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「わぁ~、とっても似合うかんな♪(棒)」
「大人の男の色気が溢れて止まらないって感じでしゅ(棒)」

天使のような笑顔、とはこのことを言うんだろう。
僕を口々に褒め称えるのは、エキゾチックな大人びた美貌の持ち主と、気が強そうな大きな瞳の女の子。

普通ならば、こんな超絶美少女2人組にちやほやされたら舞い上がってしまうところだが、如何せん、僕は知っている。
この可愛い可愛い仮面の被っている“中の人達”は、とんでもない魔王だということを。


「ねえねえ、何とかいったらどうでしゅか?」
「はあ・・・」
「あたしたちが選んだお洋服、気に入らないかんな?」
「いや、気にいるとかそういう問題じゃ・・・」


先ほど僕の部屋に乱入し、“さっさと着替えんかいワレボケコラ(以下自主規制)”とか言いながら投げつけてきたこの服。
地獄の門番のような形相で見守られ、胃を押さえながら袖を通したのは、サンタクロースの衣装だった。


「ぷぷっ、本当によく似合ってる(笑)」
「本当に、その貧弱・・・いやスレンダーな体にぴったりだかんな(笑)」
「さっきから語尾になんかついてますけど・・・。いや、それより、なんで僕がサンタの仮装を?」
「決まってるじゃん。今日はクリスマスパーティーだよ?」
「それは知っていますが・・・」


萩原さんの言うとおり、本日は寮生の皆さんとお嬢様で、クリスマスパーティーを行うことになっている。
今頃、お嬢様たちは和気藹々とお部屋の飾りつけをなさっていることだろう。

だが、僕は料理長と一緒に、調理を担当するはずだ。サンタ役は、他にいるんじゃないのか?

「あのー、僕、ケーキのデコレーションが終わってないので、そろそろ調理場に・・・」
「あ、それはえりかちゃんがやるから。それより」

有原さんはスッと目を細め、いつもの小悪魔的な笑みを浮かべた。脳に危険信号、胃に鈍痛が迸る。

「うっ」
「なんだオメー、また胃痛か。体調管理は執事として云々」
「きょじゃくたいしゅちゅでしゅね。そんなんでちしゃとのお役に立てると思ってるんでしゅか、このヘタレめ」


――くそー、言いたい放題!誰のせいだと思ってるんだ、全く!


「ま、それはそうと。・・・実は執事さん、うちらサプライズを計画してるんだかんな」
「サプライズ?」
「そうでしゅ」


ふっふっふ。と顔を見合わせて笑う2人。
こりゃ、ロクでもないこと考えてるな。大方、サプライズというより悪質なドッキリなんだろう。
サンタの格好をした変質者(僕)が室内に侵入、怯え震える鈴木さんと千聖お嬢様を庇うように立ちはだかる、怒りの鬼軍曹メイド・・・。向けられた銃口に怯むことなく、手のひらでたやすく銃弾を止め、吐き捨てる。


(夢羅神)<パパとママの愛情が足りなかったのか、貴様?


「む、無理です!!」
「オメー、またくだらないこと考えてんだろ。ていうか内容聞く前に拒否とか、執事としてどーなん?まるでうちらが極悪人みたいじゃんか」
「なっちゃん以上のヘタレでしゅね、まったく」

どの口がそんなことを言うんだ!

昨日だって、僕の大切にとっておいた高級プリンをプッ○ンプリンと勝手に交換して食う、パソコンのデスクトップにブラクラを仕込む、眉毛がムカつくとかいって剃られそうになるなど、僕の胃をギュゥウッと締め上げるような行為をやらかしてくれた。

そんな実績(?)があるにもかかわらず、僕が自分たちを信用すると思っている思考回路・・・まったくわからない。


「でも、サプライズが成功したら、愛理の笑顔が見れるかもしれないよ?」
「あばばばば」

い、いきなり僕の天使の名前を出すのはやめたまえ!・・・でも、鈴木さんの笑顔か。イイ・・・。
さすがはぐれ悪魔超人コンビ、僕を揺さぶるエッセンスがわかっているというわけだ。僕の挙動不審な態度で、これは使えると思ったのだろう、猛攻を仕掛けてくる。


「サンタ服から覗く、たくましい上腕ニ頭筋に愛理もホレボレかも?」
「・・・さっき貧弱て言ってたじゃないですか」
「部屋に飾るお人形がほしいって言ってたから、オメーブロンズ像でも用意しろよ」
「どうやって持ち運ぶんですか、それ!」

僕の反論を受け、段々と顔に苛立ちが現れて来る悪魔コンビ。

「チッ・・・理屈っぽい男だな」
「そういう態度は女子に嫌われるかんな。わかってねえな、オメー」
「ふ・・ふん。お2人に嫌われたって、別に僕は・・・」
「あ、そーいえば愛理も言ってたような気がするでしゅね。何でも率先してやる、爽やかな笑顔の人が好きって」

「ヨッシャ!いってまいります!」


僕は自分に出来うる限りの、爽やかスマイルを浮かべて廊下を出た。・・・ああ、我ながら単純!

*****

有原さんの話だと、本日のパーティ会場はお嬢様のお部屋らしい。
で、出窓の近くの外壁に縄梯子をかけておいたから、それを使って部屋に入るように、と。

クックック・・・学生時代の体育では(ryの僕の実力を見せ付ける時が来たようだな・・・。
冷たい風が吹きすさぶこの季節、サンタ服1枚じゃかなり寒い。しかし、鈴木さんやお嬢様、寮の皆さんの笑顔のためだ。一歩一歩梯子を踏みしめ、お嬢様のお部屋の出窓を目指す。


“ウフフフ、なっきぃのスカート、可愛らしいわ”
“愛理ったら、またそのダジャレー?キュフフ”
“舞美ちゃーん、そっちのお皿とってー”


近づくごとに聞こえてくる、美少女たちのキャッキャウフフなはしゃぎ声。
でへへと笑いながら、もう出窓はすぐそこだ。

待っててください、鈴木さん(とお嬢様と、皆さん)。今まいります、貴女のサンタクロースが・・・


もう1歩踏ん張って、ついに顔全体をにょきっと覗かせる。


「あ・・・れ・・・」


しかし、僕には室内の様子が全く見えなかった。

なぜなら大きな出窓のその向こうには、腕組みをしたメイド服の仁王様が立っていらっしゃったから。

「む・・・夢羅神・・・」
「この、℃変態がー!!」

トレードマークの竹箒を振りかざす、夢・・いや、村上さん。


「おわああ」

その形相はさながら修羅の国の番人、世紀末救世主、男塾塾長・・・

僕のようなモヤシっこがかなうはずもなく、その迫力に圧倒され、ついロープから手を離してしまった。


「あーれ―――」

まさか、こんなところで人生が終わってしまうとは・・・ああ、今までの人生が頭をかけめぐる。


“あだ名を考えたでしゅ。今日から“蚊”って呼んでやるでしゅ”
“あの痛愛理チャリ、本人に見せといてやったかんな。・・・なんだオメー、そのナメクジのような視線は”
“1分以内にデコレーションケーキ作れ”
“何か面白いことやれ”
“(自主規制)”
“(自主規制)”


――なんだこの走馬灯は!僕の人生って、一体・・・


ドサッ

「うぐっ」


背中からボスンと地面・・・いや、もっとふわふわしたものの上に落下する。
どうやら御他界は免れたようだ。僕の体は、白いふわふわの物体の上にあった。

「雲・・・?」
「ちしゃとのパパ、っていうか舞の義父のグループ会社が開発した、超低反発マットレスでしゅ。被験者乙でしゅ」
「その様子だと、怪我1つなかったようだかんな。残念・・・いや、安心したかんな」

聞きなれたでしゅましゅ言葉と、だかんな言葉。
顔を上げると、ミニスカサンタコスの2人が僕の顔を覗き込んでいた。
――正直めちゃくちゃ可愛い。スカートから覗く、若い膝小僧・・・いや、でもなんだこれは!


「あのー・・・」
「「はい、サプライズ成功!」」


2人の声が重なると同時に、頭上の出窓からも拍手が落ちてきた。


「あはは、見事な落ちっぷり!脅かしがいがあるわー、とかいってw」
「ウフフフフ、本当にお怪我はないかしら?私ウフフフフ心配ウフフウフフ」


「あの・・・これはいったい・・・」


呆然とする僕を尻目に、みんなが楽しそうに笑っている。
美少女たちの嬌声。素晴らしい。しかしわけがわからない。


「・・・サプライズをやるって話ではなかったですか」
「だから、今びっくりしたでしょ?・・・というわけで、バカ執事にサプライズでしゅ!ほーら、愛理ちゃんの笑顔が見られたじゃないでしゅか。フゥー!」

――ああ、そういうことか!やられた!

僕がお屋敷の皆さんに・・・と完全に思い込んでいたが、最初からターゲットは僕だったのか。完全にだまされた。


“ケッケッケッケ、お見事でしたぁ”

たしかに、窓から僕を見下ろす鈴木さんは笑っている。
可愛い八重歯。独特の笑い声。それが僕を見て齎されたものだというのは、素直に嬉しい。
だが、一体なぜこんなことを。


説明を求めようとはぐれ(ryに視線をを送ると、即睨み返されてしまう。

「なんでしゅか、舞たちが幸せを運んで来たらいけないっていうんでしゅか」
「いや・・・」

その拗ねたような口調で判る。ああ・・・これは、純粋に親切でやってくれたことなんだろうな、と。


「ふっふっふ」
「なんでしゅかその笑いは」
「いーえ、ただ、思ったんです。・・・無邪気な天使からの贈り物。素敵だなあと」

僕は厚い雲に覆われた空を見上げた。

「お2人からのサプライズ、嬉しかったです。ほら・・・今夜、雪が降りますよ。
きっと、聖夜の奇跡が優しい貴女方を・・・」
「きもおおおお」
「オエエエエ」

僕のキメぜりふは、2人からの顔面ケーキによって封じられた。

「ケッ、余計な事しちゃったでしゅ」
「オメー、二度とこんなオイシイ思いは出来ると思うなよ。この(自主規制)が」


――あはは、胃が痛いでおじゃる。
しかし、これでいいんだ。はぐれ悪魔超人の名に恥じない、見事な顔面ケーキであったぞ。鼻までふさがって、呼吸もままならない。

おまけに、いいかげん体も冷えてきた。
顔も洗わなきゃならないし・・・と僕は体を起こそうとした。


「・・・あれ?あれ?」

――おかしい。もがけばもがくほど、その白いマットはどんどん沈んでいく。なんだこれ。

「・・・あ、言い忘れた。そのマットでしゅけど。海外の機密部隊からの発注で作られた、蟻地獄XXXという製品らしいでしゅ」
「せいぜいあがくんだかんな。そこがオメーの墓場となるんだかんな」

ショ、ションナ!

「待っていなさい!今、執事長を呼んでくるわ」
「ケッケッケ、今めぐぅがそちらに行くそうですよ~、寒いけれど、辛抱なさってくださいねぇ」

ヤ、ヤメテー!!


真・天使ズのお気遣いにより派遣されたお屋敷スタッフに引っ張り上げられお説教をくらうまでの間、僕はその白い地獄でもがき続けたのだった・・・。


(;執△事)<メリー、クルシミマス・・・




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