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「・・・ダメね、私。少し一人で落ち着かないと」

苦笑いの私と、ケッケッケモードの愛理を見比べると、お嬢様はまた深いため息をついた。

「わざわざ来てくださったのに、ごめんなさい」
「あ、いえいえ!また何かあれば、なんなりと。・・・あ、就寝時間に栞菜はお呼びしますか?それとも、今日は・・・」
「また後で、私から栞菜に連絡するわ。どうもありがとう、舞美さん」

肩を落として、少し寂しそうに微笑むお嬢様。
どうにかしてあげたいけれど、今日のところは引き下がるしかないのかもしれない。というか、そもそもカリン(ry


「・・・お嬢様、ひとつだけ、よろしいでしょうか」


ドアを開けようと、ノブに触れたとき、ふと愛理が後ろを振り返った。


「何かしら」
「お嬢様は先ほど、めぐぅが冷たいとおっしゃっていましたが、それは違うと思います。」
「でも、」
「めぐぅは舞波さんを忘れていないから・・・今でも、舞波さんのことを思っているからこそ、お嬢様のお話にうなずくことができなかったんじゃないでしょうか」

口を挟もうとするお嬢様を制するように、愛理は一気に喋った。


「・・・よく、わからないわ」

――私もよくわかりません、愛理ちゃん。

「それでも、いいんです。
ただ、私の意見として小耳に挟んでいただければ。・・・では」

愛理は一礼すると、私を手を取って、もう振り返らずに部屋を後にした。



* * * * *

「あ、そうだ舞美ちゃん。かりんちゃんっていうのはね、お嬢様の妹になりたがっている子だよ」

お嬢様のお部屋を出て、寮に戻る帰り道、私はやっと最大の疑問点を解消する事ができた。


「妹・・・あ、舞が言ってた、姉妹ごっこの?」
「ケッケッケ、舞美ちゃん知らないで話合わせてるんだろうなーって思ってた。」


――なんだよー、黒愛理ちゃんめ!こっそり耳打ちしてくれればよかったのに。


「それで・・・かりんちゃんさんは、お嬢様が言うように、いじめられているの?」

私が問いかけると、愛理はぴたっと足を止めた。

「わかんない」
「そっか」

即答してくれたけれど、その横顔は何かを考えている風で・・・。ふわふわとつかみ所のない愛理の、心のうちがますます見えなくなってしまう。


「・・・有名な子だから、なんとなく人となりは知っているけどね。
成績優秀、スポーツ万能。初等部の交流会で、クラスの子たちをまとめてるのを見たこともあるよ」
「へー、なっきぃみたいな感じかな?」
「ケッケッケ」

――余談だけれど、愛理の「ケッケッケ」には幾つか種類があって、「ケッケッケ(↑)」は肯定で、「ケッケッケ(↓)」は否定、「ケッケッケ(⇔)」は

「思ったんだけど、めぐぅがお嬢様のお話に難色を示したっていうのは」
「はっ!」


また余計な事を考えていたら、愛理が喋り出した。

「それは、お嬢様が混乱しているからだと思うんだ」
「そうなの?さっき、落ち着いてみえたけど」
「表面上はね」

寮のロビーにたどり着くと、二人そろってソファに腰をおろす。


「恐らく、お嬢様はめぐぅに、私たちに話したのと同じ内容を打ち明けたんじゃないかな。
知っている下級生がいじめられているようだから、助けたい、って。・・・もしかしたら、もっと断定的な言い方をしたのかも」
「お嬢様はめぐぅのこと、信頼してるもんね」
「そうだね。・・・だから、めぐぅはすぐに察したんだと思う。
お嬢様が舞波さんの件と関連付けて、二度とあんな辛い気持ちをする人が現れてはいけないって、焦ってしまっているお気持ちを」


愛理はいつもどおり落ち着いて、淡々としていて、その冷静さになぜか私の方がそわそわしてしまう。
――いや、いつもどおりではないのか。少し饒舌なのは、今のお嬢様の御様子から察したことを整理しようとしているからかもしれない。

「でね、多分だけど・・・お嬢様は、直接かりんちゃんがいじめられているのを見たんじゃないと思うんだ」
「どうして?」
「それなら、その場で何かアクションを起こすんじゃないかな、お嬢様なら」

なるほど。
そういえば、ももが前に言っていたっけ。

ずっと前、嫌がらせしてくるグループの子たちがいて、今よりもずっとずっとおとなしかった千聖お嬢様が、その子達に直接注意をしてくれたことがあったらしい。怯えた子犬時代の、お嬢様がですよ!

だから、もぉはこれから何があっても千聖を守るから、と。あのドライなももが。


これ、私のお気に入りのももちさエピソード・・・まあそれはいいとして、このことからも、お嬢様の正義感の強さというのは伺い知れる。
まして、今のお嬢様がかりんちゃんさんがいじめっこに絡まれている現場なんて見ようものなら、あの黒目がちなお目目をキッと吊り上げて、即お説教モードに入ることだろう。

「・・・何か、かりんちゃんさんの様子や状況で、いじめを連想させることがあったのかな?」
「うん。状況証拠ってやつだね」


ああ、何か、少しずつわかってきた気がする。

お嬢様は、信頼してるめぐぅなら・・・まして、舞波さんの件を知っているめぐぅなら、いじめを止める方法を一緒に考えてくれると思っていた。
なのに、めぐぅはお嬢様の意見に反対した。・・・というか、全面的には味方になってくれなかった。というのが、お嬢様からの視点。
めぐぅからすれば、こういう件でお嬢様がヒートアップしてしまうのはわかっているから、ひとまず冷静になってと諭したんだろう。
自分が直接知らない人のことで、まして何か現場を見たわけでもないのに、いきなり意見を述べるのは難しいという考えもあったのかもしれない。

お嬢様が、新聞部の騒動で心を痛めていたときもそうだった。
傷ついたお嬢様に寄り添いながらも、できないことはできないと突っぱね、その裏では自分が悪者になってでも、お嬢様と舞を仲直りさせようとしていた。

そういう優しさは、後にならないとなかなか気がつかないものだ。・・・私クラスになると、後になっても気がついてないことがたくさんありそうだけど(キリッ

「舞美ちゃん、えりかちゃんと2人でめぐぅのこと、宜しく頼むね。
お子様チームは、お嬢様を支えるから」
「もちろん。
嫌なことは、すぐに解消されるといいよね。なんにしろ。みんなで笑い合えるのが一番!」

私がそういうと、なぜか愛理は嬉しそうに笑った。

「ん?」
「いやー、何か、舞美ちゃんってやっぱりいいな、って思って」
「本当ー?じゃあ今からでも、なる?姉妹に!とかいってw」
「はいよろこんで、舞美お姉様。なんつって。ケッケッケ」
「そういえば、愛理は学園に、お姉さんや妹は作らないの?お嬢様みたいに」
「・・・ケッケッケ?」
「あはは?」


――やっぱり、よくわからない子だ、愛理ちゃんたら!



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