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舞ちゃん、寝ちゃったかな?
そう思って目を閉じていると、舞ちゃんの声が聞こえてきた。

「小春、まだ起きてる?」
「んー? 起きてるよー」

舞ちゃん、寝てないの?
寝付けないのかな。

「小春はさ、高校はどこの学校に進学するの?」
「え? 高校? 私はね、家から近いところにある公立高校に行くつもりだよ。○高って知ってる?」
「知ってましゅよ。進学校でしょ。やっぱり小春も進学を考えてそこにしたの?」
「ううん違うよ! 家から一番近い高校がそこだから。そこなら朝もゆっくりできるかなーって思って」
「そんな理由かよ。舞には学園の中等部に進んで改革しろとかさんざん言ったくせに、自分は朝寝坊のためとか。小春ってさぁ」
「なに、舞ちゃん?」
「なんでもないよ!」


しばらく沈黙が続いたから、今度こそ寝ちゃったのかと思った。
すると、何かを思いついたように舞ちゃんが再び話し始めた。

「もし学園を辞めないで続けたとしても、中等部を卒業したら舞も小春と同じ高校に行こうかな」
「小春と同じ高校に? 舞ちゃんが来てくれたら楽しいな! あっ!でも舞ちゃんが高校に入学するときには、もう小春は卒業しちゃってるよ」
「それぐらいはわかってるから。公立の伝統校ってのも面白そうだなって思ったからさ」
「うん、おいでよ。舞ちゃんぐらい優秀なら飛び級で1年早く進学できるかもよ。それなら小春がいるうちに来れるよね」
「また適当な事言って。飛び級とか、そんなシステム聞いたことないから」


舞ちゃん、そんなこと言ってるけど、私には分かるんだ。
たぶん、舞ちゃんと小春が一緒の学校に通うことは無いだろうって。


「でも、きっと舞ちゃんは高等部も学園で過ごすことになると思うよ。これから先もずっとあの学園で」
「それ、どういうこと? なんでそう思うの?」
「舞ちゃんはね、これから中等部で色々な出会いや経験をするよ。きっとそれらは舞ちゃんにとって、とても大事な出来事になるんじゃないかな」
「どうだかね。そんな都合のいいことが起こるかなんてわからないでしょ」
「私には分かるよ。舞ちゃん、そのとき耳をすましてごらん。きっと周りは舞ちゃんが思ってるほどつまらない世界なんかじゃ無いと思うから」
「は? 意味わかんない。ホント小春は訳分からないことばっかり言うんだから」
「そうかなー? 普通のことしか言ってないよ」
「全然普通じゃないから。そこ全く自覚してないの?」
「??」
「ほんと疲れるでしゅ。今度こそもう寝る!」
「おやすみー、舞ちゃん!」
「だから、そんな大きな声を出すなとry」

舞ちゃんは私に背を向けて、布団にくるまってしまった。
ちっちゃい背中だなー。本当に赤ちゃんみたいでかわいい。
そして静かになった。今度こそ寝ちゃうのかな。
さあ、小春も寝ようっと。

ウトウトしかかったところで、小さく声が聞こえたんだけど、それは眠りに落ちる前の私の気のせいだったのかな。



「ありがとう、小春ちゃん」



目覚まし時計の音で目が覚める。
あー、ぐっすり寝たー!!
今日もいい天気! 舞ちゃん、見て見て朝日がとっても眩しいよ!!
隣りのベッドを見てみるが、そこに舞ちゃんはいなかった。

「あれ、舞ちゃん?」

そのとき、シャワールームのドアが開き、舞ちゃんが出てきた。
バスタオルで髪の毛を拭きながら、舞ちゃんが私に声をかけてくる。

「おはよ、小春」
「舞ちゃん、おはよー! 早起きだねー。もう起きてるんだ」

舞ちゃんの方から挨拶してきてくれたことが嬉しくて、もう私のテンションは上がりっぱなしだ。
今日も楽しい一日になりそう!

「朝ごはん食べに行こうよ」
「小春、先に行っていいよ。舞は後から行くから」
「ダメだよー、一緒に食べるんだから。その方が楽しいでしょ。舞ちゃんの隣りに座るからねー!」
「ご飯ぐらい静かに食べたいんだけど」
「舞ちゃんといっぱいお話ししたいな。舞ちゃんは朝食バイキング何から食べる? 私はねー、何といっても梅干!!大好きだからry」
「もういちいちツッコむ気にもならないでしゅ」
「え?何か言った? 舞ちゃん?」
「何も言ってないよっ!」


やっぱり、ごはんは一人じゃなくて誰かと食べたほうが美味しいよね!
舞ちゃんと一緒で良かった。
思ったんだけど、私と舞ちゃんは結構気が合うのかも知れないな。
だって、話しをしていても、こんなに楽しいんだもん!

「あのさー、少しは口を閉じてくれないかな。もうずっと喋ってるじゃん」
「舞ちゃんとお話しするのが楽しくって。だから、つい話しが弾んじゃうんだよね」
「さっきから小春しか喋ってないじゃん。そういうのは“話しが弾む”って言わないから」
「今日の活動は、ほとんどの時間が小中学生一緒なんだって。舞ちゃん、小春と一緒に勉強しようね!」
「今日一日ずっと一緒かよ・・・」
「そして今晩も語り明かそうね!! 本当に楽しいなー!!」
「・・・・・」


相変わらず無愛想な表情の舞ちゃん。
でも、小春には分かったんだ。舞ちゃんの心の中は決して無愛想なんかじゃないってこと。
昨日から話していて分かったんだけど、舞ちゃんは本当に天邪鬼さんだ。
天邪鬼な天才さん。もう本当にかわいいな。

そう思いながら舞ちゃんを見つめていた。
舞ちゃんは、そんな私の顔をじっと見たかと思ったら、不意にニヤッとした笑い顔になった。


「でも今日の講義、ディベートの時間が楽しみになったでしゅ。ふふふ。小春、覚悟しておいてね」


それにしても、なんだろう舞ちゃんと一緒にいると感じるこの気持ち。
昨日初めて会ったばかりなのに。
でも、なんか不思議。舞ちゃんの横にいるのが一番落ち着く。

私たちはきっと親友になれるね舞ちゃん!!
そのためにも、私が頑張らないと! 私の方が年上なんだから。
舞ちゃんに、もっともっといっぱい話しかけなくちゃ!
一緒にいられる時間は残り少ないけど、小春がんばるからね舞ちゃん!!


舞ちゃんと出会えて本当に良かった!!




 * * *

「あれ以来会って無いから、もう3年になるのかー。大きくなっただろうね、舞ちゃん。こーんなに小さい子だったけど」

小春ちゃんと舞ちゃんのあいだには、すでに3年も前にそんな事があったのか。

「でも、舞ちゃん、うちの高校に来なかったってことは、学園を辞めたりはしなかったんだね。良かったー!」
「うちの高校に来なかったって、舞ちゃんはまだ中学3年生だよ、小春ちゃん」
「そうなんだけどね、さっきも言った通りだよ。舞ちゃんは飛び級が認められるくらいの天才なんだから」

飛び級って・・・そんなの聞いたこと無い。
しかもそれが認められるぐらいの、何だって?

「天才?」
「そう、天才。例えばね、小学校の時に大学受験の模試を受けて、全国トップの成績をとるぐらいのね」

小学生が大学の模擬試験? 意味がわからないんだけど。
まぁそこは置いといて、全国模試でトップの成績だって!? 日本で一番・・・しかも、小学生が?

「全国で一番・・・」
「そうだよ。うちの高校でも入学するとすぐ受けさせられるでしょ、大学受験の模試。順位憶えてる?何位だった?」
「そんなの全く憶えてないよ。全国での順位なんか憶えてるような順位じゃないし(学内でほとんどビリに近い順位だったことしか)」
「舞ちゃんはね、全国で一番なんだよ!」

我が事のように嬉しそうに話す小春ちゃん。


天才舞様。
言われてみれば、思い当たることもある。
普段の言動を見ていても、相当に頭の回転が早い子なんだろうなとは思っていた。
でも、まさかそこまでのレベルとは。

「舞ちゃんって、天才なの? 熊井ちゃんは知ってた?」
「うん。舞ちゃん、すっごく頭いいよ。テストの度にうち関心するもん」

コトの大きさが分かってるのかな、熊井ちゃん。
さっき小春ちゃんが言ってたのは、中間テストがクラスで一番とかそんなレベルの話しじゃないんだよ?
学園初等部の主席にして、全国規模の人達の中でもトップだったって。

天才・・・
そんな人、現実にいるんだ。しかも、僕のそんな身近に。
(まぁ、いま僕の目の前にいるこの2人も、ある意味、天才みたいなものだけど・・)

びっくりするような新事実を知り、まだちょっと頭が混乱している僕。
その横で、小春ちゃんが熊井ちゃんに話しを続けた。

「それで、さっきの話しの続きだけど、舞ちゃん舞ちゃんって言ってるって、それって今の舞ちゃんのことなの?」


・・・そうだった。
すっかり忘れかけていたけど、さっき熊井ちゃんが言いかけたのはこの話題だったんだ。
たぶん熊井ちゃん自身も忘れかけていたのだろう。小春ちゃんの問いかけに、思い出したように嬉々として話し始めた。

「そう!そうなんですよー! こいつ、その舞ちゃんのことが本気で好きみたいですよ」
「そうなんだー! 好きな子がいたんだね。しかもそれが舞ちゃんなんて! でも、どうやって知り合ったの?」
「通学途中の朝に舞ちゃんを見かけて、それでそれ以来ずっとつきまとってるんですよ」

だから、その表現なんとかしろよ、熊井ちゃん!
もっと、こう僕の抱いた恋心というものを叙情的に表現できないものだろうか。

「通学途中の朝に舞ちゃんを見かけて以来」ここまではいい。
そこから続く文章としては、「一目で彼女に淡い恋心を抱いたのだった」とでも続けて欲しいところなのに、
それが、何故よりによって「それ以来ずっとつきまとってる」という表現になるんだよ。なんだよ、それ!

調子付いた熊井ちゃんの話しがこの程度で終わるはずも無かった。

「そして、ついに勢いで舞ちゃんに告白までしちゃってー」
「えーっ、告白までしたの!? 知らなかったよー。青春してるんだねー。それで、どうなったの?」

興味津々な顔で聞く小春ちゃんに対して、熊井ちゃんが胸を張って答える。

「みごと玉砕しました!!」

何故そこで得意顔になるんだよ熊井ちゃん・・・

「そっかー、フラれちゃったんだー!!」

小春ちゃんも何故そこで楽しそうな顔になるんだよ・・・

「でも、それでも舞ちゃんが好きなんだって。なんというか、往生際が悪いっていうか、そんな感じ」
「いいねー!青春だー! そう、あきらめちゃダメだよー!! いつかは舞ちゃんの気持ちが向いてもらえるように頑張ってね!思い続ければそれはきっと叶うよ!」

僕のカタオモイは、ついに小春ちゃんにまで知られてしまった。
でも、そのお陰で思いがけず小春ちゃんに励ましてもらえた。これは嬉しい。小春ちゃんに励ましてもらうと本当に高まるんだよね。
いつだってポジティブな小春ちゃん。
そんな小春ちゃんに励ましてもらうのは久しぶりだ。そんな日が再び来るとは。ちょっと感慨深い思いではある。

でもね小春ちゃん、現状は難しいんだ。
舞ちゃんには心に決めた人がいるんだって・・・その人は、おじょ


「舞ちゃんに会いたいな」


「でも、そのうち会えるね。学園にいるんだから、舞ちゃん」

小春ちゃんが呟いたことに、熊井ちゃんが微笑んでいる。
その光景もまた、僕には軽い驚きとともに感慨深いものがあった。
この2人がいるこの空間が、こんなに優しい空気に包まれるなんて。
さっきまでの緊張感に包まれていたこの教室の空気とは思えない。

これは舞ちゃんのおかげなんだ。間違いない! さすが舞ちゃんだ。

先程までの修羅場が信じられないぐらい落ち着いた空間になって、冷静さを取り戻した僕は気付いたことがある。
いま僕の目の前にいる2人、今更だけど、2人ともとんでもない美人だな。
高校の教室で、こんな美人の人達と一緒にいられるなんて。これは本当に現実の出来事なのだろうか、と思うぐらい。
現実ならば、それはとても素晴らしい出来事に感じるはず。
なのに・・・あまり心から嬉しいという気分を感じないのは何故だろう・・・



「舞ちゃんに会ったときに聞いてみようと思ってるの。それで正解だったでしょ、って」

屈託の無い笑顔で小春ちゃんが言った。
話しが飛びすぎてて、僕には小春ちゃんの言ったことがすぐにはピンと来なかったけど、その笑顔を見ていると幸せな気分になった。
小春ちゃんのその笑顔は、見る人全てを幸せにしてくれるんだ。

舞ちゃんと小春ちゃんの2人か。
意外な組み合わせだけど、そういう人同士の方がかえって気が合うのかも知れないな。
いつか2人が再び会える日が来るといいな。
そして、2人が再会するところ、それはぜひ僕も見てみたいなんて思ったのだった。



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