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給水塔のハシゴ。
わたしみたいなかよわい女の子は、こういうの苦手だにゃん。
でも、もぉ頑張って昇ってみるね。


もう少しで屋上に出るというところで、不意に歌声が聞こえてきた。


♪元気だよ~ 今は~すっかり元気だよ
あのころは~ ま ちょっぴり心配かけた~♪


このちょっとクセのある歌声。


舞ちゃんが歌ってる。


思わず、ハシゴの途中で止まって聞き入ってしまう。
舞ちゃんがこんな風に心をこめて歌っているのを聴けるなんて。
その歌声からは伝わってくるものが感じられる。
なかなか上手いな。
まぁ、このわたしの可愛らしい歌声にはかなわないまでも。


なんて思いながら聞き入っていたら歌声が止まってしまった。
そして、頭上から声が降ってきた。


「ももちゃん。ハシゴから小指が見えてるよ」


見つかっちゃったか。
ひょこっと顔を半分だけ出したら、こっちを見ていた舞ちゃんと目が合った。

「やっぱりここにいるんだ」
「桃ちゃん。部外者が学園に入ってきていいの?」
「もぉはいいんですぅ。舞ちゃんこそ授業はいいの?」
「舞はいいの。一時間目は出なくてもいい授業だから」
「相変わらずだねぇ。でも、そんな生活態度じゃいいんちょさんに怒られちゃうよ」
「桃ちゃんにだけは言われたくないよ!」


その反応が面白くて。
舞ちゃんをからかうのは楽しいね。
だから、「だいたい風紀チェックやってたはずなのに、どうやってすり抜けたんでしゅか」なんて呟いてる舞ちゃんをはぐらかして、話題を変えて更にいじってみる。

「聞いてたよ。やっぱり舞ちゃん歌うまいじゃん」

もぉが褒めてあげたというのに、そっぽを向いてしまった舞ちゃんからの返事は無い。
ありゃ・・ さっきからの流れがもぉ的に面白かったからって、ちょっとからかいすぎちゃったかな。
でも、だからといって不貞腐れてるって感じではなかった。


そっか。
ここ給水塔だもんね。
あの舞ちゃんが歌を歌ったりするぐらい、舞ちゃんの心が落ち着く場所。
だからなのか、話しを再開してきたのは、ここの主である舞ちゃんの方からだった。

「この場所で桃ちゃんに会うなんて。久しぶりのことでしゅね」
「そうだっけ? 前はいつ来たんだっけ」
「もう憶えてないよ、そんな昔のこと」

もぉが前にここに来たのっていつだったっけ?
そんな昔のことになるのかな。
でも、それよりもいま舞ちゃんに聞きたいのは、昔のことじゃなくて今現在のこと。

「舞ちゃん、最近はどうなってるの?」
「ふん。ちしゃとの奴、姉にしてくれっていう申し出があったからって、はしゃいじゃったりしてさ。全くガキっぽいんだから」
「いや、ちさとのことじゃなくてさ。舞ちゃんにちさとのこといちいち聞いたりしないから」
「?? じゃあ、何のことでしゅか」

その問いには何も答えず、黙って舞ちゃんの顔をじっと見つめる。

もぉのカワイイ顔に見つめられると、あの舞ちゃんでさえ心の平静を保っていられないようだ。
うん。まぁ当然のことだと思うけど。
こんなカワイイ子に見つめられたりしたら、そりゃあ誰だって、ねぇ?
そんな、もぉの可愛らしさに圧倒された舞ちゃんは、この桃色の空気に飲まれたのか自ら話しを切り出してきた。

「やっぱりあいつ、桃ちゃんの軍団の人間だったんだ」
「え? なんの話し?」

もちろん、いま舞ちゃんが言った言葉の意味ぐらい、ちゃんと分かってた。
いきなり話しを切り出して、何を言ってくるのかと思えば、それなんだ。
舞ちゃんは人の考えを先読みできちゃうから、そうやってもぉの先手を取ったつもりなんだろうけどね。
でも、いま舞ちゃんが切り出したこと、それって明らかに自爆でしょ。

ウフフ、舞ちゃんって、本当にかわいいな。
天才さんの、このアンバランスなところが、もうね。ホント、もぉにはツボだよ。

そんなこと思ってるのがバレたら舞ちゃん怒っちゃいそうだから、上から目線はほどほどにしておこうかな。

でも、そうか。
だいぶ落ち着いたって聞いてたけど、それなりに消化しきれてはいないんだな。
まぁ、そりゃそうだよね。

だから、舞ちゃんはあの少年の行動に対して、別の理由付けをしておきたいのかもしれないな。
あの少年がチョロチョロしてるのは「もぉ軍団の関係者」だからであって、自分に関係していることではないと。そう思いたいのか。
なら、そういうことにしておいても構わないけど。
それで舞ちゃんが自分の気持ちに折り合いをつけることが出来るのなら、それでもいいけどね。

私って本当に大人だなあ。
自分で自分のことを褒めてあげたくなる。

ま、実際は「面白いから」なんだけどねw
くまいちょーほどじゃないけど、こんな面白いこと、もうちょっと楽しませてもらいたいから。ウフフフ。
でも、もぉが聞いた最初の質問に対して舞ちゃんが思い浮かべたのは、やっぱり千聖のことか。
そりゃ当然だね。だって、舞ちゃんだもん。
この舞ちゃんに振り向いてもらうってのは・・・ よりによってまあ一番難しい相手を選んだものだね少年。
そのあたりのことはもう彼も分かりきってるみたいだし、是非あきらめないで頑張って欲しいゾ。ウフッ。


そんなことを考えていると、舞ちゃんはじっと、わたしのことを見てきた。
人の考えていることを探るような、心の中を見抜こうとする、その舞ちゃんの表情。

でもね、舞ちゃん。もぉはその辺の普通の人とは違うからね。
そう簡単には、もぉの考えていること読ませてあげたりしませんから。

ウフフ、舞ちゃん、お口が尖ってきちゃってるよ。
せっかくのカワイイお顔が台無しだよ。


「ふん、わざとらしい。やっぱり、もぉ軍団に関係してるんでしょ」
「え?関係してるのかなぁ。本人は必死に否定してるけど」
「だってそうじゃん。桃ちゃんがそんな面倒見るなんてさ」
「面倒見てなんかいないよ。もぉは人のことには干渉しない主義だし」
「じゃあ、なんで?」
「ウフフ・・・分からない?」
「な、なんだよ・・・」


「このもぉに興味を持ってもらえるなんてぇ、さすが舞ちゃんだねってこと」
「なんだよもう、そうやって舞のことをからかって。桃ちゃんってさあ・・・」
「ウフフフ」

舞ちゃんとお話しをするのは楽しい。
一から十まで言わなくても、言葉の断片で言わんとすることを察してくれる。
そんな高度なレベルでのやり取りが楽しめるから。

「もぉはね、舞ちゃんがいま何を思ってるのか、それを知りたかったの。だから、今日まず最初にここに来てみたの」
「舞のことを? 桃ちゃんが?」
「そうだよ。で、それを聞くこともできたことだし、そろそろ学園の偵察の続きに出発しようかな」
「は? 聞くことができたって、大して話しなんかしてないじゃん」
「もう十分だよ。しっかりと感じることが出来たから」
「これだけの会話でもう十分わかったとか、桃ちゃん怖いよ」

サトリの舞ちゃんにそんなこと言われるなんて光栄だにゃん。

さて、そろそろ行くとするか。
その前に、舞ちゃんにはひとつだけお願いしておこうかな。

「いい、舞ちゃん? この学園の未来は舞ちゃんにかかってるから。頼んだよ、しっかりね」
「桃ちゃんにお願いされてもなあ・・・」

舞ちゃんは頭の後ろで手を組んで空を見上げた。
もぉが今舞ちゃんにそんなことを言ったのは、ちさとがこんなこと言ってたのを思い出したから。

(最近、舞は生徒会のこと色々と考えてるみたいなの。疲れてなければいいのだけれど)

あの舞ちゃんが生徒会に入ったと聞いたときは驚いた(しかもくまいちょーと同じ部署なんだってw)
頭のいい舞ちゃんのことだ。いろいろなことに気付いてそれを自分なりのやり方で改善しようと考えているんだろう。

過保護だね、ちさとは。
舞ちゃんみたいな子は多少の負荷がかかっている方がやる気も出してくれるってもんだよ。
だから、舞ちゃんにハッパをかけてみたってわけ。


「さて、もう行かなくちゃ」
「え? 行くってどこへ?」
「あれ? もっと一緒にいて欲しかった?」
「違うよ! このあとも学園の中をうろつくつもりなのかってこと」
「もぉは行くところが一杯あるんだよ。視察しなきゃならないところが多くてね。人気者だから忙しいのはしょうがないかぁ」

舞ちゃんが何か思案顔になった。
真顔になってもぉのことを見つめてくる。
何か言おうかどうしようか迷ってる感じ。舞ちゃんにしては珍しいな。

「ももちゃん、あのさ・・・初等部のね・・・」
「ん? なに?」
「・・・あ、いや、何でもない。舞のひとりごと。気にしないで」
「そう? なら聞かなかったことにするけど」

ま、舞ちゃんが言おうとしたこと、実はそれとなく分かるんだけどね。

・・・初等部、か。

この学校は相変わらず面白い事が一杯だね。
卒業してもこんなに楽しませてくれるなんて。本当に素晴らしい学校だ。
入ったばかりの頃は、そんなこと全く思わなかったのにね。
今となってはちょっと勿体無かったかな。



「じゃあね、舞ちゃん! 授業もちゃんと受けるんだよ」
「桃ちゃんこそ問題起こさないでよね。生徒会の仕事を増やしたりしないでよ」
「舞ちゃんの口からそんな言葉が出てくるなんて、もぉは嬉しいよ」
「まったく・・・ この後はどこに行くつもりなの?」


「まずはちさとの授業風景でも見学してこようかな。ちゃんと授業についていけてるのか確かめなきゃ」
「部外者が教室に入れるわけ無いでしょ」
「選択科目の授業なら一人くらい潜り込んでも分からないんじゃない。もぉならまだまだ高校1年生でも通用するほどピチピチしてるし」
「よく自分でそんなこと言えるね」
「ウフフ。じゃあね、舞ちゃん」


舞ちゃんが苦虫を噛み潰したような顔で見送ってくれる。


久しぶりに舞ちゃんとお話しができて楽しかった。

舞ちゃん、まだ中学3年生なんだよね。
改めてそう考えると、この子の凄さがよく分かる気がした。

だって、もぉの得意とする心理戦で対等にやりあってくる中学生なんて舞ちゃんぐらいだ。
この子が高等部を卒業するまで、まだあと4年もあるのか。末恐ろしいな。
その頃にはどんな子になってるのだろう。
まぁ? かわいさでは相手が中学生だろうともぉの方が全然負けてないし、4年後だって負けないけどね、うふっ。

さて、じゃあ次はちさとの教室にでも行ってみるか。
ちゃんとまじめに授業受けてるのかな。相変わらず窓から外ばかり見てるんじゃないでしょうね。
桃ねぇちゃん、しっかり確かめさせてもらうからね。ウフッ。



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