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みんなの嗣永さん熱は想像以上で、私が仲間に入ったことによって、より結束が深まったようだ。


「いい、かりん。こうだよ。・・・・ウフフ♪」
「・・・ウフフ♪」
「おー、いいねー!」
「こゆびーむ♪」
「てか、サブ団員なのに、うちらよりももち上手いってどういうこと?早く軍団入りなって!」

先輩の呼び方はいつの間にか“ももち”にかわり、髪型はリボンつきツインテールが暗黙の了解事項。
小もぉ軍団は、着々と足場を固めつつあった。
私は準構成員だから、そこまで揃えはしなかったけれど、少し低い位置での二つ結びに、小さめリボン。これが仲間のしるし。

「あのさ、それで・・・嗣永さんって、本当に、おじょ・・・千聖お嬢様と、仲がいいの?」
「かりん、またその話ー?わかるけどさ、ももち先輩と千聖お嬢様じゃ、キャラ違いすぎてピンとこないっていうのは」

呆れたように言われるけれど、これは私にとっては、ものすごーく大事なことだから。
だって、もし大した仲じゃないのなら、彼女の模倣をするのなんて、はっきり言って全く意味がない。


「あ・・・見て、ちょうどよかった!かりん、こっちこっち!」

すると、窓際で外を見ていた友達が、急に慌てた声で私を呼んだ。


「どうしたの?」
「ほら、早く見て!」

手にしていた双眼鏡(なぜ・・・)を渡され、指さされた方向を見る。
高等部の屋上。覗いたレンズのちょうどいいところに、嗣永さんが映りこんでいる。

何か・・・こう接近状態で見てみると、ぶっちゃけ、小もぉを名乗るみんなとは可愛さのレベルが違う。
同じ格好して、同じような口調で、しかもこっちのほうがそれを許されるお年頃だっていうのに。
真っ白で陶器みたいな肌。横顔は意外とシュッとしていて、ある意味近寄りがたいオーラを発しているようにも見える。
そんなことを考えていると、その横顔が、ふいにこちらに向けられた。

「わあっ」

あちらからこっちが見えるような距離じゃないのに、嗣永さんの視線は、間違いなく私・・・というか、双眼鏡に向けられている。
そして、軽く目をパチパチさせながら、小首を傾げて“ウフッ”をかましてくる。・・・なんなの、この人。恐ろしい。


「ね、かりん?見えたでしょ?」
「え?」
「もー!だから、ももち先輩と、千聖お嬢様だって!」
「うそ!?」

あまりの嗣永さんのプロ(何のだ?)っぷりに、見逃してしまっていた。
慌てて双眼鏡を横にずらすと、そこに、千聖お嬢様がいた。心臓がトクンと鳴る。

柔らかそうな質感の小麦色の肌に、中等部の赤いリボンがよく映えている。
やっぱり、すごく可愛らしい。濃くて長い睫毛。形の良い小さな唇。品のある顔立ちっていうのは、こういうことを言うんだろうなってしみじみ感じる。

何となく、少し年上の友達・・・聖ちゃんのことが頭に浮かんだ。
顔が似てるわけじゃないけど、彼女の纏うオーラも、千聖お嬢様のそれと同じ種類のものだと思う。
例えば私のような庶民が、姿形を真似したって、同じにはなれないだろう。どこか無理があって、滑稽になってしまうというか。そもそも、スタートからして違うんだから。


「人の真似って、難しいね・・・」
「なーに?」
「ん、なんでもない」

レンズ越しの2人は、楽しそうにお弁当を広げていた。

嗣永先輩がお嬢様のお弁当にタコさんウインナーを放り込んで、代わりにミニハンバーグを攫っていく。
お嬢様はそれを、目を三日月のようにして見守っている。・・・こんな笑顔、見たことがない。


「かりん?」
「・・・うん、わかった。仲いいんだね、本当に」

あからさまにテンションが下がった私をいぶかしみながらも、みんなはまた、嗣永さんの真似の練習を始めた。
そんな中、私は頬杖をついて、また千聖お嬢様を想った。

今まで見た、お嬢様の表情。
初めて見たときは、とても悲しそうなお顔で怒っていた。
そして、その後何度か目にしたのは、何かに怯えているようなお顔。
それから、お取り巻きさんに囲まれている時の、困ったような微笑。・・・あんな、嗣永さんに見せるような、弾けるような笑顔は知らなかった。

せっかく新しい顔を見れたっていうのに、もやもやした気持ちが湧き上がってくる。
あんな素敵な表情、どうやったら引き出せるのか、見当もつかない。
だけど、ああいうつかみ所のないフシギちゃんなキャラが好きなら、私だって。
もともと演じるのは得意なほうだし、たったそれだけで、千聖お嬢様の気持ちを引き寄せられるのなら、たやすい事だ。


「ねー」
「どうしたの、かりん?」
「今日、学校終わってからリボン買いに行きたいな。おっきいやつ。付き合ってくれる?」



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