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「じゃ、お先に失礼しますっ」
「あ、みーたん待って!私も行くっお疲れ様です!」

「お疲れ様でーす」
着替えが・・・とか電車が・・・とか喋っている声が遠ざかっていく。
「大変ね。夏休みなのに、補講でもあるのかしら。」
おっとりとつぶやきながら、千聖は丁寧にメッセージを入れている。
一枚一枚にオリジナルの猫のキャラクターを描いていて、きっともらった人は幸せな気持ちになるんだろうな、なんて思った。
せっかくだから私も棒人間みたいなキャラ(ひどい名前で呼ばれてる・・・)を、全部に書き込んでいくことにした。

「じゃあ、舞もそろそろ行くね。」
今日は家族で出かけるんだ、と上機嫌で舞ちゃんが出て行った。
栞菜とえりかちゃんが戻ってこないから、部屋は私と千聖の2人っきりになった。
何も話さないで、黙々と作業に没頭する。
間が持たなくて喋り続けるとか、お互いにそういう気遣いをしないでいいのが心地いい。
沈黙の中で、ちょっとそわそわするような、気持ちが静かに昂ぶっていくような感覚がした。
楽しみな学校行事の前の夜みたいな気持ちだ。


「終わったー!千聖はどう?」
「んー・・・ん」

千聖は良くも悪くも1つのことにすごい集中力を使う。今は私のことなんて見えてないみたいに、写真とにらめっこしている。
「ちーさと。」
顔を近づけて、下から瞳を覗き込んでみた。

「・・・・・ひゃんっ!ど、どうしたの愛理。」
私の顔にピントが合った瞬間、千聖は目を丸くしてマーカーを取り落とした。

「そんなに驚かなくても。私もう終わったけど、あとどれぐらい?」
「あ、あとこの一枚なの。サインを入れたら完成。」
「ちょっと貸して。」

私は千聖のポラを横から奪うと、小さく自分のサインを書きこんだ。
「まあ、愛理ったら。」
「ここに千聖のも入れて。これレアバージョンね。ケッケッケ」
気分が高揚してる。こんないたずら、めったに思いつかない。
後で怒られちゃうかもしれないな。
もう、と困った顔で笑いながら、千聖は最後の1枚を完成させた。

「じゃあ、行こう!」
「ええ。」

外へ出ると、強烈な日差しで一瞬目がくらんだ。
「暑いねー・・・お昼だもんね。」
「嫌だわ。また日焼けしちゃう。」
千聖は日傘を広げると、「入る?」と差し出してきた。
「ふはっ。お邪魔しまーす。」
日傘で相合傘なんて聞いたことない。千聖も同じことを思ったのか、二人同時に笑い出した。

「楽しみだね。いろいろ見ようね。あと、着いたらご飯も食べよう。」
「ええ。」

改札をくぐって、少し混み始めた電車に乗り込む。
座席は空いてなかったけれど窓際を確保できたから、到着駅までまったりと外を眺めて過ごすことにした。
私も千聖も、自分から手を繋いだり腕を絡めたりすることがあんまりない。
キュートはみんなそういうスキンシップが好きだし、別に私も嫌いなわけじゃないけど、2人だけになるとこういう共通点がいろいろ見えてきて嬉しい。
まあでも、私達はそれどころじゃないスキンシップを・・・あれは勉強勉強!

「愛理、もうすぐ着くわ。私、おなかがすいちゃった。」
「私もだよー・・・買い物するし、どこか安めのレストランがあるといいんだけど。」


************


「すみませーん、このミラノ風ドリアを追加で。あと、焼肉サラダ」
「みぃたん・・・・さっきハンバーグ食べてなかった?」
「まあいいじゃないか!それより、本当にここに来るの?愛理と千聖。」
「あいりんがお金持ちでも、そんなに手持ちはないと思うんだよね。中学生だし。
だから、駅から一番近くて安いとこ選ぶはず・・・ってみぃたん聞いてる?ケータイいじってるし。」
「あっごめん聞いてなかった!それよりなっきぃ!後でここの店行ってみたいな。この服可愛くない?」
「モッサー・・・こっちのお店にしようよぅ。」
「何だもっさーって!なっきぃ、愛理たち来なかったらドリンクバーでガーッするからねガーッ!」



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