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我が学園の前生徒会長、矢島舞美はとんでもない美人である。
毎日のように見ていても見飽きないぐらい、超整った顔。
黙っていれば少し近寄りがたく、でも話してみると℃天然な人。
こんな稀有なキャラクターは地球上の何処を探しても他に見つからないんじゃないか・・・そう思っていたのだけれど。


“ソイヤー”
“トイヤー”
“ウリャオイ”
“ウリャオイ”


大きな庭のど真ん中、妙な掛け声を繰り出しながら、お餅をついている男性、2人。


「腰が入ってないんだよ、腰が!」

腰に手を当て、その2人に激を飛ばす男性、一人。


「あはは、若くて可愛いお客さんが来てくれたから、みんな張り切っちゃってるみたい。
明日全員ギックリ腰になってたりして。とかいってw」
「あ、あはは・・・キュフゥ・・・」
「舞美、そろそろ買出しから戻ってくると思うけれど・・・お待たせしちゃって、ごめんなさいね」

上品なお味の緑茶に口をつけつつ、私のお相手をしてくれる女性、一人。

そんな中で、私は一人挙動不審になっていた。
アウェーな状況だから、というだけではなく、とても不思議な状況におかれているから。
というのも、皆様、みぃたんと全く同じ顔をしているのである。あの超絶美形フェイスが、他に4人も、ですよ!

親子兄弟の顔が似ているというのはよくある話だけど、夫婦の顔まで・・・。よく見れば、ペットの大型犬も小型犬も同じようなキリリ顔だ。

1月2日。私は今、矢島家にお邪魔している。
年始の挨拶で帰省中のみぃたんに電話を掛けたところ、「来ない?」と誘われた。
家にいれば姉と妹からパシられ、パパとママからは受験勉強のプレッシャーをかけまくられるような状況だから、私は喜び勇んでここへ来たというわけだ。

キュフフ・・・家から2時間半の距離も、愛しきみぃたんのためならなんのその。

千聖お嬢様は言わずもがな、愛理も相当なお嬢様だけれど、私の庶民センサーは、バッチリ反応している。みぃたんも、かなりのアレですぜ、と。

その直感はズバリ的中し、初めて訪れたみぃたんのお家はなかなかの豪邸で・・・前述の通り、ご家族も私の予想をはるかに上回るキャラクター揃いなのであった。


「なっきぃちゃん、お茶、お口に合わない?あまりすすんでいないようだけれど」
「あ、いえそんなことは・・・じゃ、じゃああの、おかわりいただけますか?キュフフ」
「はい、よろこんで。お蜜柑はいかが?親戚がたくさん送って来てね。なっきぃちゃんの大好物なのでしょう?舞美が言っていたわ」

――あのー、もう5杯目なんですけど、おばさま・・・。蜜柑は3個目なんですけど、おばさま・・・。水分×水分で、おなかがたぽんたぽんになってきた。しかし、この爽やかな笑顔に見張られては、無限おかわり地獄を抜け出すことができない。


「ただいまー!お兄ちゃん、手伝ってー!」


そのうちに、よく通る大きな声が、玄関の方から聞こえてきた。
バタバタという元気な足音とともに、リビングに入ってきたのは、待ち焦がれた大型犬・・・もとい、みぃたん。


「ごめんね、なっきぃ遅くなって!すごいねー?」
「え?何が?」

「あー、蜜柑食べてる!私もいい?あはは、これがほんとの・・・なんだっけ、まあいっか!とかいってw」

相変わらず、人の話を聞かない・・・。というか、何を言ってるのかわからない。


「なっきぃ来てくれるっていうから、お雑煮足りないかなって思って、買出しに行ってたんだよねー」
「そうなの?キュフフ、お気遣いいただいて」

蜜柑を何房か一気に口に放り込みながら、みぃたんはガサガサとお買い物袋をまさぐる。


「えっとね・・・大根5本、にんじん3本、鶏肉600g!あと、御節の桶も追加で買っといた!」
「ちょ、ちょっと買いすぎじゃない?」

さすがにみぃたんママから突っ込みが入るも、いつもの大型犬スマイルでそれは受け流される。

「大丈夫、なっきぃはいっぱい食べるからねっ」
「ちょ、おま」
「ね!!」
「・・・・・・はい。キュフゥ・・・」


ここでフォローが入ればいいものの、じゃあいっか!なんて同じ笑顔で笑うお母様。ああ・・・お雑煮って、また水分・・・今日は20分おきにトイレコースケロね・・・キュフフ


「いきなり誘ってごめんね、なっきぃ」
「ううん、暇してたし。こちらこそ、家族の団欒の場にお邪魔しちゃって。キュフフ、皆さん、みぃたんそっくりで優しくて(天然で)・・・いい御家族だねっ」


みぃたんママがお雑煮を作っている間、ペットの小型犬ちゃんを膝に乗せつつみぃたんとお喋り。
外が寒かったからか、まだコートを着っぱなしのみぃたん。なのにいつもどおり汗はかいているという不思議な状況。


「あはは、嬉しいな、そう言ってもらえて。自慢の家族なんだよ!
でもー・・・3が日過ぎて寮に戻れば会えるのに、少し会わないだけで何かみんなが恋しくなっちゃった」
「ん?みんなって・・・」


「「「ハッピーニューイヤー!!」」」

突然、背後から元気な声。


「・・・えーっ!!?」

そこにいたのは、えりかちゃん、栞ちゃん、舞ちゃんの3人組。
しかも、どういうわけか・・・


「何で、制服・・・」


もう卒業してるっていうのに、えりかちゃんは高等部の制服を着ていた。懐かしいお姿に、タイムスリップでもしちゃったような錯覚を覚える。
しかも、栞ちゃん、舞ちゃんも同様に制服で・・・一体どうなっているんだろう。登校日、じゃないよね?


「・・・あー、そうか!そうだよね、ごめんなっきぃ!」
「へ?」

あっけに取られる私をよそに、みぃたんもおもむろにコートを脱いだ。
予想通り、下には青リボンの制服。


「えー、なっちゃん空気読めてなーい」
「てか、舞美ちゃん、なっきぃに言い忘れてたでしょ!」

「え?え?」

話が読めない。
こういう時は・・・とえりかちゃんを見ると、苦笑しながら教えてくれた。

「今日、制服パーティーやろうって舞美が言ったから、ウチら乗っかったんだよ」
「そ。ちしゃとと愛理は遠方の親戚を訪ねるから、無理だったけど」
「はあ!?」
「あはは・・・ごめんごめん、言ったつもりになってた!」
「ってか、私、みんなが来ることすら知らなかったんだけど・・・」

私の脳裏に、茉麻ちゃん生徒会長就任騒動が思い浮かぶ。
あの時も、そうだ。みぃたんが伝えてなかったんだっけ。前日まで、茉麻ちゃんに・・・


「もー頼むよ舞美ちゃん!なっちゃんぼっちみたいじゃーん。フフフフ」
「舞ちゃん、笑いが抑えられてないかんな。・・まあ、舞美ちゃんのそういうとこも可愛いんだけどね、ジュルリ」

新年から通常営業のはぐれ何とかコンビと、何も悪くないのに「ごめんね、なっきぃ」とか生真面目に謝ってくれるえりかちゃん。・・・いいんだけどね、慣れっこだし、これ系は。

「まったく、舞美ったら!
ほら、なっきぃちゃんには舞美の制服のスペアを着てもらって、ね?」
「そうだね!じゃあなっきぃ、早速着替えようか!ガーッ!」
「ギャー!!」

みぃたんはおばさまから制服を受け取ると、思いっきり私のロングスカートをたくしあげた。
餅つきを終え、同じ空間でくつろいでいた舞美ブラザーズが、思いっきり甘酒を噴き出す。


「み、見てない!黒パンスト!」
「考え事してたから問題ない!毛糸のパンツ!」
「ギュフー!!」


見てるんじゃん!ああ、やっぱり私ってこういう運命・・・


「ま、舞美!」
「あー、もう、お兄ちゃんたちったら、なっきぃが着替えるんだから廊下出ててよー。シッシッ」


ああ・・・おなじみのこのパターン。もう笑うしかない。

「あはは、やっぱり制服はいいねー!懐かしいなあ。ね、なっきぃ?」
「・・・いや、私まだ現役だし」
「まあ、細かいことはどうでもいいじゃないか!それより、みんなで踊ろう!」
「お姉ちゃん、意味わからないんだけど」

みんな集まってるからテンションが上がってるのか、舞美ちゃんはニコニコ顔で、手にしたリモコンをピッと押した。
途端に流れ出す、渋いベースとギターの前奏。これって・・・。


「はいいくよ、栞菜!!」
「えっ!ま、まっさらブルージーンズ!」


栞ちゃんの叫びを合図に、全員いっせいに両腕をぶんぶん回して踊り出す。あのスカした態度の舞ちゃんさえ、つられて不本意そうな顔で。

新年早々、みぃたんの謎のカリスマ性が発動したみたいだ。・・・まったく、どんな大学生活を送っているのか考えるだけで恐ろしくなる。

「後でお嬢様と愛理にも見せてあげよう!お父さん、ちゃんと撮ってね!」
「マーイミ!オイッ!マーイミッ!オイッ!」


――あれ?あれ?この感じ・・・何だか覚えがある。


千聖お嬢様がゴスロリで・・・お兄さんたちがヨッシャイクゾ(ryで・・・あれ?なんだっけ、それ・・・(http://www43.atwiki.jp/chisato_ojosama/pages/82.html


「なっきぃ、笑顔!」
「は、はい!キュフフ!まーっさらぴんのブルージーンズ♪」

ああ、やっぱり今年もみぃたんのペース・・・。
満員のお客さん(4人+犬)を前に、笑顔のみぃたんと困惑気味の私たちは、正月早々からラミラミをかます羽目になったのだった。


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