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学校帰り、いま私はなっきぃと2人で歩いている。

「それでさ、今日の昼休みはお嬢様と2人っきりでランチタイムを楽しむつもりだったんだかんな。
そしたら、それを察知した萩原の奴がお嬢様の気を引こうとお嬢様の大好物ばかり詰め合わせた弁当を届けさせてきやがってさ、あの執事に・・・って、なっきぃ?」
「う、うん。ごめん、ちゃんと聞いてるよ」

生返事をするなっきぃ。
隣りを歩くなっきぃは、さっきから何かを考えているように上の空だった。

またあの時のこと考えてるのか。


「もう、なっきぃ・・・ まだ気にしてるの?」
「え? う、うん」

「気にしなくていいんだって! あれぐらいのこと」
「そうはいっても、その、やっぱり暴力は・・・この私がそんなこと・・・」
「あんなの、まぎらわしい会話をする方が悪いんだかんな。単なる誤解が原因だったんだからさ、早く忘れちゃえばいいのに」

「うん、そうなんだけど。でも、やっぱり何か引っかかるの」
「引っかかるって、何が?」
「誤解だったっていうのはそうなんだけどね。でも、友理奈ちゃんは否定してたけど、本当に違うのかな、って」
「ん? 違うって何が?」

心配そうな顔をするなっきぃ。
なっきぃは熊井ちゃんのこといつも気にしてるんだな。
顔を会わせるたびにキーキーやりあってるのにw
本当に仲のいいことで。

「本当にも何も、あれは誤解だったんだから違うんでしょ」
「うん。そうなんだけど。でも、なんかね状況証拠が揃ってきてる気がして」
「状況証拠?」


さっきから奥歯に物が挟まったような言い方ではあるが、なっきぃの言いたいことはわかった。
熊井ちゃんとあの男子の二人の関係のことだ。
あの二人の関係が、その、見てると段々ちょっと疑わしくなってきたと、そう言いたいんですね、なっきぃは。
さっきからなっきぃが引っかかってるのは、まさにそこなんだろう。

「ゆりなちゃん、あの男子と付き合ってたりしないよね」

あ、言った。
ストレートに言ったよ、この風紀委員長さん。


でも、まさか、ねぇ・・・
そんなの全く想像ができない。
なっきぃ、本当にそう思う?
私には全く思い当たるフシがないんだけど。


だって、熊井ちゃんって、確かどっちかというとかなりの面食いさんだったはずだ。
前に本人から聞いたことあるのは、好みのタイプはカッコよくてスポーツマンの男子だったはず。
暗いのは嫌、とも言ってたっけ。

だから、あの少年が熊井ちゃんの好みに当てはまっているとは、奴のあの外見からして、とてもそうとは思えない。
まぁ、アホっぽいだけに暗くはなさそうだけど。

「まさかぁ? 熊井ちゃんは子分だって公言してるじゃん。
それにあの男子、好きなのは舞ちゃんなんだよ」

奴が舞ちゃんのこと本当に好きなのは間違いないと思うし。
変わった趣味だなあ、とは思うけど、そこはそれ人の好みはそれぞれだ。

でも、男って生き物はその点では信用できないからなぁ。
平気でいろいろな子に対して気を持ったりするからね、男ってやつは。


「でもさ、舞ちゃんはハッキリと彼のこと振っちゃったんでしょ。それで・・・」

「うーん・・・ 私には何かピンと来ないんだけど。だいたい熊井ちゃんの方はどうなの?あの男子が好みだとでも?」
「それはね、友理奈ちゃんって、たまに何考えてるのか分からないことあるじゃない」
「それは、たまにというかいつもというか・・」

「例えば、可愛くない犬を拾ってきたとしても、ずっと一緒にいたら情が移るってこともあるでしょ」

なっきぃの中では何がひっかかってるんだろう。

「そうだけどさあ。でもやっぱり違うよ、そういう雰囲気じゃないもん、あの二人は」
「それはさ、私たちに関係を悟られないようにわざとそうしてるのかも・・・」
「じゃあ、もしあの二人が付き合ってるような関係だったとしたら、なっきぃはどうするつもりなの」
「・・・わからない。ゆりなちゃんの気持ちを尊重したいけど・・・わかんないよ、そんなの」

こういう話題は得意じゃないんだろう。
なっきぃの言い方は、ますます歯切れが悪くなってきた。


「うーん、やっぱり私は違うと思うんだけどなあ」


「わたし本当に心配なの。ゆりなちゃんのこと」

「ゆりなちゃんって、外見は大人っぽく見えるけど、全然そんなことないんだから」

「物事をよく分かってますって顔してるけど、びっくりするぐらい常識を知らないことが多いのね」


「まぁ、熊井ちゃんのことよく分かってるなっきぃがそう言うんなら」
「それに、よく言うでしょ。高校生ぐらいの男子の頭の中って、あのことだけでいっぱいらしいし」

あのこと、って何ですか?優等生さん?

「あのことって、どのこと?」
「もう・・・栞ちゃん、分かってるくせに」
「まぁなっきぃの言ってることは間違ってはいないかんな。男ってやつは本当にどうしようもないからね。それしか頭にないのかよって思うよ」

まぁ、お前が言うな!って、皆さんツッコみたくなってるんだろうけどな!


「で、さっき言ってた状況証拠って、なに?」
「うん。改めて思い返してみたら気付いたんだけど、あの二人ってしょっちゅう一緒にいるよね」
「嗣永さんの軍団がらみなんでしょ。それで嗣永さんが卒業しちゃったから2人っきりのことが多いんじゃないの? どうでもいいけど」
「それにしたって、いくらなんでも一緒にいすぎじゃない? 同じ学校でもないのに」
「でも、それぐらいのことは普通にあったりするよ。女子高だと珍しいのかもしれないけどさ」

「それでね、このあいだのことなんだけど・・・」
「うん?」
「・・・って、ごめん。今のは違うの。何でもないの。今のは聞かなかったことにして栞ちゃん」
「それは無いかんな! そこまで言いかけておいて!!」
「・・・ごめん」


「実はね、まさかとは思うんだけどね・・・ わたし見ちゃったの。このあいだ駅前の病院から友理奈ちゃんが・・・」



そう言いかけたなっきぃの動きが急に止まってしまった。
目を見開いたまま固まってしまっている。

その原因はすぐ分かった。

いま私たちの目の前に現れたこの人のせいだ。
この人に会うのは、私はとても久しぶりだかんな。



在校時と全く変わっていない、その風貌、その雰囲気、その異常性。
一度目にすれば二度と忘れられないキャラクターのその人が私達の前に出現したのだ。

私達の前に現れたハデハデしい格好のその人物。
なっきぃの天敵。



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