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そうか、春からはお姉ちゃんも大学生か。
高校生のお姉ちゃんに会えるのもあとちょっと、たったの3日間なんだ。

「高校生活はあと3日間って、さっき仰いましたよね。卒業式が3日後なんですか」
「はい、そうです」


ちょっと間をおいて、お姉ちゃんが意を決したように僕に語りかけた。

「あの・・・・ その日、お時間の都合はつけられますか?」

えっ!?
それって、卒業式の日に僕に会って欲しいってことでしょうか!

僕にそんなこと聞いてくるなんて、やっぱりお姉ちゃん僕のことをそんなに・・・

わかりました、都合は必ずつけます!
その日は普通に学校の授業がありますけど、お姉ちゃんがそう言ってくれるなら、もちろん授業よりも大切な卒業式という大事な儀式を最優先しますから!

卒業式の日にお姉ちゃんと会う(2人っきりでだったりして!)。
そのことの意味を考えると、これから3日間僕は普通に過ごすことが出来るのだろうか。夜も眠れなくなりそう。
ひょっとして、その日は僕にとっても記念すべき日になったりして!大人の階段を昇(ry


ところが、話しはここからちょっと変な方向に展開し始めるのだった。


「卒業式の日は、ぜひ彼女に会いに行ってあげて欲しいなと」


彼女? ・・・なーんだ、お姉ちゃんじゃないのか。

って、ちょっと待って?

彼女って誰だろう? 僕に会ってほしいってことは、僕のことを知っている人が学園にいるのか?
学園の卒業生の人で僕のことをそんな風に思ってる人がいるなんて! ! 
僕はもう今にも舞い上がりそうになる気持ちをかろうじて抑えていた。
僕には思い当たる人などいないから、やっぱり僕の知らない人ってことか。
でも、あの学園の上級生なんだから、きっと清楚で美しいお姉さんに違いない。いったいどんな人なんだろうか。

思いがけないことを聞かされて、ちょっと困惑した表情を浮かべていたのかもしれない。
そんな僕にお姉ちゃんが説得するように言葉に力を込めた。

「最近、あなたのことをよく言ってるから。それは本当に嬉しそうに。
ぜひ会ってあげて下さい。その日が2人にとって特別の日になるように」


「あなたが来てくれたら、きっと喜びますよ、桃子」



・・・・はい??


いま、桃子って言いました??

卒業式で僕に会いに行って欲しい人が桃子さん?

すみませんお姉ちゃん、なに言ってるのかちょっとわかんないんですが。
何故そこで桃子さんの名前が出てくるのだろう。

どうして僕が卒業式で桃子さんに会いに行くべきなのだろう?
全く予想もしていなかったお名前が登場したことに僕は混乱を隠せなかった。
何だそれ、どういうことなんでしょうか。全然意味がわからないです。

お姉ちゃんはいたって真面目な顔で、僕に話しを続けてくれる。

「桃子が他人のことを楽しそうに話してくれるなんて、とても珍しいことなので驚きました。昔の彼女からは想像もできなくて」
「やっぱり私は鈍いんですね。今まで全く知りませんでした。桃子にそんな人がいたなんて」


・・・・・・

僕はもうずっと絶句してしまう。
何かお姉ちゃんは、ものすごい勘違いをされているのではないでしょうか。
妄想の得意な僕でさえも、僕に対してそんな好意的な桃子さんなど全く想像もつかないんですが。

お姉ちゃんは自分で言ったことに自分の中で盛り上がって納得しているようで、したり顔で頷く。

「人とつながることの温かさ、それに彼女もやっと気付いたんでしょうね」


そこで僕に笑顔を向けてくれたお姉ちゃん。
何か自分お一人で盛り上がってますけど、その情報は完全に間違ってますよ。
どこからそのような重大な勘違いをされてしまったのだろう。


ひょっとして・・・・ 
これは桃子さんの罠なんじゃないだろうか。

あぁ、なるほど。
分かった。きっとそうだ。間違いない。

これを聞いてノコノコと卒業式までやってきた僕を大笑いするつもりなんだ。
そう考えると、いかにも桃子さん(andもぉ軍団)のやりそうなことだ。
そのためにお姉ちゃんなんていう超大物まで使って・・・ さすが軍団長、スケールが大きい。
なんて、ちょっと感心してしまった。


そんな疑心暗鬼になっている僕の心の中と対照的に、あくまでも爽やか笑顔のお姉ちゃん。

何か思い出したように、あ、そうだ!って感じで手を叩いたお姉ちゃん。
とても楽しそうな表情で僕に教えてくれたこと、それはとても意外性のあふれる内容だった。

「あぁ見えて、桃子は意外と女の子らしいところもあるんですよ。
デートではメリーゴーランドにお姫様抱っこをして乗せてもらいたいそうですから」


www
なんですかそれw 桃子さん面白いなあ。そんな乙女チックなこと考えてるんだw 
とても面白いことを聞いた。
これは使えるかもしれない、とほくそ笑む。


さすがのお姉ちゃんも、これは今伝える必要がない情報だと気付いたのか、そこでまた表情が凛々しい顔に切り替わった。
そして咳払いをひとつ。

「彼女の想いに応えてあげてください」

「式に出席していただく事は無理ですけど、桃子の高校生活の最後の日を見送ってもらえないでしょうか」


あくまでも真面目な顔のお姉ちゃん。

しかし、どこがどうなれば、そういうことになるのだろう。
あの桃子さんが僕のことをそんな風に思ってるなんて、全く持ってありえない。

お姉ちゃんのお願いでもあるし、まぁ桃子さんの卒業をお祝いしてあげたいというのもやぶさかではないのですが・・・


でも、やっぱりこれは僕をハメようとしている悪ふざけとしか思えない。
真剣な表情のお姉ちゃんのお願いを断るのは忸怩たる思いですが、君子危うきに近寄らず、って言うじゃないですか。


「ごめんなさい。その日は普通に学校があるので卒業式には伺うことが出来ないです。申し訳ありません」
「そうですか・・・」


2人の間に沈黙が流れる。

お姉ちゃんが立ち止まった。
ここから林道を歩いていくお姉ちゃんとはここでお別れ。

そう、ここでお別れだ。


「それでは、わたしはこっちなので」

お姉ちゃんは僕に背を向ける前に、最後に微笑を向けてくれた。

「はい、またいつか・・・」

いつかまた会えますよね!
そう言おうとしたけれど、言葉が出てこなかった。


林道を歩いて行くその凛とした後ろ姿、僕は決して忘れない。
僕が学園の制服姿のお姉ちゃんを見たのは、この時が最後になったのだ。



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