思うよ。生徒側からも先生たちからも信頼されてたし。
だけどね。もう何も改革するとこがないぐらい、完璧だったかって言ったら、それは違うと思う。
生徒会をより善く機能させる方法ををみんなで考え、模索し、実現させていくことこそが、先代の幹部への最大の恩返し且つ、学校や生徒の為に尽力する組織、という理想的な姿へ近づく第一歩なのではないでしょうか」


――いきなり何真面目な事言ってんだ、こいつは。
なっきぃは完全に気圧されて「お、おう」とか言ってるし、舞ちゃんはほら見ろ!って感じになぜか得意気に胸張ってる。


「ウフフ、素敵な生徒会になりそうね、茉麻さん」
「素敵かぁー・・・?」


こんな濃いメンツに囲まれて、私、本当に生徒会長なんてやってけるんだろうか・・・一抹の不安が胸をよぎった。



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