ギュフ~!!!!!
静かなハワイの夕暮れを、お下品な絶叫が真っ二つに切り裂いた。
「うるさい、騒ぐな!お前なんか、お前なんか!」
「やめるケロ、やめるケロ!」
今、私の非力な両腕は、ギョカイのヒレ・・・もとい、憎たらしいほどすらっと長い、ナカジマのおみあしをガッチリと抱え込んでいる。
「ベランダから落としてやるから。母なる海へと還るがいい。今までお世話になったでしゅ。貴様の笑顔は忘れないでしゅ」
「いやああああ」
私と千聖と、ナカジマ。
仲良し3馬・・・いや、3トップのこの部屋は、現在、なかなかの修羅場となっている。
ラブラブ買い物デートを終え、千聖を伴ってここに戻ってきたところ、ナカジマの野郎、またぶちかましていたのだ。いつものアレを。お○っきぃを。これから3人で過ごす、この、お部屋で!!!!!
「クソが・・・気持ちよかったかよ、ハワイの(自主規制)は」
「ええまあ、さすがメリケン製のオモチャは・・・ああ、嘘です嘘です、調子のりました、許して!」
こいつ・・・誕生日以降、オトナなあたし(ケロキュフッ)を演出しまくっていると思ったら、さっそく18禁に手をだしやがって。
ドアを開けた瞬間のあのアヘ顔、撮ってブログにあげてやりたかったぐらいでしゅ。
「いやあああ、落ちるー!」
「大丈夫!そのまま泳いで帰れ!埼玉に!」
「ねーし!埼玉海ねーし!」
「・・・うふふふ」
そんな私たちのやりとりを、しばらく黙ってみていた千聖は、いきなり楽しげに笑い出した。
「ん?どしたの?」
「ギュフッ!」
ああ、なんて無邪気な笑顔。可愛すぎるので、とりあえずギョカイさんの足はポイッと投げ捨てて、俺の嫁が座るベッドの横に腰掛ける。
「うふふ、早貴さんもこちらへいらして」
「い・・・いぢめる?」
「ああん?・・・ああ、あなたはそっちのオ○ベッドに座ってね」
「お・・おなべ・・・」
よれよれのなっちゃんが、涙目で私たちの目の前に正座をする。
「・・・この度は、私ナカジマのハワイはっちゃけ病のせいで、関係者各位に大変なご迷惑をおかけしたことを・・・」
「いや、マジ信じらんないんだけど。つか、何で鍵開けたままそういうことするかな。どうすんの、スタッフさんとか入ってきたら!」
一応、うちらの中じゃお姉さん的存在みたいな面構えのくせに、変なとこ抜けてるんだから、なっちゃんって!
私の指摘で今更羞恥心がこみ上げてきたのか、涙目になってる。・・・あ、いいですね、舞そういう表情大好き。
可愛い嫁がそばにいなかったら、もっと追求してやりたいところだけれど、まあ、今日はこの辺にしといたるわ。
「うふふ、そんなに責めてしまっては、早貴さんがお気の毒だわ、舞さん」
俺のちしゃともこう言ってることだし、ね。
「せっかくこんな素敵なところへ来たのですもの。千聖は、早貴さんのお気持ちがわかるわ」
千聖はスッと腰を上げると、なっちゃんの横に座りなおした。
「千聖ぉ」
「あらあら、ウフフ。そんなお顔をなさらないで」
三日月の可愛らしい目に、スッと光が灯る。
「・・・せっかくのハワイですものね」
――ドサッ
「・・・・・・・え?」
ベッドの上に、何か落下したような音。
と同時に、視界から2人の上半身が消えた。
「キュフフ、ち、千聖、やめるケロやめるケロ」
「うふふふふ、早貴さん」
なっちゃんの上半身に覆いかぶさるようにして、手をもぞもぞさせてる千聖。
沈むベッド。悶える魚介類。私の怒りが有頂天。
「ナカジマー!!!」
「え待ってほんとに違うのこれはあっちょっとやめ千聖耳は耳はあふん」
「舞さんも、こちらにいらして」
器用に上体を捻った千聖と、その丸い肩越しに目が合う。
ばかちしゃとにはできない表情、鈍い眼光。思わず息を呑む。
「早貴さんが、恥ずかしいなんて思わないように、私たちも一緒に・・・ね?」
――あれ?何だこの展開。
今日は私が、可愛いちしゃとをああしてこうして、大人の階段を2人で上るはずだったのに。
「なーかーじーまー」
「ギュフッ!だからこれはあひぃそこはだめケロいやんばかん」
「うるさい!変な声だすな!」
手始めに、右のおちちをむぎゅっとやってみせる。・・・あれ、意外とおっき・・・いや、最近、舞だって育ってきてるし!舞のπは舞が育てた!
「なんだ、こうしてやる!」
「いだだだやめるケロちぎれるケロ」
「あらあら、舞さんたら。そんなふうにしてはだめよ。もっと柔らかく、こうして・・・」
「あフん」
「変な声出すなよ!」
おかしい。
本当なら、私とちしゃとがこれをしているはずだったのに・・・onskちゃんのせいで台無しだ。
俺の嫁は可愛くて恥ずかしがりやさんで萌えの塊だけど、同時にとんでもない℃スケベでもあるのだ。
その本能を、こんな形で呼び覚まさせるとは。どういうつもりだ、舞の計画知ってるくせに!
「キュフゥ・・・」
なっちゃんの体から、ぐったりと力が抜けていってるのを感じる。
千聖のテクニカルなファインプレーと、私のラフプレーにより、もはや虫の息のようだ。
よし、この調子で(精神を)天国に追いやれば、やっとちしゃととのアレにこぎつけるんじゃないのか?
しかも、こんなことの後だから、結構いいムードだったりして。
「オラッナカジマさっさとi」
――ぴんぽーん♪
「ああん?」
ふいに、部屋のベルが鳴らされた。
思わず、千聖と目を合わせる。
「まーい?ちっさー?何か悲鳴聞こえたんだけどー?なっきぃ?」
「・・・げっ」
ドアを壊さんばかりにドガンドガンと全力で叩いて、私たちの安否を気遣うのは、御存知・全力リーダー。
「まあ、舞美さん・・・」
千聖の目の輝きが、色欲のそれから色恋へと瞬時に変化する。
「ちっさー?(ドンドンガゴンガゴンドガバギ)」
「はい、ただいま・・・」
「だめ!」
反射的に、千聖の前に立ちはだかる。
「舞さん?」
きょとんとした、何にもわかってないようなリアクションが悔しい。
あんなに嬉しそうな顔して・・・そんなにいいのか、おねーちゃんのほうが!
「舞が出るから、あっちでギョカイにとどめでもさしてて?」
「ええ・・・わかりました」
「ウフフキュフフ」
「舞ー?開けるよ!開かないけど、私がんばって開けるから(ズガンドカン)」
「・・・おねーちゃん、ドア壊れちゃうから。今開けるし」
――なんとしても、追い払わねば。
私は顔を引き締めて、ドアのノブに手を掛けた。
最終更新:2013年11月09日 13:56