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何、その言い方。
「聞いてないって、だって言ってないもん。千聖と私が2人で遊ぶことだってあるよ。」
そんなに強い言い方をしたつもりはなかったけれど、栞菜はあからさまに傷ついた顔をした。
「・・・だって、私達いつも3人でいるのに。何でハブんの?私がいたら迷惑?」
「いや、そうじゃないけど・・・」
最悪の事態かもしれない。今日栞菜に会うことは想定してなかったから、うまい言い訳も見つからなかった。

「しかもそのネックレス、おそろいでしょ?2人だけの。」
「栞菜と私だけのおそろいだってあるじゃん。」
「でも・・・・」
気まずい沈黙が流れた。
まいったな。
きっと今は何を言っても、栞菜を落ち込ませてしまうだけだろう。
誰がいいとか悪いとかいう問題じゃないから、余計に複雑だと思う。
そもそも千聖は何が問題になっているのかもよくわかってないみたいで、困惑した表情を浮かべていた。
前の千聖もそうだったけれど、千聖には女の子特有のグループ意識やなわばり意識が薄い。その時仲良くしたい人といたいだけ一緒にいるような自由さを持っている。
枷のないさっぱりした人間関係を好んでいるみたいで、私達が大抵3人組で一緒にいるといっても、その関係だけにこだわっているわけじゃないのは何となくわかっていた。
案の定、私を見つめる千聖の目は「栞菜は、どうして怒っているの?」と露骨に訴えかけてきている。
千聖に栞菜の気持ちを説明して、なおかつ栞菜に今回の顛末についてうまく伝えるのは、私の国語力では難しそうだ。
どうしよう。こんなことでケンカしたくない。
でも謝るのは何か違う気がする。
「何か言ってよ、愛理。ちっさーも、私のことが嫌なら・・・・」

「ハイ、ハイ、ハイ、けんかをやめてー 2人を止めてー 私ーのためーにー争わないーでー」

「・・・・えりかちゃん。」
ハットを斜めにかぶったオシャレ美人が、手拍子とともに小路から歩いてきた。しかもウィンクのおまけつき。
まさか。このタイミングで現われるとは思わなかった。しかもまたことごとく古っ!

「何で?今日はデートって言ってなかった?」
「ん?デートだよ。栞菜と。ね?」
えりかちゃんはぐいっと栞菜を抱き寄せた。よく見ると、2人が両手に持ってるショップバッグは、ほとんど一緒の店のものだった。
「なんだー。栞菜えりかちゃんと一緒だったんだ。」
「そ、そうだけどさ!でもそれとこれとは」
「栞菜。さっき愛理と楽屋で話してたとき、今日ウチと栞菜が一緒に買い物行くって言ったんだよね。だから愛理は遠慮して、栞菜を誘わなかったんだと思うよ。ね、そうでしょ?」
そうだと言え、とばかりにねっとりした視線を投げてきたから、とりあえず従うことにした。
「う、ん。そう、だった。」
「まあ、そんなことがあったなんて知らなかったわ。栞菜、私もごめんなさい。私、愛理のつけてるネックレスがかわいいと思っていて、今日はそのお店に連れてってもらったの。
急にお願いしたから、栞菜をお誘いしそびれてしまったわ。仲間はずれなんかじゃないの。誤解させてごめんね。」
「ちっさー・・・。」
よかった。どうにか誤解は解けつつあるみたいだ。
「そうだよ、栞菜。大体それじゃあーた、今日梅さんとのお買い物は楽しくなかったと思ってんの!思ってんの!?」
「ち、違うよ。楽しかったよ!」
「じゃあもう、いつまでも引きずらないのー。今度は3人で行ったらいいじゃん。何ならウチも一緒に・・・」

「「いえ、それはいいです。」」
「あっそ。まあそれはいいんだけど、千聖たち噂のジェラートは食べたの?梅さんたちまだでさ。良かったら、ご一緒しませんこと?お嬢様方。」
本日2回目のウィンクとともに、えりかちゃんのお誘い。
「もちろん、ご一緒させていただきますわ。」
ベンチから立ち上がって、飛びついてきた栞菜と微笑む千聖と3人で並んで歩きはじめた。
すると、いきなりえりかちゃんにぐいっと腕を引かれた。
「あー待って待って、そっちじゃない。こっちから行こう。」
「え?遠回りじゃない?」
まあいいから、と誘導されるままについていくと、インフォメーションセンターの近くに見慣れた後姿が・・・
「嘘、舞ちゃん!」
「もー!遅いよ!えりかちゃんが電話かけてきたから舞、わざわざママたちと別行動にして待ってたんだからね!・・・・千聖ぉ。遊ぶんなら舞も誘ってよね!」
若干目が吊りあがってるけど、私の横から千聖をもぎとって少し機嫌が直ったみたいだ。
よし・・・ご機嫌なうちに、ちょっと確かめておきたいことがあった。

「舞ちゃん、家族でお出かけって・・・どうしてここ選んだの?舞ちゃんちから遠くない?」
「あー。」
舞ちゃんは丸い目をくりんと上に向けて、ちょっと考えてから言った。
「何かね、おねーちゃん・・・舞美ちゃんがすっごいここにあるなんだっけ、アイス?みたいなのを褒めてたから。来てみたくなってパパに頼んじゃった。」
ほうほう。なるほど。だんだんつじつまが合ってきた。
ということは、この先に待ち構えているのは・・・

「うおおーい!こっちこっち!えり遅いー!」
「キュフフ・・・みんながこないからなっきぃもう・・・キュフフフ・・・・」

やっぱりだ。舞美ちゃんとなっきぃが、フードコートの一角を陣取っていた。
机の上にどっさりジェラートのカップが置いてあって、コーンタイプのは舞美ちゃんが両手に抱え込んでいる。
すでに何個か空っぽになっているのもある。2人とも、はりきるにもほどがあると思う。
「うーわ、なっきぃモs・・・じゃなくてどうしたのその格好!?それに舞美ちゃんはいつもよりコーディネートがいい感じ!」
「キュフフ・・・それはね栞菜・・・なっきぃが選んだ服をみぃたんが奪っ」
「ジェラートカ゛ーッ!」
「あががが」

「・・・ねえ、えりかちゃん。」
「んー?」
「どこからどこまでが、えりかちゃんの仕込みなの?」
仕込みだなんて、愛理下っ品ー!と笑ったあと、えりかちゃんはふっと真面目な顔になった。
ふだんおバカな行動をいっぱいしているけど、真顔は本当に美人で不覚にもどきっとさせられた。

「私と舞美は、実は最近ちょっと気まずかった。」
「えっ・・・何で?」
「まあ、いろいろあるんだよ。年上組にもね。
そんで、愛理と千聖はトイレでモニョモニョしてから、何か微妙な雰囲気になっていた。
さらに、そのことで栞菜が千聖に少し詰め寄ったらしい。
あともう一個。じつはなっきぃと舞ちゃんも、ちっちゃいことだけどケンカがあったらしい。・・・・どう、結構ぐちゃぐちゃしてたの。キュート。」

全然知らなかった。自分のことで手一杯になっていて、皆はいつもどおり平和なキュートだと思っていた。
「だからね、何かまとめてスッキリできないかなって思ったんだよ。それで舞美に声かけて、みんなが自然に集合できるようなシチュエーションを作りたいなって。
ちょっと、いやかなり不自然だったかもしれないけど、これでもうちら頑張ったんだよ。」
何だー。じゃあ私と千聖のデートは、えりかちゃんに仕組まれていたみたいじゃないか。
あんまりこういうことはしないんだけれど、私は思い切ってえりかちゃんに抱きついてみた。
「・・・・私、えりかちゃん嫌い。」
「えっ・・・」
「嘘。ごめん。すごい嬉しかった。でも何か恥ずかしい。もうよくわかんないよ。えりかちゃん大好き。」
今間違いなく、私の顔は真っ赤だ。一気にまくしたてると、千聖の方に走って逃げた。
「愛理?」
「さ、早く食べよう!溶けちゃうから!はい、これ千聖のね。」
こんなに動揺したのは久しぶりかも。
慌てて掻きこんだミルクジェラートは、おいしかったけれど喉に詰まって苦しかった。

「ゲホゲホ」
「ちょっとー何やってんの愛理!ちっさー水持ってきて!」

「なっきぃ、食べないの?」
「キュフフ・・・舞ちゃん、なっきぃもうみぃたんのせいでおなかタポンタポンだよ・・・」

「えりー!早く来なっ・・・って何で泣いてるのー!ウケるーとかいってw」
「うるざいー!舞美の無神経ー!」

よかった。いつものキュートが戻ってきつつあるみたい。
千聖と2人で最後までデートできなかったのは残念だけど、こんな楽しいおやつタイムをすごせたのはラッキーだった。
「愛理。」
千聖が肩をくっつけてきた。
「今日楽しかったわ。これ、ありがとうね。」
「うん。また行こうね。」
「あー・・・また2人なの?」

栞菜が私たちの間に顔をズボッと突っ込んできた。
「わかったよぅ。3人でね。」
もう重苦しい空気じゃない。まだまだ修行が足りない3人組だけど、こうやってフォローしてくれるメンバーがいてくれるなら、もっといい関係になっていける気がした。

「でも今度は、ちゃんと自分達で決めたデートがしたいな。」
小さな小さな独り言のつもりだったけど、千聖はにっこり笑ってうなずいてくれた。


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