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そうだ、小春ちゃんがわざわざ僕の所にまで来て、何も無いはずがない。
警戒しておくにこしたことはないだろう。

「わざわざ2年の教室まで。今日はなんですか?」

「最近はどう?」
「どうって・・・ 何がですか?」
「部活もやめちゃったから、毎日ヒマしてるんじゃないの?」
「ヒマなんかじゃないです。勉強してますから、毎日」
「絶対ウソだーw」

笑ったあと一呼吸置いて、小春ちゃんが話しを続ける。

「ヒマしてるんならさ、生徒会の仕事とかやる気ないかなあ」
「小春ちゃん、生徒会の仕事もやってるですか」
「うん、そうなんだ。だから忙しくてしょうがないんだよねー。誰か手伝ってくれる人いないかなと思ってたの」
「でも、僕も忙しいんですよ。だから生徒会なんて大変なものはちょっと」

小春ちゃんのお願いとはいえ、生徒会の仕事なんて思いっきりつまらなそうだからちょっとなあ。
それに、僕はいろいろとやることがあって忙しいのだ。
熊井ちゃんに申し付けられている任務もあるわけだし、毎日の放課後は。

「忙しいんだ・・・」
「えぇ、まぁ」

否定的に答える僕に、小春ちゃんはその明るい笑顔で楽しそうに話しを続けた。

「良かったー! わからない事とかは小春がちゃんと教えてあげるからね。心配はしないで」

おかしいでしょ。

前後の会話の内容がつながってないよ。
断ろうとすることを匂わせているのに、まるで僕が生徒会に入ることを快諾したかのように会話を進める小春ちゃん。

そうだった。
久住先輩もまた、あまり人の話しを聞かない人だったっけ。

「いや、あの小春ちゃん?」
「なに?」

ご自身の発言に全く疑いを抱いていないようで、屈託の無い笑顔で僕を見る。
来たよ、これ。小春ちゃんの、この笑顔にやられるんだ。
そんな笑顔で見ないで。

「あの・・ 生徒会に入るとは、ひとっことも言ってないんだけど」
「え? 入ってくれないの?」

まずい。まずいぞ。
心が揺らぐ。

「いや、その・・・・」
「小春のやってる渉外部の仕事は、他の学校にも行けるし面白いんだよ。女子校の生徒会の人とか面白い人が多くてね」


!!


先輩、今、何とおっしゃいました!?


「私立の女子校とかにも行けるよ、あの学園とかさ。あと、あっちの学園のセーラー服の子とも知り合いになれちゃうかもよ~」

それを先に言って下さい、小春ちゃん!
その学校名が出てきたことで、僕は得意の決め顔を作ってそれに答える。

「や、やります。ぜひ僕にやらせてくらさい!! 生徒による自主的な生徒会運営には前から興味があったんです」
「引き受けてくれる? 良かったー」
「えぇ、他ならぬ小春ちゃんのお願いですから」
「本当に? 嬉しいー!」

先輩の笑顔を見ることができた僕の方が嬉しいですよ。
でも、こんなところを小春ちゃんファンの過激な男子に見られたら(以下同文

「じゃあ、さっそくなんだけど、これから生徒会室に行ってくれる? 資料の整理をして欲しいの。小春の紹介だって言えばすぐ通じるからね」
「今日これから? しかも僕ひとりで? 小春ちゃんが一緒じゃないんですか?」
「ごめん! 今日はこれからみっしげさんと会う約束してて急いでるの。それなのに資料整理とか言われるんだもん」

誰に会うって? そんな知らない人の名前も平気で出すところも小春ちゃんらしいや。
でも、シゲさんとか、それってまさか彼氏じゃないですよね、小春ちゃん!

「大量の資料だから整理するの大変だろうけど。しかも今日中に整理しなきゃいけないんだって」

えー・・・ ひょっとして今日は帰れるの遅くなるのかな。
それはまぁいいけど、資料整理とか本当につまらなそうな仕事だな・・・
なるほどね、小春ちゃんが今日わざわざ僕のところに来た理由が分かったよ。


「渉外部って、意外と地味な仕事ばっかりなの。他の学校行ってお喋りでもしてればいいのかと思ったら、他の学校に行っても仕事ばっかりなんだもん」

あれ?
僕が思い描いたバラ色の仕事とはちょっと異なる返答になってきてるんですが。

ひょっとして、僕は騙されたのかな。
男子の気を引くには女子校で釣るのが一番と思ったのだろう。
そんな先輩の勧誘に僕は見事に引っかかったようだ。

しかしながら、他の学校行っても仕事ばっかりでって・・・

そりゃそうでしょうよ先輩。
他の学校に行くのだって遊びで行くわけじゃないんだから。

でも、そんなにつまらないのかな渉外部の仕事って。
だから、なり手が無いんじゃないだろうか。
何か急激にテンションが下がってきた。


そんな僕を小春ちゃんが真正面から励ましてくれる。
昔からそうだったっけ。小春ちゃんは、こうやっていつも励ましてくれたんだったな。そんな懐かしい感覚。

「誘って良かったー! これから一緒に頑張ろうね!!」

はい!
頑張ります!!

その笑顔でそんな励ましをされちゃったら、頑張らざるを得ないじゃないか。
それに、そのうち学園に行けるかもしれないことには変わりない。
可能性がある限り、それに賭けてみよう。あきらめたらそこで試合終了だ。

「あっ、もう行かなきゃ。じゃーねー!!」

一緒に頑張ろう!と言ったそばから、久住先輩は台風のように去って行ってしまった。
そんな小春ちゃんを見送り、僕は頼まれた仕事をするべく生徒会室に向かうのだった。



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