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全・然・納・得・いかないな。



「愛理?どうしたの」
「ううん。」

私の知らない間に、この数日間いろいろなことがあったみたいだ。
舞ちゃんと千聖が楽屋を出た後、舞美ちゃんを中心に当事者それぞれが話をしてくれた。

「・・・だからね、みんな。悪いのはなっきぃだから。舞ちゃんのことは責めないで。」
「なっきぃ。これはみんなが悪いんだ。舞が出してたサインを誰も拾ってあげられなかったから、あんなことになったの。
舞も本当に反省してる。まだいろいろ整理できてないことはあるみたいだけど、ちゃんと今の千聖と舞なりに向き合ってみるって。今2人はその話してるんだよ。」

要は、千聖にひどいこと言った舞ちゃんを許せってこと?反省してるからって?
そんなに単純な話なのかなぁ。

今日の千聖の、尋常じゃない真っ青な顔と目の下の隈を見ていたら、千聖がどれだけこの件で傷ついて悩まされたのかおのずと伝わってくる。

私は頭を打って変わった千聖のことを、それまで以上に大切に、そして慈しむ気持ちで見守ってきていたつもりだ。
活発で天真爛漫な千聖も大好きだったけれど、柔らかく優美で儚い心をもった今の千聖には、ある種の同調と羨望の念を抱いた。だからいつでもそばにいて、千聖をなるべく痛みから遠ざけてあげるようにしていた。

・・・舞ちゃんが前の千聖を恋しく思っていて、その気持ちがよくない方向に傾いていたのはわかっていた。
それでも私や栞菜が守っている限り、直接手出しはしてこないと思っていた。

油断していた。

舞ちゃんに問い詰められて、どんなに怖かっただろう。
自分のせいじゃないことを責められて、どんなに苦しかっただろう。

そのことを考えるだけで、私の中に黒く凝った感情が湧き上がってくる。
どうも、舞ちゃんをはいそうですかと簡単に許せないみたいだ。
最年少?私や千聖とたった1歳違うだけじゃないか。そんなの舞ちゃんの振る舞いを許す理由になんてならない。

たまには私が我を張らせてもらったっていいだろう。

「舞美ちゃん。悪いけど私は、舞ちゃんとは少し距離を置かせてもらうから。・・・今舞ちゃんが千聖に見せてる、千聖が前の千聖に戻るためのマニュアルっていうのにも私は何にも書かない。私は今のままの千聖がいい。」
「え、な、愛理?」

全く想定してない答えだったらしく、舞美ちゃんは口をぱくぱくさせている。

「・・・愛理がそういうなら、私も。」
栞菜がおずおずと手をあげて、腕を絡めてきた。

「昨日、ちっさーにキュートを辞めるべきかって相談されたの。」

「「「「えっ!」」」」



それは知らないよ、栞菜。そういう大事なことは早く言おう。

「今すぐに決めるわけじゃないっていうから、一応黙っていようと思ってたんだけど。でも、私も愛理と同じ。舞美ちゃんの言うことはわかるんだけど、まだ納得しきれない。
みんな、舞ちゃんに甘いよ。
それに・・・お嬢様ちっさー、すごく魅力的だし、無理に元に戻らなくてもいい気がする。」

さては様子見てたな、栞菜。コウモリめ。
でも私たちの気持ちは概ね一緒のようだから、ここは手を組ませてもらうことにした。

「というわけなので、私たちはこれまでどおり、お嬢様の千聖を支持します。仕事面でのキャラ作りのサポートはするけど、それ以上はしないから。」
「ちょ、ちょっと・・・えーどうしよう・・・」
「栞菜ぁ。愛理も、ワガママ言わないでよぅ。キュートのためじゃない。」

舞美ちゃんとなっきぃはかなり必死に舞ちゃんを擁護しているけど、えりかちゃんはさっきから何も言わない。
天然なようで重要なところは結構冷静なえりかちゃんのことだ。自分があんまり事態を把握していないことについては、必要以上に口を挟まないというスタンスなんだろう。

「これはワガママじゃないよ。キュートが団結するのはいいことだけど、皆が同じ意見を持たなきゃいけないなんて絶対間違ってる。よって、われわれはここに、お嬢様千聖を支持することを誓う!!」


カ゛チャ。


「・・・・・愛、理?」

ハイになった私が栞菜とともに椅子に上って高らかに宣言したのとほぼ同時に、舞ちゃんと千聖が楽屋に戻ってきた。



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