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「舞ちゃんって、もしかして、萩原舞ちゃん?」
「そうですよー。ってか、うちの話しちゃんと聞いてたんだー。良かった。小春って人の話しとか全く聞かない人なのかと思ってた」

オマエモナー。
・・・って、驚くところが違うだろ、熊井ちゃん。
いま小春ちゃんは、「もしかして、萩原舞ちゃん?」って言ったぞ・・・

「えっ? 小春ちゃん、舞ちゃんのことを知ってるの?」
「うん」

さも当然のことのように頷く小春ちゃん。

「やっぱりあの舞ちゃんなんだ! 懐かしいな。舞ちゃん元気にしてる?」
「舞ちゃん元気ですよー。このあいだも生徒会室で一緒にお弁当を食べてー、うちが舞ちゃんのお弁当おいしそうだねーって言ったらー・・・

そのエピソードは今じゃなくていいよ、熊井ちゃん。
それは後でゆっくり聞かせてもらうから。そんなことより・・・

「どうして、舞ちゃんのことを? 小春ちゃん」
「もうだいぶ前のことになるんだけど、舞ちゃんとは面識があるの」

小春ちゃんが思い出すように僕らに語り始めた。


あれは今から3年前、私が中学3年生の夏休みのこと。
国が主催する、ある研修合宿に小春は参加したんだ。
小中学生が集まる二泊三日のその研修合宿に参加するには学校の推薦が必要でね。さらに、推薦されても選考に通らなければ参加できないの。
それぐらい権威がある研修らしいんだ。うちの中学校から見事選ばれることが出来たとき、先生からミラクルって言われたぐらい。

研修では、いろいろなところを見学して、いろいろな偉い人にも会えて話しを聞くことが出来たりして、面白かったな。
なんとかっていう知事の人とか、なんとかっていう大臣とか、なんとかっていう会社の社長さんとか。
難しい話しばっかりだったけど、とっても勉強になったんだよ。

そんな研修合宿だったんだけど、そこで私は舞ちゃんと出会ったの。


 * * *


いろいろな中学の人と交流が出来て楽しいな。
しかも、優秀な生徒が集まっている研修だけに、みんなレベルが高くて話しをするだけでも刺激的で面白い。
私たち中学生の他に小学生も参加していて、小学生たちもわいわいと騒いだりしていた。

あれ? そんな小学生の子たちの中で、ポツンと独りぼっちの子がいる。
人見知りして、みんなに馴染めないのかな。

でも、どうやらそうではないみたい。
その子からは、人を寄せ付けないようなそんな感じのオーラが出ているのが一目で分かったから。
気難しそうな表情で何か近寄りがたい孤高の雰囲気を纏っている。
だから、周りの子達もその子に気軽に話しかけたり出来ないでいるんだ。

その子のことは見覚えがある。
この研修の開会式で小学生の生徒を代表して挨拶の言葉を述べた子だったから。
その役目に抜擢されるってことは、集まっている小学生の中で一番優秀な生徒だっていうこと。
すごいなー。これだけ優秀な生徒さんが集まってるその中で一番優秀だなんて。

無愛想にしてるけど、その目を見ればこの子が只者では無いと言うことがよく分かった。
その目力は、本当に力強くて小学生とは思えないほど大人びていたから。

その第一印象は強烈だった。一目見ただけで私はこの子のことがとても気になってしまった。
だけど、私は中学生組だから、その日の講義ではもうその子に会うことは無かった。ちぇっ、つまんないの。
でも、直感で私はこの子とまた会える気がしたんだ。



研修は泊りがけで行うんだけど、その宿泊場所の部屋は2人部屋だった。
どんな子と一緒になるのかな。楽しみだなー。
ワクワクしながら部屋に入ると、同室の子がすでに先に来ていた。
そこいたのは、なんと、さっきの孤高の少女だー!!

「はじめまして! 私は久住小春だよ。よろしくねー!!」
「萩原舞。よろしく」
「舞ちゃんかー。かわいい名前だね!」
「別に・・・」
「舞ちゃんはどこから来たの? どこの学校? 何年生? 今日行った所どこが一番面白かった?」

舞ちゃん、ビックリした顔してる。どうしたんだろ??
でも、その表情がとてもかわいくて。
なーんだ、やっぱりまだ小学生なんだ。とってもかわいい顔してる。


舞ちゃんの言った学校名。驚いた。
小春もよく知っているあの学園の名前だったから。

「そうなんだ! じゃあ結構ご近所さんの学校だったんだね。それで、今日は楽しかったよねー? ご飯も豪華でビックリしなかった?」
「質問はひとつにしてくれる? あと、話題をころころ変えない」
「小春はねー、今日行ったところで一番面白かったのは国会議事堂のね、あそこの赤絨毯って本当にレッドカーペットみたいだったから思わず笑っちゃってry」
「ねぇ、人の話し聞いてるの?」


話しをしているうちに、だんだん舞ちゃんのことも分かってきた。
舞ちゃんはある有名な学園の初等部の6年生。
この研修に参加できるってことは、あの学園で主席の成績だっていうこと。
研修参加者の中でも一番優秀な生徒さんなんだから、それも当然か。
でも、あの名門校のトップの子に会えるなんて。こんな機会めったにない。
もっともっと話しをさせて貰おうっと!!

話してみると、頷かされることやそれ以上に驚かされることが多かった。
“天才”って、こういう子のことを言うのかもしれない。
さすが、あの学園で一番優秀な子で、しかも全国でも一番だなんていうだけのことはある。
凄いなー、舞ちゃん。
実際、舞ちゃんと話してみると言葉の端々にその天才ぶりが表れていたし。


でも、優秀すぎて悩み事を抱えているみたいだった。

「学校はあまり楽しくない。ガキばっかりだし本当に退屈。中学は違う学校にしようかなって思ってる」
「違う中学って、学園をやめて公立の中学校に入るってこと?」
「うん。どうせどこの学校でも退屈なんだろうから、それなら公立の学校で十分」
「そんなことないよ。せっかく入った学園をやめちゃうなんて勿体無いよ!」

「第一そんな気持ちじゃ、どんな学校に行っても自ら退屈にしちゃうんじゃないかな。大切なのは自分の気持ちだよ!!」

話しているうちに、つい力が入ってきてしまう。
けだるそうに話していた舞ちゃんの目に力がこもってきた。その目で舞ちゃんが私を睨むように見つめてくる。
うん、そうだよ、舞ちゃん! 退屈なんかしている暇はないはずだよ。

「それに、中等部に行けばまた違う環境だから、そこで新しい刺激に出会えるよ」
「新しい刺激?」
「そう、きっとそこで新しい出会いがあるよ。先輩だっているわけだし。ひょっとして運命的な出会いになるかもよ!未来のだんな様とか!!」
「だから、女子校だって言ってるじゃん。人の話し聞いてるの?」
「間違いないよ。だから辞めたりなんかしないで、学園の中等部に進んだ方がいいよ絶対!」
「だから、人の話しをry   ・・・もういいや。ふふふ、面白い人だね、小春って」
「え?なに? 何か言った?」
「ううん。舞にそんな熱心に意見してくる人って小春が初めてだから、ちょっとビックリしただけ」

舞ちゃん、いま初めて笑った!
その笑顔は何か赤ちゃんみたいでとても可愛らしかった。
舞ちゃん、こんなにかわいいお顔してるんだ。もっと笑えばいいのにー。もったいないよー。

最初は面倒くさそうに私の相手をしてた舞ちゃんだったけど、私の話しにだんだん付き合ってくれるようになった。
気難しそうに見えるけど、意外と素直な子なのかな。
人の話しをしっかり聞いて、内容のある答えを返してくれる。

みんなも、もっとこの子と話しをすればいいのに。取っつきにくいから話しかけづらいんだろうけど。
舞ちゃんも、それだけしっかりと考えてるんだから、それをもっとみんなに伝えればいいのに。
お互いの殻を破らないとダメだよー!
なんか、もどかしいなー。小春的に、なんとかしてあげたい気分になる。

「でも、最近うちの学園の中等部や高等部は、なんか雰囲気悪いんだよね。荒れてるっていうか」
「お上品なイメージの学園なのに?」
「うん。ここのところ特にひどくなってるみたい」
「それならさ、なおさら舞ちゃんが入って学園を正常化しないと。今日偉い人が言ってたでしょ、皆さんが回りを引っ張っていって下さい、って」
「やだよ。そんなの面倒くさい」
「きっと学園の人にも同じように考えてる人だっているよ。間違ったことを正しい道に戻そうと頑張ってくれる人がきっといるから!」
「そんな人いるのかな。みんな自分のことしか考えてないんだよ、どうせ」
「いるよ絶対!生徒会だってあるでしょ。真面目に考えてる人は必ずいるから。そういう人達と一緒に舞ちゃんもやればいいんじゃない」
「生徒会とか、そういうの関わりたくない。疲れるから。舞は一人が好きなの」
「舞ちゃんは本当にそう思ってるの?」
「は? なに言ってるの?」
「ひょっとして、本当はこうしたらいいのにって自分では分かってるのに、わざと反対のことを言ってるでしょ?」

舞ちゃんが真っ直ぐに私の目を見てくる。
でも、小春は睨めっこなら絶対に負けないんだから!
だから、私も舞ちゃんの目を真っ直ぐに見つめ返した。

「まったく・・・ 面倒くさい人と一緒になっちゃったでしゅ。眠くなったからもう寝る」
「うん、そうだね。そういうときは寝るのが一番! 朝になったらきっと気分も一新してるよー!」
「だから、誰のせいで・・・ ハイハイ。もう喋るのは終わりにしてね、お願いだから眠るときぐらい静かにして」



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