※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。



楽屋の雰囲気が悪い。

メンバー間で何があったわけでもない。
でも、流れている空気はかなり張り詰めている。

「はぁ~あーもう。ムカつくんだけど。」

さっきから何度目かの大きな独り言が、千奈美の口を突いて出た。
「ちぃ、どうした?」
すぐにみやとキャプテンが、千奈美の機嫌をとり始めた。
千奈美は時々、私生活であった嫌なことを引きずって仕事場に来る。
いつもはムードメーカーで元気に振舞っているから、千奈美がこうなるとベリーズ全体に影響が出てくる。
根っからワガママな子じゃないし、ああして誰かがなだめればすぐに解決するのだけれど、正直私はそのことを快く思ってはいない。だから、ご機嫌とりの役はずいぶん前に放棄してしまった。

ここにいても仕方ないか。今日はキュートもいるらしいし、あっちの楽屋でも覗いてこようかな。
久しぶりに千聖の「桃ちゃぁーん」が聞きたいし。



「えー何?ももどっか行っちゃうの?ここは空気が悪いって?とぅいまてーんねー。」
扉の前で振り返ると、頬づえをついた千奈美が目を細めて私を眺めていた。
もー。絡まないでよ。
ちょっとちぃ、とキャプテンが宥めようとしているけれど、こういう時に強く言い切れないタイプなのはわかりきっている。
私がニコニコしてごめぇんとか言えば済むのかもしれない。実際それで切り抜けたことも、あるといえばある。
でも、今日はあいにく私もそんな気分ではないのだった。

「仕事とプライベートぐらい分けたら?高校生にもなって、一番子供じゃんそういうとこ。」
思わず毒づくと、千奈美の顔色が変わった。
「もも!今のはないよ。ちぃに謝りなって。」
「あーいとぅいまてーん」
「ちょっと!!マジむかつく!何あの顔!てかみんな笑うとこじゃないんだけど!」

思いつく限りで一番憎たらしい変顔を披露して、千奈美の怒号を背にさっさと楽屋を出た。


別に私と千奈美は、取り返しがつかないほど険悪なわけじゃない。
仲いい時はいいし、千奈美のくったくのなさには救われることも多い。
ただ、根本的な考え方や価値観が違い過ぎるから、こうやってたまにひどくぶつかることも結構ある。

・・・まぁでも、今のは私も悪かったかな。大人げなかった。頭冷えたら、軽く謝っておこう。


「あれ・・・梨沙子?」

キュートの楽屋の前まで行くと、梨沙子が所在なさげに扉の前をウロウロしていた。
ベリーズの方にいなかったから、てっきりこっちに入り浸ってるのかと思っていたんだけれど・・・

「入らないの?」
「あ、うん。あー、うー・・・」
梨沙子はモゴモゴ言いながら、私の様子を伺うようにじっと見つめてきた。
「どうかしたの?」
「もも・・・ちょっと、こっち。」
歩き出した梨沙子の横に並ぶ。
「どこ行くの?」
聞いても生返事しか帰ってこない。

しばらく歩いて、誰も使わないような古い自販機の前で梨沙子が足を止めた。
「何だ、もういない。」
残念そうに呟くと、また何か言いたげに私を見た。

「ももはさぁ、千聖と仲がいいよね?」
「うん、仲良しだよ。」
「うーん。あのね、これは例えばの話なんだけど、最近千聖がお嬢様キャラに変わったって聞いたことある?あ、例えばだからね?それで、前の明るい系の千聖に戻る練習を舞ちゃんとしてるとか。全部例えばなんだけど・・・・」


うん、梨沙子。それはたとえになってないよ。

「ようするに、千聖が何かの理由でお嬢様キャラになっちゃって、元に戻るように舞ちゃんとここで特訓してたのを梨沙子が見ちゃったってこと?」
「あばばばばばば」
「なるほど。」
梨沙子の言うことが本当なら、すごい話だ。あの千聖がお嬢様キャラって。
ドラマや漫画じゃあるまいし、まだ半信半疑だけれど。


「梨沙子この話、他の誰かにした?」
「う、ううんまだ。何かももすごいね。探偵みたい。」
「・・・。じゃあ、約束ね。これはももと梨沙子だけの秘密。愛理に知ってるか聞くのもだめ。OK?」
梨沙子はちょっと不満そうだったけれど、しぶしぶうなずいた。



TOP