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ったく、熊井ちゃんってどうしていつもあんな感じなんだろう。
めちゃくちゃなこといってるくせに、妙に心に引っかかる一言を添えてくる。

「あの、ごめんね。馴れ馴れしく」
「あ、そんな・・・私、えっと、すぎゃさん」


岡井さんが何かを言いかけたところで、次の授業の先生が教室に入ってきてしまった。


「菅谷さん、いつまで立っているんですか。早く席につきなさい」

ジロリと睨まれ、私は首をすくめてこそこそと自分の席へ戻った。
どうやら、怖い怖ーい英語の先生だったから、他のみんなはとっくに着席していたらしい。

「梨沙子、なにやってんのー。しっかりー」
「だってぇ」

うう・・・怒られてしまった。岡井さんとも変な感じになってしまったし、これというのも熊(ry


* * * * *

「ねえ、ねえ、梨沙子」
「んー?」

先生の朗読中、隣の席の友達が話しかけてくる。


「千聖お嬢様となんかあったの?」
「えー?・・・まあ、ちょっとね。何で?」
「だって、ほら」

彼女が指さすのは、左斜め後ろの――岡井さんが座っている席。
こっそり視線を向けると、バチッと目が合った。

「あばば」

挙動不審ぎみな私を、先生がジロリと睨みつける。

――岡井さん、めっちゃ見てるんだけど・・・私のこと。
やっぱり怒ってるのかな。気安く呼び捨てにされて。
考えてみたらお気軽に「千聖」なんて呼んでるのは、舞ちゃんとかももとか、超人類ばっかりだ。私のような平凡な女子高生には、敷居の高い行為だったのかもしれない。

あとで謝らないと・・・そう思って、もう一度だけ振り返ってみると、やっぱり岡井さんはこっちを見ていた。

「え・・・」

だけど、怒っている様子ではなくて・・・なんていうか、上目づかいで微笑んでいる。


“ウフフ”

あの独特の笑い声まで聞こえてくるようだ。
なぜかほっぺが赤い。小首を傾げてもじもじしている。ちょっと、なんなの岡井さん。それじゃあなた、まるで・・・。っていうか、絶対やめて、そんなの!消されるから、ま○様に!私まだ死にたくないゆ!


「す!が!や!さん!何ですかさっきから、落ち着きのない!」
「はひぃ・・・」


結局、英語の先生に目をつけられてしまった私は、授業時間中めっちゃ指名されまくるというペナルティを課せられてしまった。


「うう・・・」


終業のベルとともに、私は机に突っ伏した。
ただでさえ、アイキャンノットスピークイングリッシュなのに、あんまりだ。顔は北欧系とか言われるけど、とんだ見掛け倒しですよ、私なんて。
そういえば、岡井さんも日本人離れした顔立ちだな。目元なんて、眉間が狭くてキリッとしている。中身はぽえーっとしてて掴めない子なんだけど。


「すぎゃさん」
「んー」

あごは机にくっつけたまま、私の前にたたずむ岡井さんに、目線だけ向けてみる。


「せんせーにいじめられたー」
「まあ・・・。たしかに、今日はすぎゃさんが指名されることが多かったわね。運の悪い日だったのかもしれないわ」

心から気の毒そうな顔をする岡井さん。本当に、素直な子だ。全部が顔に出ちゃって、隠し事なんて一切できないんだろうな。


「あー、さっき、ごめんね」
「え?」
「いきなり下の名前で。ほんっとごめん。もう呼ばないから。ちゃんと岡井さんって呼ぶ」

すると、なぜか岡井さんの顔が曇ってしまった。

「すぎゃさん・・・」
「え?ごめ、またあたし余計な事言った?」

「・・・いえ、そうではないの。ごめんなさいね、私、舞に会いに行ってくるので、失礼します」

さっきのにこにこぽわんとした顔とは全然違って、叱られちゃった犬みたい。
心なしか肩を落としている後ろ姿を見ながら、どうにも噛み合わないこの状況に、私はため息をついた。



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