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突然、目の前に現れたその人物。
く、く、く、くま、くま・・・

「やっと見つけたよ。探してたんだ」


な、な、なんで熊井ちゃんが地元でもないこんなところに!?

「あれ? 千聖お嬢様? なんで一緒なの?」

千聖お嬢様がいることに驚いているということは、さっきの「やっと見つけた!」ってのは、その対象は僕のことなのか。
急激に恐怖心がこみ上げてくる。

「く、く、くま、おま・・・・」
「ウフフフ、ごきげんよう。大きな熊さん」

お嬢様は突然あらわれた熊井ちゃんを笑顔で迎え入れている。あぁ、お嬢様。

楽しい時間は、どうやらここで終わりのようだ。さよなら、僕の美しい思い出。
僕の楽しみを奪い取っていくのはいつだってこの人、熊井友理奈。

「思ったより追いつくのが遅くなっちゃった。だって、来る途中でちょっと人を助けてきたから」
「人を助けてきた?」
「そうだよ。駅前でお腹を押さえながらうずくまってる男の人がいたから助けてあげてたんだ」
「まぁ、さすが大きな熊さんね。人助けをなさるなんて立派だわ」
「それはまた大変なことを。決して見過ごしたりしないのはさすがだけど。それでその人どうしたの?」

「その人、うちが話しかけても要領を得なくてね、錯乱状態になってるの。
なんか一緒にいた女性に逃げられちゃったんだって。
それで相当ショックを受けちゃってたみたいでね、もう支離滅裂だったんだよ。
うちを見るなり「オオキさんじゃないですか」とか言ってきたりするの。誰よそれ、って感じだよねー。
えー、うちは大木さんじゃないです、って言ったんだけど、彼女に逃げられたショックでだろうけどあまり理解できてなかったみたい。
それで、顔も真っ青だったし、とにかく近くの病院まで連れて行ってあげたんだ。


今のこの状況ではわりとどうでもいいそんなクマクマとした長説明を聞きながら、僕は目の前の人を見つめていた。
いま僕が彼女に向けている視線は、無意識のうちにやっぱりジトッとしたものになっていたらしい。

それに気付いた熊井ちゃんは、僕を見下ろしてこう言ってきた。

「なに? なんか文句でもあるの?」

無いわけがないでしょ!
せっかくお嬢様と2人っきりだったのに!
それを言葉にはしなかったものの、さすがに一言申し上げたかった。

「せ、せっかくの僕の素晴らしい休日が・・・ いや、だいたいどうしてここがわかったんだよ。まさか偶然見つけたってわけじゃないよね」

僕のその抗議に、熊井ちゃんはさも当然といった表情を僕に向けた。
勝ち誇ったドヤ顔。なんだその顔は。

「もちろん偶然なんかじゃないよ。それはね、ケイタイにアプリを仕込んであるから。GPSで現在位置はリアルタイムで把握できるんだよねー」

なんだよ、それ!! 
僕のケイタイにそんなもの勝手に仕込んだりして!
いつのまにかそんなもので僕の監視をしていたというのか!
そんなの人権侵害じゃないか。ひどいよ!


もう、やだ!
無茶苦茶でしょ、この人。


やりきれない思いではあるが、もうそれ以上は言うのをやめた。
僕が何故怒ってるのかなんて全く理解していない(しようともしない)彼女に、何を言ってもこれ以上はもう時間の無駄になるだけだ。
でも、苦情を申し立てるのはあきらめたけれど、熊井ちゃんに聞きたいことはある。

「それでわざわざこんなところまで追いかけてきたりして、いったい僕に何の用なんだよ」

ホントだよ。せっかくお嬢様と2人っきりだったのに。

僕のその発言を聞いた熊井ちゃんが、急に険しい表情になった。
な、なんだよ、その真顔は・・・
そして、見下ろすような視点から怖い顔で僕にこう言った。

「なかさきちゃんを泣かせていいのはうちだけなんだよ!」

な、なんだよ、いきなり。
いきなりそんなことを言われても、何がなんだか。

僕を睨みつける熊井ちゃん。
うわ、結構マジモードで不機嫌のようだ。
その殺し屋のような目付き。こ、怖すぎる・・・
彼女から受けるこの圧倒的な威圧感、僕はそれを久しぶりに味わっていた。

彼女が何を言っているのかよくわからないが、僕のことを責め立てているようなのは明らかだ。
緊張のあまり固まってしまった僕に、熊井ちゃんが話しを続けた。

「なかさきちゃんに何か言ったんでしょ。いったい何を言ったの?」

熊井ちゃんのその質問。
僕に心当たりがあるとすれば、もちろんそれはこの間の・・・

「何って、え? 逆でしょ、彼女が僕のことを・・じゃないの? え?何だ?・・・」

狼狽する僕から視線を外さず、じっと熊井ちゃんが僕を睨みつけている。
こ、怖い。

「え?いや、その、ちょっと待って。どういうこと?」
「しらばっくれないで!」

僕のことを真っ直ぐに睨みつけている熊井ちゃんが言葉を続ける。

「なかさきちゃんが深刻そうな顔してうちのところに来たの。
で、その深刻そうな表情で、あの男子とそういう関係だったケロね・・って聞くからー、
意味が分からなくてー、どういう意味?何でそんなこと聞くの?ってなかさきちゃんに聞いたら、
逆になかさきちゃんから、昨日の話しはどういう結論になったの?って聞かれたからー、
昨日?昨日は賭けに勝ったから奢りで一緒にラーメン食べてきたってなかさきちゃんに言ったらー、
賭けってなに?って更に聞くから、なかさきちゃん質問ばっかりだーと思って、
説明してあげたら、なんか知らないけど、なかさきちゃんショックを受けててー(ry

長い。
そして、その会話の要点がよく分からない。
僕には今の熊井ちゃんの無駄に長い話しを聞いても、話しの流れがさっぱりわからなかった。
結局、何を言いたかったのだろう。


そんな僕に熊井ちゃんが先程のセリフを繰り返した。

「なかさきちゃんに何を言ったの?」
「え? そんな問題視されるようなことは何も言ってないと思うけど・・・」

うん、僕は決して問題発言はしていないと思うけど。
でも、心当たりがあるとすれば、あのことなのだろうか。

「・・・なかさきちゃんのその気持ち大切にしてあげたいとは思ってるよ。でも・・・でもさ・・・」
「やっぱり心当たりがあるのね」


そんな今のやりとりをずっと聞いていたお嬢様が、そこで熊井ちゃんの言葉を継いで僕に言った。

「なっきぃはずっと悩んでいるようなの。何か心当たりがおありなら、なっきぃのお力になってあげて。千聖からもお願いします」
「うん、そうだよ! なかさきちゃんの力になってあげなよ。」

ふたりが僕に言いたいのは、なかさきちゃんの気持ちを受け止めてあげろ、ということだろうか、やっぱり。
僕の仮説はやっぱり正しいかったようだ。


お嬢様と熊井ちゃんの前だからか、僕は本心を隠すことなくストレートに口にしてしまった。


「・・・でも、その気持ちに応えることはやっぱり出来ないよ。だって僕はやっぱり舞ちゃんが・・・」


「?? 舞?」
「舞ちゃん? なんでここで舞ちゃんの名前が出てくるの?」
「え? だって、僕の中では舞ちゃんの存在が一番大きいんだから・・・」

小首を傾げていた熊井ちゃんが、何かに思い至ったかのように再び険しい顔になった。

「あ、わかった。舞ちゃんとのことで何か、なかさきちゃんに咎められるような風紀を乱す行為をしたんでしょ」
「な、なんだよ、風紀を乱す行為って。そんなのそれこそ熊井ちゃんがいつも・・・」
「やっぱり、なかさきちゃんをいじめたんだね。さっきも言ったでしょ、なかさきちゃんをいじめていいのはうちだけなんだから」

いや、「イジメなんか絶対ダメだよ!!」っていつも鼻息荒く言ってるのはあなたじゃないですか。
あなたがその言葉を言うたびに僕はいつもツッコみたい衝動に駆られているんですけど。僕に対するいろいろな行為のこと、あなたはそれをどのように認識されているんだろうと。
それでも、僕は熊井ちゃんのその言葉には共感しているし、熊井ちゃんから(不本意ながら)きっちり教育もされているから、僕がイジメなんて行為を絶対にするわけがない。わかってるくせに。


「それでなかさきちゃんにそんな心労をかけたりして。なかさきちゃんのハートはハムスター並みなんだからね。大切にしてあげなきゃ!」
「だからあなたの行為の方がいつも彼女に心労をry・・・って、それはともかく、そもそも僕はなかさきちゃんをいじめてなんかいない」
「なに? うちに反論する気なの!?」

論点がずれ始めた。非常に危険な流れだ。
最初は、してもいないイジメ行為を咎められていたのが、いま彼女の逆鱗に触れているのは僕が彼女に対して反論したことのようだ。
僕は言いがかりを否定しようとしただけなのに。
怖い顔で見下ろしている熊井さんを見ると、結局理由なんか何でもいいから僕をやりこめたいだけなんじゃないかとさえ思えてきた。


そんな僕の絶望的なこの状況を救ってくれた天使のような人がいた。

それは、もちろん、千聖お嬢様。


「大きな熊さん」

お嬢様が熊井ちゃんを見上げるようにして言った言葉。
それは、静かな声だったのだが思いのほか強い口調だった。
この獲物を狙うような熊井ちゃんが自分の言葉を切ってお嬢様を見つめたぐらい。

「この方はそんなことをするような方じゃないわ」

穏かな言い方ではあるが、その凛とした口調には、あの熊井ちゃんでさえ真剣に耳を傾けたようだ。
これはびっくりだ。それはまさに奇跡と思えた。
僕の行為を弁護するようなその発言に対し、あの熊井ちゃんがそれを受け止めてるんですよ。
手負いの熊を言葉だけでおとなしくさせる小柄な美少女。それは感動的な光景だった。

千聖お嬢様が僕を擁護してくれた。
そのお気持ちに僕は心を打たれる。とても、嬉しかった。
ありがとうございます、お嬢様。このご恩は決して忘れません。いつか必ずお嬢様に恩返しをさせて頂きます。
お嬢様がここにいてくれて本当に良かった。熊井ちゃんをそのように押さえ込めるのはこの方だけだろうから。

そのように感動していた僕だったが、続けてお嬢様が言ったこと、それは僕を現実に引き戻してくれた。


「でもそれは、大きな熊さんの教育が行き届いていらっしゃるからなのね。素晴らしい規律、さすが桃ちゃんの軍団だわ。ウフフフ」


僕はずっこけそうになった。
やっぱり、僕の立ち位置は熊井ちゃんの下という認識なんですね、お嬢様の中でも・・・




 * * * *

(冒頭のシーン)

川*^∇^)||<あとお願いしますっ。じゃあ、うちはこれで。

(院長)<それで君、うちの病院の標榜は産婦人科なんだけど、君は何しにきたの?
(執△事)<・・・その理由、僕も聞きたいです。


ノソ*^ o゚)<あれ、いま出てきたのゆりなちゃん? ・・・・さ、産婦人科!? ・・・・キュキュキュ




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