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今日も学校が終わると、いつものカフェに来ていた。

今日は、席に座るとすぐに教科書を広げた。もうすぐ始まるそのテスト勉強をするのだ。
落ち着いて出来る今のうちが勝負。そのうち軍団の人が来ないとも限らない。
一人でいられる今のうちに集中して勉強をしよう。

そうやって、僕が勉強をしていると、店のドアが開いた。
現れたその人物を見て、驚愕のあまり僕の手からシャーペンが落ちた。

やって来たのは、な、な、な、なかさきちゃん!


な、なんで彼女がここに!?

予想外の事態に、僕はなかさきちゃんを凝視したまま固まってしまった。

僕の姿を認めると、彼女は一瞬躊躇した様子を見せたが、意を決したかのように僕の座るこのテーブルに近づいてきた。

え? なかさきちゃん、このテーブルに?

ってことは、僕に用があって来たのか。
心臓の鼓動が早まる。

「ここ、座っていいですか?」

テーブルに広げてある教科書に目を落としながら、なかさきちゃんが固い声で短く声を掛けてきた。
予想外の状況にとまどいながらも、彼女の問いに僕は大きく頷いた。あわてて教科書やノートを片付ける。

僕の目の前に美少女が座った。

なかさきちゃんは緊張しているようだった。
ひょっとして、男と同席していることに?
さすがお上品な学園の風紀委員長さん。

アップルティーを注文したなかさきちゃん。
でも、出てきた紅茶に口をつけようともしない。

「あの、やっぱり、私もう帰ります・・・」
「帰るって、まだ一言も・・・ ちょ、ちょっと待って」


いったい学園の優等生が何をしにきたんだろう。

先日、彼女にひっぱたかれた時のことを思い出す。
まだ僕に何か言いたいことでもあるんだろうか。
でも、いま彼女はあの時とは全く違う雰囲気で僕の目の前に座っている。

そうか・・・
例の件で僕に会いに来たんだろうな、やっぱり。
なかさきちゃん、僕のことを、そんなに。

でも、どうすればいいんだろう。彼女は舞ちゃんの友達じゃないか。
僕はそんな彼女に対して、どう接すればいいのか。

かわいらしいなかさきちゃんが僕の前で緊張している。

そんなに緊張していては、ただ話しをするのさえ支障が出てしまうのではないだろうか。
彼女のその緊張を解いてあげたい。
どうすればリラックスしてくれるだろう。

そうだ! いつも寮生の方がしている彼女の呼び方で呼んでみたら。
うん、それがいい。さっそく彼女に声をかけてみる。

「ねぇ、なっきぃ?」

僕のその呼び方にビクッと肩を震わせるなかさきちゃん。そして、彼女はようやく顔をあげてくれた。
その怯えたような表情・・・ うわぁ、たまらないな、この表情。

思い切って言ってはみたものの、慣れないこの呼び方、これはさすがに照れくさい。
でも、照れたりしたら失礼だ。ここは集中しなければ。僕が恥ずかしがってる場合ではないのだ。


「今日はどうしてここへ?」

僕の問いに、何かを逡巡している様子だった彼女が僕に視線を戻してくる。
何か言いにくそうなことを言おうか言うまいか悩んでいる様子のなかさきちゃん。

「わたしは、その、あなたに言いたいことがあって・・・」

意を決したように、なかさきちゃんが僕に話しかけてきた。


「このあいだは叩いたりして・・・ごめんなさい。それだけ言いたくて」


そう言ったなかさきちゃんの愛らしいこと・・・ 一瞬、意識が飛びそうになった。
正直たまりません。
だから、それに対する僕の返答は、つい棒読みになってしまった。

「わざわざそれを言いに来てくれたナンテ。ウレシイヨ、ナッキィ」

そんな僕の言うことなどほとんど耳に入っていないかのように、なかさきちゃんは一方的に話し続ける。


「あと、ここに来たのは、ちょっとあなたにお聞きしたいことがあって・・・」


緊張した彼女の面持ち。
なかさきちゃん、いよいよここから本題に入るつもりなのだろうか。
僕に聞きたいこと・・・・

ついに来たか。
僕はどうすればいいんだろう。
彼女が、こ、告白してきたら、僕は彼女に何と言えばいいのか・・・・

・・・でもやっぱりダメだよ、なかさきちゃん。
僕のことをそんなに思ってくれるのはとても嬉しいけど、僕は君の想いに応えてあげることができない。
だって、よりによって舞ちゃんの友達には・・・

でも、彼女の思いを無下に断ったりして、彼女を傷つけたりはしたくない。
どうすればいいんだ。
いったい僕はどういう態度を取ればいいのだろう。


うん、決断できた。
そのための答えは、一つしかない。

取るべき行動はただ一つ。
僕はなかさきちゃんに嫌われるように振舞う必要がある。

そのために、なかさきちゃんの軽蔑しそうなキャラ・・・チャラい性格の男でも演じてみるとするか。
そんな男に対しては、きっとなかさきちゃんは軽蔑して嫌ってくるに違いないだろう。
ちょっと斜に構えて彼女を見つめ、そのセリフを口にする。


「そんなに僕のこと知りたいんだ。やっぱり僕のことが忘れられなかった?」

自分で自分のセリフにドン引きしてしまった。
リアルで口にしちゃったよ。
よくこんなこと言えるな。

でも、これは演技なんだ、そういう役を演じてるんだ、そう思えば意外と自然に口にすることができるもんなんだな。
“演じる”ってなかなか面白いかも。

僕の言ったそんな軽薄なセリフに対して、なかさきちゃんは顔を真っ赤にして反論してきた。

「ち、違います!」

そんなアホみたいなセリフは無視されるに決まってると思ったが、いちいち生真面目に否定するとか。
さすがは、お上品な学園の風紀委員長だ。

かわいい。

本当にかわいすぎる。
彼女に嫌われるためにやってみた演技だったが、なかさきちゃんの反応は、これかわいすぎるでしょ。
そんななかさきちゃんの取るこの反応に、男としてつい調子に乗ってしまう。

「本当に違う? 自分の気持ちに気付いてないだけじゃないの? それとも気付いてないフリをしてる?」

その僕の問いに対して、彼女は即答で否定したりはしなかった。
何か考え込んでしまったかのように黙ってしまうなかさきちゃん。

いま彼女は、とんでもないような事を言われて、それに対してただ固まってしまっただけなのだろう。
でもその様は、言われたことに心当たりがある、とでもいうような感じにも受け取ることができる。

なかさきちゃん、そのリアクションは調子づいた男を更に勢いづかせちゃうよ。
今の反応、これもし僕が強気に攻めるようなタイプの男だったとしたら、押し切られちゃうんじゃないかなあ。

彼女、本当に免疫がないんだな。とても心配になる。
いかにも女子校育ちの純粋培養された女の子って感じだもんなあ。



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