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「ご苦労様でしたー・・・」

高級野菜専門の宅配便を門扉で見送り、屋敷に一歩足を踏み入れたところで、今日の食材を確認する。
良く熟れたトマト、色艶の美しいパプリカ、形の整ったズッキーニ。大ぶりの茸。
あと・・・まるまる太ったナス、か。

リ*・一・#リ<ナスは入れないでと言ったはずでしょう!命令よ!

お嬢様がキーッ!と怒り、はぐれ悪魔超人コンビが僕を言葉の暴力で叩きのめす様が脳裏をよぎり、キリキリと胃が痛む。


「うぅ・・・」

普段は可憐でお優しいお嬢様はともかく、あの2人。せっかくあんな可愛い顔に生まれてきたっていうのに、絶対に間違ってる。
一体、どんな人生を送っていたらああいう性格になるっていうんだ。
罵倒美少女とか、その筋の人々には需要があるかもしれないけれど・・・生憎僕は、ヘタレなだけで℃Mではないのだ。
もっとこう、女の子って言うのは、おしとやかで清楚に・・そう、つまり、鈴


「・・・やめよう」

僕の脳内に侵入し、勝手に心を読み取り文句をつけてくるあの方が、近くにいたらたまったもんじゃない。
それより、献立だ献立。ナスの処遇を考えなければ。

村上さん曰く、千聖お嬢様は、形が残っていない状態なら、最近はナスも食べてくださるらしいから・・・そうだな、料理長がチキンソテーを作ると言っていたから、ラタトゥイユを作って一緒に出してもらおうか。ナスはペーストにすればいい。
丁度、作ってみたいのがクッ○パッドに・・・


「ん?」


ぼーっと考え事をしつつ、ふと垣根に目をやると、外に誰か佇んでいるのが見えた。
背格好からして、男のようだ。

林道に繋がっているとはいえ、メインストリートからはだいぶ遠い位置にあるこの屋敷に、アポなしのお客様がくるというのはまず考えられない。
まして、ここは美少女だらけの夢の国。変質者ならば、騎士(僕)が退治しなければ!

ククク…学生時代の体育の授業では基本的にサンドバッグ、実験台、人数合わせとして定評があったこの僕の実力を、ついに発揮する時が来たようだな。

防犯用の警棒に手をかけながら、ゆっくりと門扉から外へ顔を覗かせ、垣根の前にいる人物を見る。



――あれ?


そこにいたのは、学生服の男だった。
僕より若干背が高く、どことなく人が良さそうな顔をしている。
学ランのボタンを開けたりしてるが、別に悪い部類の人間じゃないだろう。年頃らしく、適度に硬派ぶってるフツーの男子。そんな印象を受けた。


とはいえ、女の園をしげしげと覗くという行為は感心できない。
相手が年下だと踏んだこともあり、僕は勇ましくその男へ歩み寄って行った。


「そこの君・・・何か、御用でしょうかァ?」
「えっ」


――はい、声裏返りました。うるさいよ、緊張してたんだよちくしょうめ。

こんな場面、あのはぐれ(ryに目撃されたら、向こう1年間はネタにされるだろう。
再現VTRとか作って、夕飯の時間に流されたりして。それを見て、ケッケッケと笑う僕の鈴・・・


「うぅ・・・」
「あのー」

僕が妄想の世界で痛めつけられているうちに、その少年はこっちに小走りで近寄ってきていた。

「大丈夫ですか?」
「お気遣いなく。それより」
「ああ。・・・失礼しました。決して怪しいものではありません。これ、生徒手帳です。
この先のバス停を利用して、通学しています。名前は・・・」

言われなくても生徒手帳を提示し、落ち着いて自分の身分を証明してみせる。
この年頃の男にしては、随分冷静じゃないか。それに、親しみやすい、というか話しかけやすそうにも見えるし、何ていうか友達多そうな奴だな。

「ここは住居なので、あまり外から観察されるのはちょっと」
「はい、すみませんでした。
いろいろと考え事をしていたもので、気がついたら林道のいつもの道を外れてしまって。
で、このまま歩いたらどこに繋がるのか気になって進んだんですけど、突き当たりにこの邸宅が。
こんなすごい家、一体どんな人が住んでいらっしゃるのかな、なんて考えてついつい見入ってしまったんです
僕の知り合いの中にも、かなりのお嬢様が一人いらっしゃるので、彼女の暮らしなんかも妄想してしまって」
「なるほど」


確かに、こんな大きいレンガ造りの瀟洒な建造物、滅多にお目にかかれるもんじゃない。気持ちはわかるぞ、少年よ。


「・・・まあ、たしかに豪華な造りの邸宅ではありますが、意外と、皆様普通の暮らしをしているんですよ」
「そうなんですか?」


なかなか、素直なリアクションを返してくれるものだから、こっちもスラスラと口が滑る(もちろん、執事としてあるまじきことは喋ってませんよ!)。
少年も少年で、実は現在片思いをしていて・・・なんて話を打ち明けてくれたり、なんというか、学生時代の後輩と喋ってるような、純粋に楽しい会話っていうのを思い出した。



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