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「あー、ごめん。ちょっと今取り込んで・・・ちょっと、お姉ちゃん!」

おそるおそるちょびっとだけ開けた扉に、舞美ちゃんが足を突っ込んできた。
まるで、ドラマに出てくる悪徳セールスマンのようだ。なのにお顔はいつものニコニコな舞美ちゃんのままで、不気味なまでに存在感を際立たせている。

「よかった、舞、無事だったんだね!悲鳴が聞こえたから、どうしたのかなって愛理と来たんだー」

見れば、後ろにカッパさんもいらっしゃる。
ただし、まったく興味なさそうに、ケータイいじりながらだけれど。


「ちょっとなっきぃがはしゃいじゃってたから、千聖と2人がかりで止めてただけだから。もう平気」

まあ、嘘ではないし、こんなところで納得してくれないだろうか。
そう思って、お姉ちゃんを上目づかいに見遣る。


「・・・おーい、舞美ちゃん?」

だけど、舞美ちゃんは私の方を全然見てくれていなかった。
ベッドルームと廊下を隔てる、ガラス扉。
その向こう側――つまり、ちしゃととギョカイがキュフキュフ中の、その場所を、綺麗なアーモンド型の目でジーッと。

「ねえ、もう舞たちの部屋は大丈夫だから。ね、舞美ちゃん」
「うん、大丈夫大丈夫!あはは」


一体、何が大丈夫なんだろう。お互いに。
まったく噛み合わない会話にもあまり構わず、舞美ちゃんは今度は、強引に上半身を部屋の中に捩じ入れてきた。

制止する間もなく、そのまま大きな声で呼びかける。

「ちっさー?」
「待って!今ちしゃとはちょっと」
「ちっさー?やじーだよー」

だめだ、全然聞いてくれない。
愛理は相変わらず絶賛無関心の御様子だし、こうなったら私が!


「うりゃああ」
「お?お?舞?」

低く構えて、舞美ちゃんの腰に頭を突っ込んでいく。

「えー、お相撲ごっこするの?あはは、負けないよー!とかいってw」


おお・・・岩のように硬い腹筋。だけど、私は引き下がるわけにはいかないのだ。

「この部屋に入りたかったら、舞をたおくぁwせdrftgyふじこlp」
「どりゃー」

はい、予想通り。
私のキメセリフは途中でぶった切られ、気がつくと、冷たいフローリングに無様な格好で倒れていた。
痛くないよう、玉ころがしのようにコロンとスッ転ばしてくれたのは、全力リーダーなりの優しさだろうか(全然嬉しくないけど)。

「あはは、それじゃあおじゃましまーす」

舞美ちゃんの大きな手が、ドアノブにかけられる。

「だめー!」
「・・・うふふ、ごきげんよう、舞美さん」

だけど、扉が全開になる前に、向こう側からぴょこんとちしゃとが顔を覗かせた。
黒目がちの瞳が潤んで、らんらんとしている。・・・大変、興奮状態なのが見て取れる。

「ちしゃと、なっちゃんは?」
「うふふ、あちらでお休みになっているわ」

ああ、そうですか。つまり、召されたわけですね。あいかわらず、すごいテクニックでしゅ。
天性の才能なのか、誰かに仕込まれた(リl|;´∀`l|)のか知らないけど、今この場にいない人を責めても仕方がない。

「仕込んだのは舞美ちゃん、っていう線もありますぞ。ケッケッケ」
「カッパさん、そういうのやめてもらっていいですか」

いつの間にか後ろに回っていた、愛理が耳元でささやいてくる。
どーでもよさそうな顔してるくせに、こういう時だけは楽しそうなんだから、こいつめ。

「だってほら、見て」

促されて視線を千聖と舞美ちゃんに戻すと、ちょうど舞美ちゃんが、ベッドにぺたんと腰をおろしたところだった。


「おいで、ちっさー」
「はい」

ぽんぽんと叩いた膝に、千聖があごをのっけて甘える。
頭を撫でられて、クフフと嬉しそうに目を三日月にする。

――犬だ、と思った。
顔立ちも相俟って、完全にワンワンとご主人様のようだ。
千聖の金茶の髪を、舞美ちゃんの大きな手櫛がわしゃわしゃとすべって、とても気持ち良さそうな顔をしている。後ろには情熱的なポーズのままぶったおれてるなっちゃんつき。

「・・・なんなら、千聖となっきぃのほうが、いつもやらしーことしてそうな感じなのにね」

愛理がさも楽しそうに、ケッケッケと笑いながらつぶやく。

「舞美ちゃんは強敵だねぇ、舞様」
「なんでよ。なっちゃんと千聖のほうが・・・なんでしょ?愛理的には」
「だからだよぅ。だってね、今だって、ああやって、ほら」
「ん?・・・うわああ!」

愛理とだらだら喋っているうちに、事態は思わぬ方向へ動いていた。

クンクンと鼻を鳴らして、舞美ちゃんの膝で和んでいたはずの千聖。
それが、今は“ふくじゅうのポーズ”みたいに仰向けになって、顔を近づけあっているのだ。

「ちっさー、可愛いね。ちゅーしてもいい?ちゅーちゅー、とかいってw」
「あら、うふふ・・・」

髪を撫でていたはずの長い指が、千聖のみみたぶをなぞってうなじへと移動していく。
えりぐりの開いたワンピースの背中に、舞美ちゃんの手の形がくっきりと浮かんで、千聖がため息とともに体をのけぞらせた。

「上・・・はずしていい?」
「ん・・・でも」
「キュフフ・・・はあはあ」

起きたのか、ナカジマ。そしてまた励むのか、ナカジマ。・・・いや、そんなことより!


「ケッケッケ、舞美ちゃんと千聖にとって、“こういうこと”は、ジャレあいの延長線上にあるみたいだからねぇ。だからこうやって、ウチらの前で平気でやってみせちゃう。
あっ、今度はふともものほうへ手が!」
「・・・おねーちゃん!ストップ!」



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