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「ねー、おかーさん!お菓子は?そろそろ友達来るからぁ」
「はいはい、あとで部屋に持っていってあげるから、そんな急かさないでよ」

ももとの電話の翌日、私は午前中から、キッチンに立つお母さんを急かし続けていた。


“明日、千聖連れて梨沙子んち行くね!ウフッ”


もものやつ、こんなことを言っていた。
無理無理休日で家族そろってるし!弟うるさいし!と反論したものの、いつものウフフ笑いとともに電話は切れてしまった。

まあ、私ももぉ軍団一般人部門だからわかるけれど・・・ももは、一度決めたら絶対に譲らないし、来ると決めたら来るやつだ。
はっきり約束したわけじゃないから、時間までは読めない。でも、絶対来る。
こーゆーめちゃくちゃなとこ、ホント熊井ちゃんそっくり。これだからもぉ軍団は。私みたいに、もっと人の事情を考えて・・・


ぴんぽーん


「うわ、きた」

チャイムの音さえ、ふだんより3オクターブぐらい高いブリブリ仕様に聞こえる。


“すみませぇーん、みんなのアイドル・ももちですけどぉ!”
「・・・はいはい」
「あれ、友達って、桃子ちゃんなの?」
「んー、ももと、あと一人・・・。待って、今連れてくる。紹介するね」


玄関のドアを開けると、今日も今日とてツインテールに白リボンを結ったももが、ウフッと笑いかけてきた。

「・・・てか、その格好で大学も行ってんの?もういい年なんだからさぁ」
「はいはいはい!もぉは永遠の13歳ですよぉ~、おっじゃましまーす!」

人んちだっていうのに、ずかずかと上がりこんでくるもも。

「ったく・・・。あ、岡井さ・・・千聖、も、はいって?」

その後ろに隠れていた、おか、千聖に話しかけると、なぜか顔を赤くして私を見る。

「ちさと?」
「えと・・・あの、えと、今日はおじゃまフガフガ」


まるで、彼氏のおうちに遊びに来た女の子のようなリアクション。なるほど、こういう感じだから、舞ちゃんや有原さんが勘違い(なんでしゅと!)するんだ。

「・・・ウフフ。あの、今日はお招きいただいてありがとうございます。焼き菓子の詰め合わせをお持ちしたので、こちらよかったら御家族で」
「ありがとー」

すごいな。友達の家におみやげなんて、コンビニのお菓子かジュースぐらいしか思いつかない。いかにも高級そうな黒い紙袋に、よくわからない緊張感を覚える。

それにしても・・・私服の岡井さんも、一目でそれとわかるお嬢様らしさだ。
春物の薄いグリーンのワンピースに、小ぶりのカゴバッグとシンプルで上品な装い。さっきの一人祭りみたいなももとは対照的だ。この2人でうちまで歩いてきたのかと思うと、ちょっと面白い。


「さ、あがってあがって!」

岡井さんと連れ立ってリビングに戻ると、ももが私の弟とじゃれているところだった。


「だからぁ、きもいとか言ってるけどぉ、本当はもぉのこと可愛いって思ってんでしょ!」
「ないない!きもい!きんもいわー」

弟よ・・・その人に何を言っても無駄だから。鋼のハートなんで、彼女。


「おかーさん。紹介するー。そっち、ももね。ああ、知ってるか」
「おいっ、もぉの扱い雑だぞ梨沙子!」
「んで、こちらが岡井さんね。岡井さ・・・えっと、千聖。うちの家族。パパ、ママ、弟」

あんまし、こういう紹介役(?)は得意じゃないから、すごいぶっきらぼうな感じになってしまった。
だけど、岡・・・千聖は、上手く話をつないでくれた。


「はじめまして。岡井千聖と申します。いつも梨沙子さんにはお世話になって・・・」

ちょうど、昼食の真っ最中だった家族は、ああどうも、みたいな感じに、ラーメンをすすりながらぺこりと軽く会釈をした。・・・が、次の瞬間、パパが突然うっと咽せ始めた。


「ちょ、なにやってんの!」
「え、あ、お、岡、岡井さんって、○○製薬さんのおかおか」
「まあ・・・父を御存知で?」

聞けば、ちさ・・・とのパパの会社と、うちのパパのとこ(パパは銀行員なのだ)で、いろいろと取り引きがあるらしい。


「同じ学校とは聞いていましたが・・・いつもうちのアホが御迷惑をおかけして」
「・・・もう、上いこ!もも、ちさと!」

2人を急かして自分の部屋へ向かう背中に、「すっげー、この菓子、テレビでやってたぜ!1万円!」とか弟が叫んでいるのが聞こえて、げんなりする。

ほんと、異次元の存在なんだ・・・なんて、今更ながらため息がこぼれた。



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