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「・・・・ねえ。」
舞美ちゃんの家から仕事場に一緒に来た私は、楽屋の鏡の前でぼんやりしている千聖の横に立った。
「舞、さん」
「話があるから一緒に来て。」
腕を掴んで立ち上がらせて外に出ようとしたら、栞菜となっきぃが前にたちはだかった。
「ちょっと待って、舞ちゃん。栞菜も舞ちゃんに話があるんだ。ちっさーにも聞いてほしいから、ついていっていい?」
「舞ちゃん、私も。おとといの夜のこと、ちゃんと話したい。謝りたいよ。」

「2人とも、舞はちっさーと2人で話したいんだって。後でいいじゃないか。」
「でもっ」
・・・ああ、そうか。
私がこの千聖のことをいじめるんじゃないかって、心配してるんだね。
無理もない。私は自分の感情にまかせて、かなりひどい仕打ちをしてきた。
挨拶無視にはじまって、一昨日はついに直接本人を責めた。
なっきぃはその現場にいたわけだし、栞菜の耳にだって入ってないわけがない。
愛理は私を睨んでいる。えりかちゃんは「舞美・・・」と何かいいかけて口を閉ざした。

皆にいじめっ子認定されちゃったわけか。でもそれも、自分の起こした行動が生んだ報いというやつなんだろう。

「別に、何にもしないよ。」
「でもさ、実際に舞ちゃんちっさーのこと」

「栞菜。早貴さん。」
その時、ずっと黙って私に手を引かれていた千聖がもたもたした口調で喋り出した。

「私も今舞さんと、2人で話がしたいわ。私が先ではだめかしら。」
「ちっさー・・・」
ちょっとボーッとしているみたいだ。顔色が悪くて隈が出ているから、寝不足なのかもしれない。
でも、はっきり「舞さんと話したい」そう言ってくれた。

「ごめん、もう行く。ちょっと時間がないんだ。」
「時間って、どういうこと?」
「ほらほら、舞がそう言ってるんだからちょっと2人にしてあげようよ。さ、行って。みんなは舞美のところに集合!」

ありがとう、お姉ちゃん。
きっと今回の事件について、みんなに話してくれるんだろう。
私も後でちゃんと、なっきぃと栞菜の話を聞かなきゃいけないな。


「こっち。ついて来て。」
ちょっと奥まった自販機の前に千聖を連れて行くと、
「おごって。」
と唐突に言ってみた。
「えっ・・・」
「前の千聖なら、舞におごってくれた。」
「・・・・ええ。」

千聖は困惑した表情で、ジュースを差し出してきた。
「舞の好きなやつだ。忘れてなかったんだね。」
「舞さんは、いつもこれを選ぶのよね。もちろん覚えているわ。」
微笑む顔につられて、つい表情を緩めてしまった。
この千聖と笑いあうなんて、これが初めてだ。

「・・・一昨日の、夜なんだけど。」

一呼吸置いて、私は本題を切り出した。

「ごめんなさい。舞が悪かったです。」
「舞さん、待って、頭を上げて。舞さんは悪くないわ。」
千聖の手が、私の手を包み込んだ。

「以前の私がどんな性格だったのか、自分ではわからないれど、本当に全く違うのでしょう?
ずっと仲良くしてくれていた舞さんが、今の私を拒絶するのは仕方がないと思うの。
でもね、・・・たとえ舞さんが私を嫌いになってしまったとしても、私は舞さんが好き。
どうか、この気持ちだけは拒まないで。」
「もういいよ、わかったから。」

これ以上聞いていたら、また心が乱れてしまいそうだった。
動揺しているのをごまかしたくて、千聖の目元に手をやった。

「ひどい顔してる。また泣いてたんだ。あと、寝てないでしょ。顔色ヤバいって。」
「そん、なにひどい?」
「最悪だよ。アイドルなのに。
・・・・・あの、さっきは、気持ちをきかせてくれてありがとう。だから、舞の話も聞いて。」
もう逃げない。

千聖の目をまっすぐに見つめながら、私は昨日舞美ちゃんと考えた事一つ一つを言葉に変えていった。



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