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「遅っ!なっきぃ、遅っ!」

私たち2人の“いつものカフェ”の“うちらの席”で、お行儀悪くストローを噛んだままの千聖が、大げさに手招きをしてきた。
今日は、明るい方の千聖か。服装はバッチリ女の子っぽいし、もしかしたら途中で入れ替わったんかもしれない。


「ちょっとちょっと岡さーん。まだ5分前だし。いつも私を待たせてるのは誰だっけー?」
「え?何?聞こえない。それよりほら、早く座れよ。そんなとこ立ってると、お店の人通れないじゃん」


――もう、アイドルなのに、何て言葉遣い!
でも、髪をばっさり切ってイケメン度が増した今の千聖には妙にハマッていて・・・得意げなその顔に、注意をする気も失せてしまう。


「メープルラテでいいんでしょ?もう頼んだから」
「あいよ。どうもね」

せわしなくテーブルの上を拭いたり、私のお水を寄越してきたり。
相変わらず、暴君なんだかお姉ちゃんなんだかよくわからない。
何年もそばにいるのに、その毎日くるくると変化するキャラクターは見飽きる事がない。


「よかった、なっきぃ暇してて。
もう家出ちゃった後にさ、マネージャーさんから電話来てさ、打ち合わせの時間少し遅くなるっていうから」
「キュフフ、まー、今日はたまたま空いてたけどぉ。さきも結構忙しいんだよねぇ」
「嘘付け。お前仕事ないとき、いっつもめちゃくちゃ暇してんだろ」


・・・ま、それはおっしゃるとおりなんですけど。どうせ友達いない芸人ですよ、私なんて!

「いやー、本日はですねぇ、中島さんに見てもらいたいものがありまして」

運ばれてきたラテに口をつけていると、唐突に千聖はバッグの中をゴソゴソと漁りだした。


「なーに?誕生日プレゼントかな?」
「・・・すんません、まだ買ってないでおじゃる(3月現在)てか、そんなことよりほらこれ!」


私のかわゆいおねだりをバッサリ無視した岡井さん、取り出したデジカメを、ずいっと鼻先に突きつけてきた。


「・・・ん?何これ」

そこに写るのは、移動中の車内で眠りこける舞ちゃん。
ポッチャマのタオルを口元に押し当てて、実に気持ち良さそうだ。


「萩さんがどうかしたの?」
「超絶可愛いだろ、この舞ちゃん」
「・・・うん、可愛いね。いや、可愛いですけど」


ぷくぷくほっぺを軽く膨らませて、隣によりかかる舞は、赤ちゃんみたいで癒される。
だけど、真昼間のカフェで、目じりを下げて惚気るほどのことなのか?相変わらずよくわからん子だ、千聖ったら。


「てか、普通じゃない?」
「は?舞の可愛さ普通じゃねーし」
「じゃなくて、舞はいつも可愛いじゃん。この写真の舞だけが、飛びぬけて可愛いとは・・・」
「これさ、舞によっかかられてるの、千聖なんだよね」
「・・・ふーん」


別にそれぐらい、私だって・・・と思ったけれど、余計な事は言わぬが花。
顔を綻ばせる我が親友の、次の言動を待ってラテを啜る。


「これさ、あいりんが撮ってくれたんだよねぇ。
舞と千聖、お似合いだって言ってくれたよ!もう付き合っちゃえば?だってさ。てか付き合(ry」


それは・・・たぶん、舞美ちゃんと“そういうアレ”をするなという、黒愛理さんからの警告なのではないでしょうか。
2人ともバk・・・いや、天然気味なところがあるので、バレてないと思ってるみたいだけれど、結構スタッフさんたちへのフォローとか大変なんですよ、私たち。舞は拗ねて絶対協力してくれないし。

「千聖はどうしたいの?」
「ん?」
「舞と付き合うの?」


まあ、ちょうどいい機会だから、少し突っ込んだ話もしてみるか。
幸い、店内には私たち以外誰もいない。半個室みたいな構造の席だから、ナイショ話にはもってこいだ。


無邪気で隠し事のできないタイプ。
千聖はそんな風に思われがちだけれど、実際は少し違う気がする。
聞けば何でも答えてくれるタイプではあるけれど、・・・そもそも、聞かれたくないことは“質問させない”。
言葉を介さずに、そういう魔法のような事をやってのける。だから、聞きたいのに聞けないことって、何気にたくさんあったりする。


「舞と付き合うならさ、・・・舞美ちゃんの、あれはどうするの」
「あー・・・それ、聞いちゃうんだ」

案の定、そういう質問は受け付けていなかったらしい。
でも、怒るほどでもないと思ったのか、しばらく考えてから千聖は口を開いた。

「ぶっちゃけ、よくわかんない」
「そっか」
「千聖はさ、舞美ちゃんのこと好きだよ。
でも、お嬢様のときの自分が、舞美ちゃんを好きだって言うのとは違う意味だと思う。言ってることわかる?」
「うん。たぶん。」

そう答えると、千聖は少し安心したように笑った。

「もちろん、お嬢様のときの千聖も、自分自身には違いないし・・・そういうことしてる最中に、いきなりこっちの千聖に“戻った”時は、舞美ちゃんを見てると、嬉しいような泣きたいよう気持ちになるの。えりかのときもそうだった。
これは、お嬢様の千聖の気持ちが、千聖の中に残っているからなんだろうね」
「難しいね・・・」
「だけど、いつかはやめなきゃならないってわかってるし。舞美ちゃん優しいから、受け入れてくれてるけど、多分、千聖たちのやってることは間違ってる。
こういうのは、簡単にしていいことじゃない。んー、でも、お嬢様の千聖にとっては簡単じゃなかったのかな・・・いや、だけど・・・
あたしの言ってること、おかしいかな?なっきぃ」

千聖は黒目がちな目で、私をじっと見た。
今まであまり口にしていなかったことだから、その分思いは胸の中で燻っていたようで・・・千聖はほっぺたを紅潮させて、その気持ちを一気に放出してくれた。


「・・・ううん、おかしくないよ早貴もそれでいいと思う」

だから、私も千聖をまっすぐに見返した。

「本当?あー、なんかなっきぃがそう言ってくれると安心するわぁ」

途端に、褒められた犬みたいに表情を緩める千聖。・・・もう、この笑顔にだまされちゃうんだよなあ、しょうがない奴め。


「・・・舞のことなんだけどね」

飲みかけのスムージーをシャリシャリと崩しながら、千聖は唐突に話題を変えてきた。

「さっきも行ったけど、最近、舞が可愛くてたまらん」
「あー、ラブラブ期なんじゃね?ちさまい、いっつもラブラブとぎすぎす繰り返してんじゃん」
「ま、そうなんだけど。今までよりより可愛く感じるんだよね。何か、めっちゃ甘えてくる」

でへへと頭を掻く千聖。完全に彼女自慢じゃないですか。むしろ、え?付き合ってなかったんですか?という逆方向の疑問を持つ人まで出てきそうなノロケだ。


「レッスンの休憩中とかさ、千聖がちょっとどっか行って戻ってくると、怒るんだよ。舞に言わないでいなくなんないでよ!とかいって。
あと、お昼の買い物も絶対ついてくるし。あと、千聖のね・・・」


延々と続くノロケを聞き流しながら、私は昨日、舞に言われたことを思い出していた。


“最近、ちしゃとがかわいくてたまらんのよ”


――こぉんの、似た者コンビが!アホか!やってられんわ!仲間に入れろ!三馬鹿だろうが!


「きぃてんのかよ、ギョカイ!」
「へいへい、聞いてますって」


――そして、あのとき舞はこうも言っていた。


「舞はハワイで、大人になる予定でしゅ。なっちゃん、もちろん協力してくれるよね?」


そう。
数日後に控えた、ファンクラブイベント。その開催地であるハワイで、舞は何か恐ろしいことを考えているようなのだった。
大人になるって何?大人になるって、難しい!大人ならばジリリキテテも泣かないの?大人より率直にたくさん恋できちゃう感じ?


いつだったか、舞が千聖に手錠をかけて、わいせつな行為を働いた事件を思い出した。
恐らく、千聖は私がそのことを知っている、ということを知らないだろう。
だから今、舞の企みについて言及するのは難しいんだけれど・・・三馬鹿のリーダーとして、ノーモア痴漢行為は絶対的な目標なのである(ケロキュフッ)

これは、舞とも一度きっちり話さなければ・・・と、マシンガンのように語り続ける千聖を見ながら、ぼんやり思ったのだった。



今日はここまで
今回のは半選択小説のような形にしてみたいのですが
舞様のお望みになっている組み合わせを選んでいただけたらと思います

舞様のターゲットは
A.リ ・一・リ
B.リ*・一・リ

舞様のお望みは

1. まいがちしゃとをムフフフ
2. ちしゃとが舞をムフフフ

というわけでアルファベットと数字を組み合わせて御意見いただけるとうれしいです
レスのほう遅れててすみません・・・できたら今週末には!

148
チン師匠乙です
久しぶりに師匠の変態モード炸裂でせうかw
舞様としては3年前の誕生日の続きを何としてもと思っているでしょうから
ここはやはりB-1しかないかなあ

151
忙しそうですね乙です
A-1がいいかなあ

153
A-2に1票

156
B-2に1票
こっちのほうが想像がつかなくておもしろそう

169
小説のリクエストが綺麗に割れてるな
全組み合わせに1票ずつとかw

170
いまさらだがAとBの違いはなに?
Aが通常ちさとでBがお嬢様ちさとで良いのかな

171
それでいいと思う
*が付くとそれがお嬢様千聖を表現しているはず

172
どうもありがとう
ではB-1に1票
ここは舞様にとことんがんばってもらおう



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最終更新:2013年11月24日 10:14