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「・・・同性同士で、お友達以外の関係というのは、どのようなものがあるのかしら?」

放課後の生徒会定例会議。
雑談中、千聖お嬢様がふと発した言葉で、沈黙が流れる。
私も一瞬何のことだかわからなかったけれど、そういうことかと思い当たって、ニヤリと笑ってしまった。

「ケッケッケ」

愛理も察したらしく、いつもの個性的な笑い声を漏らしている。


――告白されたな、お嬢様。
すごいな。この超お嬢様に、そんな大胆なことをする生徒がいるとは。
少し前までは、見えざる力(というか妄想)で、ある種恐れられていたお嬢様なのに、このぽわぽわしたキャラクターのおかげなのか、今はどちらかというと、慕われ関心を持たれる存在になっているみたいだ。


「んー・・・例えばだけどぉ、同性でも、恋人同士っていうのはあるんじゃない?」

みんながちょっと言いよどんでいる中、私のベイビーちゃんこと梨沙子が、髪の毛をいじくりながらつぶやく。


「まあ、男子と女子が付き合うのがフツーなのかもしれないけどぉ」
「あはは、梨沙子もみやと付き合えたらいいね」
「あばばば何言っそんっわた(ry」

もぉ軍団の漫才はさておいて、梨沙子のその回答は、お嬢様的にはピンとくるものではなかったみたいだ。さっきよりも難しい顔をしている。


「お嬢様、告白っていうのは必ず気持ちを受けとめなきゃいけないわけじゃないんですよ。
お断りしたいと思ったら、そう伝えればいいんです」

私や愛理と同じ結論に至ったのだろう、なっきぃが至極真面目な顔でお嬢様を諭す。

「そうだかんな。お嬢様には俺というアレがいるんだかんな。それ以外のあれはまあ、それだかんな」
「かんちゃんは黙るケロ!」
「あ・・・あの、告白というわけではないのよ」

おや、先走りすぎたみたいだ。
じゃあ一体何のことを・・・。舞ちゃんの顔をチラ見すると、ニヤニヤしている。お嬢様のこととなると、途端に心が狭くなる舞ちゃんがこういう表情なら、少なくとも悪い話じゃないというわけだ。


「ふふん、はっきり言えばいいのに。知らない生徒に妹になりたいとか言われて、混乱してるって」
「もう、舞ったら」
「あー、なーんだ!そっちか!」


私はおでこをパチンと叩いて“あちゃー”みたいなジェスチャーをしてみせた。
途端に笑う、もぉ軍団。・・・はいはい、どうせリアクションが古いですよ、私は!


「今さ、学園で流行ってるんだよねー、姉妹ごっこ」
「ほら、舞の言ったとおりでしょ?ふふん、ただの遊びでちしゃと悩みすぎだし」

どうやらガチ告白というわけではなかったようで、安心したというかなんというか・・・。まだまだお子ちゃまなお嬢様に、恋だの愛だのはまだ刺激が強すぎるとママは思います!(キリッ)


「へー、お嬢様もそういうの言われたんだ!」
「“も”ってことは、まままさか友理奈ちゃんも!?」
「うん、何か手紙もらったよー」

うわぁ・・・。

口に出さないまでも、なっきぃがあからさまに引いた顔をしている。小熊軍団的なものを想像したんだろう、多分。


「てか、ぶっちゃけみんな言われてるんでしょ?姉妹になってください的な。はい、言われた人、挙手!」

舞ちゃんの号令で、反射的にビシッと右手をあげる私。
予想通り、手を下げたままの人は一人もいない。みんな、何らかの形でこの学園内のブームに巻き込まれているようだ。


「ふふん。ほら見ろ。・・・ってか有原もかよ。選んだ奴マジキチでしゅね」
「はーん?あたしは姉も妹も打診がいっぱいあったかんな。萩原なんてどうせ(自主規制)奴隷にしてくださいとかだろ」
「(自主規制)奴隷?それは何かしら」
「えーと、それはねお嬢様」
「熊井ちゃんマジレス禁止!」

「・・・それで、みんなはどんな返事をしたの?」

しばらく黙ってニコニコしていた愛理が、いつもののほほん口調で問いかける。

「どんなって・・・愛理は?」
「ケッケッケ?」
「ええ?」

――この悪女め!


「あ、うちはねー、いいよ!って言ったよー。お姉さんにもなるし、妹にもなるって」
「ギュフ!友理奈ちゃん、何考えてんのっ」
「別にいいじゃーん。楽しそうじゃない?そういうの」


まあ、これは予想通りだ。

玩具が手に入れば、とりあえず興味を示して遊ぶのは野生動物・・・いや、羆・・・というか熊井ちゃんの習性。
姉や妹志願の勇気ある生贄さんたちが、熊井ちゃんの中身をちゃんと理解しているのか、はたまた単なるメンクイさんなのかで、大分今後の展開は変わってくるだろうけど。


「・・・舞ちゃんは、全部断ったんでしょ?即答で」

一人一人聞いてくのもなんだし、私はばしばしと言い当てていくことにした。

「・・・あ、うん。そうでしゅけど」
「へへー、当たった!じゃあ、梨沙子。梨沙子は“おねーちゃんになってください!”とは言われなかった。そんで、“妹になってください”についてはごめんなさい。でしょ?」
「すごい!ママ!・・・だって意味わかんないし」
「なっきぃは姉妹どっちの話もあったけど、保留になってる。ぶっちゃけ、いい辞退の文句を探している。違う?」
「キュフゥ・・・」
「次、栞菜。あんたは・・・侍らせてるでしょ、すでに何人も」
「はーん?まあ、姉や妹は何人いてもいいはずだかんな。浮気とは違うから。ね、お嬢様はぁーん」
「え?・・・よ、よくわからないわ」
「お嬢様に話を振らない!そんでもって・・・愛理は・・・」
「・・・ケッケッケ?」
「ああ、はいはいケッケッケですね愛理ちゃんは」
「さすが茉麻ちゃんでしゅ。舞が見込んだだけのことはあるね」

まあ、我ながらいい分析だったと思う。推理ゲームみたいで楽しい。
ここにいない千奈美とみやは・・・そうだな、意外と気難しい千奈美なんかは「考えとく!」で全部はぐらかしそう。
みやはちょっと美人すぎて、そういう申出はそもそもなさそう(ガチ告白のみ)だけど、琴線に触れるものがあれば認めてあげてもいいよ、的な。

「茉麻ちゃん、頼もしいケロ。キュフフ、日ごろから生徒を良く見ている証拠だねっ」
「ケッケッケ、大当たりだったねー」
「(いや、あなたのことはよくわかr)なんのなんの、褒めすぎでしょー」

謙遜しつつ、ちょっとお鼻がピノキオになってしまっているのがじぶんでもわかる。
生徒会長として、役員それぞれのパーソナルを把握しておくのは基本だしね。読んでてよかった、某蝶ネクタイメガネバーロー探偵マンガ!


「てゆうかー、肝心の茉麻は?」

そんな鼻高々な私に、熊井ちゃんが問いかけてくる。

「あー、私?今は特に、妹っていう存在はいないかな」
「今“は”?じゃあ未来は?」
「んー。わからないな。1つ言えるのは、お相手の素性がわからないのに、いきなり姉妹関係は考えられない」

真ん前に座っている、お嬢様の顔がパアッと明るくなった。このおかしなブームに関して、私と同じような感想を持っていたみたいだ。
単なる遊びとはいえ、“姉妹”という言葉は重い。少なくとも、私の感覚ではそう。
その言葉で結びつくことを望んでいるのなら、大げさかもしれないけれど、履歴書かなんかを提出してほしいぐらいだ。

「お堅いよねー、茉麻は。もっとかるーく自由に考えればいいのにさー。若者は愛し愛されて愛を知るのさ。恋愛のプロのうちとしてはそう思うよ。ラブ&ピース!」
「・・・どんだけプロの敷居低いんだよ、恋愛業界って」

まあ、こういうのは一過性のものだし、別に気にするほどのことじゃないだろう。前のガングロギャルブームと同じ。


そう思って、このときは笑っていた。・・・この“姉妹ブーム”が、思わぬ大波乱へと発展していくことなど、知る由もなかったから。



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